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スナック  作者: ヤマダ
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発注

「しまった、来週だったか」

 バックルームに先輩の呟きがふっと浮かびあがった。気になって彼の目線を追うとカレンダーに辿り着いた。なるほど、理由はあの黒の並びの中で一際目を引く赤の列だ。今年から春の大型連休と対を成すように作られた例のあれ。土日祝日など関係なく働く私たちにとってはせっかくの連休もありがたみはなかった。

「サクラ、発注しときます?」

「そうだなあ。一応、一日あたり五百で打っといて」

 先輩の指示通り、機械に数字を打ち込む。人のいる所に人は集まる。その理窟を元に作られたのがサクラだ。昔は実際に客寄せ用に人を雇っていたのだが、今では単価の安い量産型のサクラが主流となっている。

「私、サクラってちょっと苦手なんですよね」

 私たちのやり取りを聞いていた、若い女子高生のアルバイトが顔をしかめる。

「見た目は普通の人と変わらないのに実際は何の生き物かも分からないんでしょ?そんなの不気味じゃないですか」

 そうでしょう、と同意を求める彼女に私は曖昧に笑っておく。

 サクラたちは普段は巨大な倉庫で保管されており、発注された時にだけトラックに乗せられやって来る。初めて見た時はどこからどう見ても人間にしか見えなくて度胆を抜かれた。でも、何度か接していると分かる。どんなに人間と似ていても、あれはサクラでしかないのだ。

「まあ、そう言ってやるなって。アイツらにはああいう生き方しかないんだから」

 アルバイトに向かって先輩は少し寂しげな顔をする。まだこの職場に入ったばかりの彼女には分からないのも無理はないが、こういった連休やセール時などの客足が欲しいときはサクラに大いに助けられているのが事実だ。

 私はパソコンで発注の数量に間違いがないかを確認し、登録のボタンをクリックする。こうして、真っ暗な倉庫の中で待機させられていたサクラが倉庫から出されるのである。

 トラックで運ばれてくる彼らが、私たちや倉庫に残してきた仲間に何を思うかなど正直想像も付かなかった。

 少しだけ感傷に浸った後、私は再び仕事に戻った。来週の今頃には、店も客に紛れ込んだサクラで賑わっていることだろう。


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