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神様との応酬  作者: 夕闇 夜桜
第一章:人間界・アストラ王国、シルフィード魔法学院へ
3/4

【時計塔編Ⅰ】第 話:  △ 確認 名前のみ


「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……何故(なにゆえ)、このメンバー?」


 今ここにいるのは、アーシア、瑠乃、呉羽、 、エヴィン、学院の副会長・シエルの六人。

 そして、声を発したのは、アーシアであり、ギルドの受付にいる に尋ねたのである。


「仕方ないじゃないですか。皆さん、同じ依頼を受けたいと言うんですから」

「私たちは、説明しましたよね?」


  の言葉に、アーシア・瑠乃・呉羽は頷いた。

 三人はチームとして登録しているが、個人は個人、チームはチーム、と数えているため、複数人での依頼の場合、アーシアたちは、チームではなく、個人で三人と数えているのだ。


「はい。その後、エヴィンさんやシエルさんたちがいらっしゃり、定員が六名となりましたので、皆様には、合同依頼を受けていただくことになりました」

「でも、定員は五名でしたよね?」


  の説明に、呉羽が尋ねる。


「はい。ですが、アーシアさんたちが出ていった後、依頼者から六名に変更と言われましたので……」


  は、若干言いにくそうに説明した。


「……わかりました。六人で行きます」


 後ろから が声を掛ける。


「ちょっと、勝手に決めないでよ!」


 アーシアが言い返す。


「いいじゃん、どちらにしろ私たちもそこに用があるし、人数多い方がいいと思うよ? 誰かを囮にできるし」

「瑠乃……」


 その考えは言ってほしくなかった。

 一気に空気は重くなった。


「と、とりあえず、皆様さんがこの依頼を受けるということでよろしいですね?」


 恐る恐る尋ねる に、アーシアたちは頷いた。


「それでは、代表者を決めてください。一応、その方に手続きをして貰うので」


 そう言われ、全員それぞれの顔を見る。


「あ、私と呉羽はダメよ。一応、アーシアとチームに入ってるから」

「私は、代表者になるなとは言ってないけど?」


 瑠乃の言葉に、アーシアは呆れたような感じで言う。


「それじゃ、俺たち二人から選んでいいか? なるべくなら学生には任せたくない」


  はシエルを見て、そう言った。


「良いですよ。むしろこちらからお願いしたいです」


 遠まわしに面倒くさいと告げるようなアーシアの言葉に、二人は苦笑いした。


「わかった。で、どうする?」

「お任せします」


 エヴィンに尋ねる に、エヴィンは面倒くさそうに言った。


「お前ら、面倒くさいだけだろ」


  はぼそりと呟いた。


   ☆★☆   


 数日後、ギルド前に一行は集合した。


「……アーシア、朝からご苦労様」


 瑠乃はアーシアの足元を見て、そう言った。


「ああ、私に気にせずに行っていいよ。こいつはギルドに置いていくから」

「ミオ君、アーシアが動きにくそうだから、離してあげてくれないかな……」


 アーシアはおそらく足元を見ているであろう面々にそう言ったが、それを見かねたのか、ミオがアーシアの足に寝ぼけながらもしっかりとしがみついていたため、瑠乃が声を掛ける。


「あー、瑠乃さんだー。お久しぶりでーー」


 ミオの言葉は、一度切れた。

 無論、視線はシエルを捉えていた。


「アーちゃん、どうしても行くって言うなら、僕も行く」


 ミオは、はっきりそう言った。


「思いっきり嫌われてますね、副会長♪」

「……お前、何か楽しんでないか?」


 瑠乃がそんな様子を見て言うと、シエルは不機嫌そうに言う。


「しょうがないなぁ。先に行っててください。後で追いかけますから」


 アーシアはというと、そう言うや否や、ギルドに入っていった。


   ☆★☆   


 数分後、一行に追いついたアーシアの元には、ミオの姿はなかった。

 だが、その代わりに、あり得ないものがアーシアの肩に居た。


「アーシャ、何ソレ」


 尋ねたのは、呉羽だった。

 軽く首を傾げるアーシアだが、ああ、と気付いたかのように言う。


「こいつのこと?」


 自身の肩に乗っかる猫を差して、アーシアは尋ねる。


「そうだよ」


 瑠乃が同意する。


「簡単に言うと、ミオ」

 本当に簡単だった。


「ミオって、さっきの男の子? だよね」


 エヴィンが尋ねてくる。


「うん。だけど、余りにもしつこいから、この姿で連れてきた」


 アーシアがそう言うと、シエルが怒ったかのように言う。


「学生は獣化魔法の使用は禁止なのにか?」

「副会長さえ言わないと約束できれば、問題ありません。瑠乃たちが言うはずもありませんし」


 アーシアにそう言われ、シエルは唸った。

 ただ、目的地に着くまで、ずっとアーシアの肩の上の猫に睨みつけられていた。


   ☆★☆   


 街を出て、二日後に目的地に到着した。


「わぁ、思ってたよりも大きい」


 目の前にそびえ立つ時計塔に、みんなの感想は同じだった。


『アーちゃん、この魔力……』


 だが、アーシアとミオだけは違った。

 実際、感じ取ったミオはアーシアにテレパシーで話しかけている。

 時計塔から感じる魔力に、あるものを感じた。


(この魔力は……)


「あれ、何やってるんだ?」


 アーシアが回想に入ろうとすると、隣からの声で、引き戻された。

 目を向ければ、何人かの男たちが時計塔の壁を見ながら、何かを話していた。

 彼らの後ろから見てみれば、暗号なのか、時計塔の壁には文字が並んでいた。


(あ、これは……不用意に解読すると、大変だぞ……)


 アーシアとミオが思っていると、瑠乃が小声で聞いてくる。


「シア、もしかして、読めてる?」


 アーシアは小さく頷くと、男たちから少し離れたところにいた男に気付き、話し掛けた。


「あの、すみません。あの人たちは何やってるんですか?」

「ん? ああ、みんなこの時計塔にあるこの文字を解読しようとしているんだよ」


 男は最初、アーシアを不振そうに見ていたが、親切に教えてくれた。


「文字……ですか?」


 アーシアは首を傾げた。


「うん。文字は昔のものらしく、解いたら、地区長が賞金をくれるらしくてな。それで、みんな説くのに必死なんだ」

「はぁ……、ありがとうございました」


 男に礼を言い、みんなの元へ戻り、男たちの行動についてアーシアは説明した。


「ふーん。じゃあ、みんな賞金目当てなんだ」

「そういうことだね」


 瑠乃の言葉に、呉羽が同意し、続けた。


「あー言うのって、大体不用意に解読すると良いことがないんだよね。だから、解読しない方がいい気がする」

「呉羽の言う通り、あれは解かない方が、この町のためだ」


 アーシアも肯定するが、ミオを抱く腕に力が入っていたようで、ミオが『痛いよ』とテレパシーで訴えてきた。


「え、アーシャ解けたの?」


 呉羽が驚いたように尋ねる。


「半分だけね。だけど、読み取れたのは、『解読できても口にするな』の一文だけ」

「って、シア。もう口にしてるじゃない」

「あーいうのは、一文だけじゃ効力は出ないから大丈夫」


 瑠乃の言葉に、アーシアは言った。


「でも、中には一文だけでも効力を表すものはあるぞ? しかも、これがその類かもしれない。保証なんてないだろ」

「それもそうですが……」


  の言葉にアーシアは納得できなさそうに返事をした。


「とりあえず、依頼人の所に行きましょうよ」


 シエルがそう促し、一行は依頼者の元へと向かった。

 そこで聞いた依頼は二つ。

 一つは、時計塔に住むと言われるの化け物の退治。

 もう一つは、時計塔の壁にあった文字を、他の挑戦者より先に解読することだった。


「化け物退治と、解読かぁ」


 依頼内容を聞き、一行は頭を悩ませた。

 一応、退治組と解読組に分かれることにしーー


「解読はシアに任せるとして、エヴィンさんたちは化け物退治の方で良いですよね?」


 瑠乃の言葉に、二人は首を縦に振ったが、アーシアが待ったを掛けた。


「何となくだけど、その化け物は、文字を解読しない限り、無理な気がする」


 アーシアの言葉に、ミオも頷いた。


「どういうことだ?」

「何というか、文字と化け物って、何か関係がありそうっていうか、その……」


 説明しにくそうなアーシアに、聞いたシエルも首を傾げた。


「根拠は?」

「もちろん、勘です」


  の問いに、アーシアは言い切った。


「でも、シアの感は外れたことはほとんど無かったもんね」


 瑠乃はそう言う。


「どこの世界でも、女の勘は怖いな」


 などと、呉羽が呟いていたが、面々は気付かなかった。


   ☆★☆   


 その日は、この町の民宿(どっちかというと旅館やホテルに近い)に泊まることになった。

 だが、運は相手が神だろうが無かろうが容赦なかった。

 二つしかない六人部屋を取るのまではよかった。

 だが、どのベッドを使うかで、口論となり、くじ引きで決めることになった。

 結果、

①瑠乃

②呉羽

③シエル(副会長)

④エヴィン

⑤ 

⑥アーシア

 となったのである。

 結局、残ったベッドに座るアーシアだが、アーシアのベッドは窓に近いのである。


「ちっ、戻ったら呪ってやる、運の奴め」


 実際、運はないのだが、運を司る神はいる。遠回しだが、そういうことなのである。

 なお、位置は隣は呉羽、正面は瑠乃、斜め前はエヴィンである。

 なんだかんだで、用意していたら、夕食の時間になり、一行はレストランに向かった。

 が、


「……」

「……」


 アーシアと瑠乃は固まった。

 居ないはずの人物が居たからである。


「どうした? 二人とも」


 固まった二人に疑問を持ち、呉羽は尋ねる。


「呉羽、悪いけど私部屋に戻る」

「わ、私も……」


 あからさまに様子が変な二人に気付いた他のメンバーも、不思議そうな顔をした。


「本当に、ごめんなさい!」


 そういうと、二人はダッシュで部屋に戻った。


「あれ? 早かったね」


 息切れをする二人を見つつ、留守番係のミオはそう告げる。

 だが、その声を聞き、アーシアはミオに今まで以上に思いっきり詰め寄った。


「ミオ、緊急事態。落ち着いて聞きなさいよ?」


 そういうと、アーシアはミオに対し、先程瑠乃とともに見た光景を、説明した。


「なっ、何だってーーー!」


 余りの驚きに、ミオの言い方は普通だった。

 二人が見た人物は神の一人だった。

 だが、ただの神ではなく、天上界の神々すら鬱陶しく思われている存在であり、瑠乃の場合はこちらの世界に来て、アーシアに召還され、アーシアに神々に紹介される際に、最初に自己紹介したのも彼だった。

 アーシアにしてみれば、ミオの迷惑なんか可愛いものである。

 ミオにしても、撃退できないことはないのだが、会うのすら嫌なのか、もの凄く嫌そうな表情をしている。


「どうしようか。いつまで居るのか分かればいいんだけど、あいにく、聞きに行きたくない」


 瑠乃の心境は、アーシアとミオと重なった。


「とりあえず、夕食はどうしよう」


 思わず、勢いで出てきたため、その問題だけが残ってしまった。


   ☆★☆   


「で、事情を説明してもらうぞ」


 男性陣が夕食を貰ってきてくれたのか、それを食べた後、呉羽たちに尋ねられた。


「いや、その……今ものすごく会ってはいけない人を見つけたので、逃げ出しました」


 ここで嘘を言ったら、怖いと判断した二人は、正直に言った。


(その反動で敬語口調になったのは、許してほしい)


 そんなアーシアの言葉を聞き、面々は呆れた。


「それでよく、依頼を受けてきたなぁ」


 エヴィンが呆れたように言う。


「何とか見つからないようにしていたから……」

「え? じゃあ、あの時は?」


 アーシアの言葉に、呉羽が思い出したかのように言う。

 アーシアと瑠乃は互いに顔を合わせる。


「えっと、いつ頃?」

「学院に入ってから」


 瑠乃の問いに、呉羽は答えると、アーシアと瑠乃はああ、と言った。


「うん、見つかったら何言われるか分からなかったから、隠れていた。でも、あの時は、事情を説明したはずだけど……?」


 首を傾げるアーシアに、呉羽は他に言いたそうにしていたが、言うのは止めたらしい。


「まぁ、事情はわかった。だが、今回は私情を挟んでもらっては困る。俺たちもいるんだからな」


  の言葉に、二人は大人しく、うなだれた。



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