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スナック  作者: ヤマダ
18/22

見世物小屋

twitlongerにて掲載したもの。

※グロテスク表現、残酷描写、ホラー注意です

 篠笛の音色と太鼓の響きが夏の夜空を賑やかす。神楽舞は篝火に照らされ一層の盛り上がりを見せていた。

 ぼんやりと灯る提灯が道行く人を浮かれさせ、威勢のいい呼び声と感嘆が飛び交う。

 地元の小さな神社とはいえ、両脇に屋台の連なる参道は祭りの空気を色濃く漂わせる。

 イカの焼ける香ばしい香りに、鉄板の上でくるりと返されるたこ焼き。子供らは金魚すくいに精を出し、いかがわし気な親父はカラーひよこを売りさばく。

 闇に浮かぶ大鳥居に見守られ、私は何を買うでもなくぶらぶらと人波を抜ける。


 おや、と思ったのは夜店の終わりまでたどり着いた時だった。

 鳥居の向こう、暗闇の中にぽつりと光があるではないか。目を細めるとそれは裸電球で、僅かにテントらしき小屋が見て取れた。

 ははぁ、見世物小屋か。昔はよくあったものだ。河童のミイラや化け狸など、嘘か誠か定かでない珍品、奇品で客を呼ぶ怪しげな商売だ。大人たちからはきつく止められていたが、あの簡素な小屋の中で何が起こっているかを知りたくない子供はいないだろう。

 どれ、物は試しだ。眩い光をひょいと抜け、テントを目掛け暗がりを行く。

 裸電球の下には、只今無料とだけ書かれた木の板が立てかけてある。看板も、演目すらも分からない。それでも、私は惹かれるようにテントの中へと踏み入っていた。

 かっ、と真っ白な光線が私を射抜く。目が眩みくらくらすると同時に、ざわざわと声が聞こえる。

「やや、ようやく始まるのか」

「待ちくたびれたが、コイツはいいや」

 白んだ視界が再び像を結び始めた時、私は目を疑った。

 こちらを値踏みするように眺めるのは、着物姿のイカとタコだった。周りをゆらゆらと跳ぶ赤や黒の出目金に、屋台で見るよりも大きな色とりどりのひよこが、嘴とかちかちと鳴らし盛んにさえずっている。

 何より、私は猛獣でも入れるような鉄の檻の中にいるのだ。

「して、丸焼きか?水にくぐらすのも悪くないが」

「そうさなぁ。ぶつ切りを生地に混ぜて焼くのも、捨てがたい」

 剣呑なイカとタコの会話に、私は思わず悲鳴を上げる。

「おや、人間どの。非情だとでもお思いか?」

「祭りの度に我らを弄ぶそちらに、非難などできなかろう?」

 ぎょろりと迫る大きな目と、檻に群がる金魚とひよこに情けなく尻餅を着いてしまう。

 このまま奴らに食べられるしかないのか。吹き出す汗が身体を冷やす。

 ぢぃぢぃと、一匹の真っ赤なヒヨコがけたたましく鳴いた。

「なるほど、それはいい考えだ」

 イカは頷くと、着物の袖から白い触手を伸ばし檻の隙間から私の両腕を捉える。

「面白い。なら、こちらは脚を頂こう」

 タコの着物の裾から同じく触手が伸び、私の両脚へと纏わり付く。

 吸い付く吸盤と強い力で身動きが取れない。そこへ、宙を泳ぐデメキンたちが檻へと入り、あろうことか私の腹を食い始める。

痛みで声すら出せなかった。

 ぎざぎざと鋭い歯が骨ごと身体を抉り、あっという間に桃色の内臓が表れる。

 待っていたとばかりに、ひよこたちが柔らかな臓物を突き始める。刃物のように鋭い嘴に刺される度、びくびくと身体が跳ねた。

 手足はもはやいつ千切れても可笑しくないほどぎりぎりと引っ張られている。

 痛みの喘ぎに血と涎が混じり、助けを呼ぶことも出来ない。

 化け物たちの背後に、幾つもの揺らめく影が見えた。

 まさか、見世物は.......。

「ぢぃ」

 鼻先にとまった真っ赤なヒヨコが、私の目玉へと嘴を突っ込んだ。


 さあさあ、いらっしゃい、いらっしゃい。どうだい旦那。息のいいの残ってるよ?

お、それかい?さすが、お目が高いねぇ。なかなか良いもんだろう?

 ああ、目がねぇって?悪いね、うちの坊主がどっちも食っちまった。いつも抜くだけで良いっていってんのに。

 代わりと言っちゃなんだが、ピンポン玉。オマケするよ。

 なあに、良いって事よ。酉の市のダルマにケチがついちゃいけねぇからなぁ。

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