第二話「ジャジャジャジャ-ン〜運命〜」
第三章
この世界の時間軸ではどうやら五月くらいの時期らしく、そんな微妙な時期に転入してきた私はとても浮いていた。
そんな私を前の席から見下すように見てくる少年を今すぐにでも殴りたい。
しかしここは我慢、めんどくさいことにならないように事件を起こさずなるべく早く単位を取ると決めた。
しかしやはりそうもいかずクラスのガキどもは私に気を使って話しかけてくる。子供というのは不思議なもので冷たい態度をとってもくっついてくるのだ。
その中で一番異質なのがこの女の子、たしかチカコという子だったかな。
黒く長い髪がとても綺麗で私も見とれてしまうくらいであった。
しかしあまりにも髪が長いものだから目が隠れてしまっている。
今日の放課後も下駄箱までついてきており、その後はどこかへフラッと行ってしまう。
六月になった頃、さすがに私も気になり彼女に声をかけた。
彼女の席は私の前の席の少年の席よりさらに前の席。
「あなた、私になにか用でもあるんでしょうか。」
「・・・・・・」
一瞬、こちらを振り向きはしたが顔を赤らめてうつむいてしまう。
私はあきれてこれ以上のせんさくはしなかった。
ーーーーーー☆ーーーーーー
「えっ、あなたその女の子が見えたんですか!?」
まるで霊のような扱いだな
「何を言っているの、あなたの前の席じゃない」
「知らないんですか、このクラスの噂」
私は彼が何を言っているのかわからず聞き返す。
「このクラスには一人、バグデータがあってそのバグデータは現在見えないはずなんです。その見えないはずのデータが見えてしまう現象をぼく達のクラスでは・・・」
"呪いの女の子"とよんでいるんです
「それってつまり・・・」
「あなたはもしかすると、バグに呪われてしまったんじゃないかと思うんです」
「なんで!?私呪われるようなことしてないわよ!」
「あなたはもともと現実世界の人間そんなあなたがこっちに来たのはこの世界では最大のバグなんです。もしかしたら呪いの女の子があなたをひきずりこむつもりなのかも」
「ひっ、ひえぇ・・・!!」
震え上がって私はその場で腰を抜かしてしまう。
「しかし、呪いの女の子をしりぞける為の方法がひとつあると言われています。それは・・・あなたが次のテストで百点満点をとることなのです」
私はその場で目をパチクリさせる。小学校の過程は既に卒業している。そんな私が小学生のテストで百点満点を取るなんて楽勝なことなのだ。
勢いよく立ち上がり大声で言う。
「そんなの簡単じゃないの!任せなさい!」
「・・・・・・あなた、そんなに簡単だと思ってるんですか?」
「え?だって小学生のテストでしょ?」
「たしかに授業は小学生レベルです。この前行ったテストも小学生レベルです。しかしです、気づいていないかもしれませんが、あなたはもうすでに中学過程のテストを受ける資格を受けているんです」
「それって、つまり?」
「はい、次のテストはあなただけ中学過程のテストなのです」
私だけ中学過程のテスト?中学の頃受けたテストで百点をとったことは・・・・・・ない!
「それはやばいじゃない!」
数歩進んでこちらを見下すように見る。
「そうですね、でもぼくはあくまで小学生、中学の勉強を教えられる自身も知識もありません。ぼくは決して頼らないでください」
そのままスタスタと歩いていってしまう少年をただ呆然と見ることしかできない私は中学の勉強をすることを決心した。
第四章
テスト当日、私は登校しながらも英単語の暗記をしていた。
「話しかけるな」と言わんばかりのオーラを発しながら・・・。
しかし空気を読まずに声をかけてくるのはあの少年だ。
「どうですか?勉強はできてます?」
「完璧よ、さすがに六年前に学んだ単元はカンタンすぎたわ・・・」
「なんて言っちゃって~ホントはオールしてるんでしょ、何日です?何日オールしたんですかぁ~?」
この前のように見下すように言ってくる少年に正直に言う。
「いっ、1週間・・・」
「イッ、シュウカッッ!?」
さすがの彼も驚いたようで少し汗をかいていた。
「えっと、ま、まあがんばってくださーい!」
少年はスタタタタと急ぎ足で学校へと向かっていく。
・・・・・・あれ?さっきまでなんの単語やってたっけ・・・あれ・・・。
ーーーーーー☆ーーーーーー
そしてテスト。この世界ではテストの日程がかなり鬼畜で一日で全てのテストを行う。しかしその代わり行うテストは五教科のみらしい。
中学過程のテストはとても難しく、高校過程もギリギリだった私には厳しいものだった。
しかし今日はそうはいかない!これまでの勉強の成果!今こそ活かすとき!
ーーーーーー数日後テスト返しーーーーーー
すべての解答用紙が返された。
国語、100点、数学、100点、理科、100点、社会、100点
そして、英語・・・
84点・・・
これは・・・どういう・・・。
信じられないと思った私は解答用紙をしっかりと見てみた。
不正解だったのは単語の問題。
不正解だった部分はちょうどあの少年に話しかけられた頃に暗記していた単語だった。
その例の少年が前の席からこちらを見る。
はっ、と嫌な目をする少年。
哀れみの目を向けてくる少年。いや、そんな目をされても・・・。
死の覚悟をした私は少年の前の呪いの女の子を見る。
そこにあったのは誰もいない机と椅子。おかしいなと思い辺りを見回した。右、左・・・そして後ろを振り向くとそこにいたのは黒髪の少女、呪いの女の子だ。
振り返った瞬間、呪いの女の子が腕を振りかぶる。あぁ、死んだ・・・。
・・・しばらくの沈黙。私はゆっくりと目を開ける。そこにあったのは真っ白な手とそこに握られていたのは一つの手紙・・・。
スタタタタと走り去ってしまう呪いの女の子。その顔は不思議と赤かったように見えた。
放課後、私はその手紙を読む。
「わたし、あなたのともだちになりたいです。」
少し汚い字で書かれたその文面はさながらラブレターのようだった。
彼女は私と友達になりたいだけだったのだ。
私はそんな彼女を呪いの女の子と勘違いし、引き離していた。
失礼なことをしてしまった。明日、謝っておかないと・・・。
そして次の日の朝。例の彼女はいつもの席にいた。
私は勇気を振り絞り話しかける。
「あ、あの、いままでごめんなさい!」
少女はオロオロして少し困っているように手をウロウロさせる。
そして、彼女は初めて口を開ける。
「わたしこそ、ごめんなさい。わたしがひとみしりなばっかりに、こんなたいへんなことになり・・・」
小さい声で赤い顔で何度もペコペコと頭を下げる少女。
こうして見ると見た目がただ少し怖いだけのただの人見知りの少女だった。
「じゃあお互い様だね」
「う、うん」
と、手をつなg・・・あれ。手が・・・・・・透けた!?
「あ、もう来ていたんですか久美子さん!」
少年が冷や汗をかいている私の目の前に現れる。
「あのですね、たしかにあなたは何事もありませんでしたが、彼女がバグデータだっていう事実は変わりませんよ。つまり、この世界でいうところの霊的存在だっていうのは一切変わりはないということです」
私は気を失い、それ以降の記憶がない。