第一話:人間界へ
第一章:人間界・アストラ王国、シルフィード魔法学院へ
「いっやぁぁぁぁ!!!!」
篠崎瑠乃は涙目というかすでに泣きながら悲鳴を上げ、遙か上空から真下にある地上を目指し、猛スピードで落下中である。
「落ち着きなよ。着くときは私が魔法で助けてあげるから」
「落ち着けるか!」
隣で同じように落下中のアーシアに、瑠乃は噛みつく。
この状況に至るまでを瑠乃は思い出してみる。
ゲーム『神様との応酬』。
制作者不明のこのゲームは、神々が管理し見守る人間たちや異世界の者たちを巻き込み、彼らの相手をする神々は次々と疲弊し、中には倒れる者もいた。
そこで、女神であるアーシアと彼女の元に喚ばれた私は、彼女から事情と今までの経緯を聞いて、ゲームの破壊に協力した。
だって、破壊すれば元の世界に帰してくれると約束してくれたから。
それなのにーー
「じゃあ、次は制作者を捜そうか」
「はぁぁぁぁっ!!!?」
神様の中でも上の位にいる神様にそう言われたとき、私とアーシアは叫んだ。
「破壊するだけでも、どれだけ掛かったと思ってるんですか! 私も彼女も少しぐらい休憩させてくださいよ!」
「私、破壊すれば帰れるって、聞きましたよ!?」
二人で抗議するが、私たちの肩にそっと手を置いた神様は、
「任せた」
と親指を立てて告げ、去っていった。
「……」
その場が静まり返る。
「ふっざけんなっ! ゲームの破壊はみんなが困ってたからやったけど、制作者捜しは別だろうが! 何あれ! 見つかるまで帰ってくんなってことかよ!」
アーシア、発狂。
相当頭に来たらしい。
「で、瑠乃はどうするの? 破壊すれば帰す約束だったし、今からでも帰ること出来るよ?」
あっさり切り替えられたけど、叫んだことで少しスッキリしたらしい。
「私が帰ると、一人で捜すことになるよ?」
「そうなんだけど、こっちの事情で巻き込んだからね。もう迷惑掛けたくないし」
まあ、アーシアの気持ちは分からなくもない。約束だったから、守ってくれるのも嬉しいけど。
「巻き込むなら最後まで巻き込んで。中途半端に帰ったら、見つかったかどうか分からないから」
それに、心配でもある。
「本当にいいの?」
「うん。気になったままじゃ落ち着けないし」
「ありがとう、瑠乃」
そうそう、アーシアは笑ってないと。
「じゃあ早速、異世界用の偽名と姿を決めないとねー」
「ちょっ、それはアーシアも一緒でしょ!?」
と、瑠乃の見た目と自身の見た目はアーシアが魔法で変えながら思案し、偽名については本名から付かず離れずのものをということなった。
「瑠乃さん、瑠乃さん。現実逃避もいいけど、そろそろ着くから」
ここまでの流れを思い出した瑠乃は、目の前に見えてきた大地に対し、アーシアに目を向ける。
「じゃあ、着地するね」
アーシアが魔法を発動すると、ふわり、と二人は大地に降り立つ。
「はーっ、やっと着いた」
「やっぱり、地に足がつくのはいいわね」
安堵の息を吐く瑠乃に、アーシアも足踏みをする。
「で、ここはどこなの?」
「ちょっと待って……」
マップ、マップと言いながら、アーシアの前にゲームみたいなステータス画面が3Dのように現れる。
「あ、あった。現在地はね……【アストラ王国:西の森】だって」
「アストラ王国?」
瑠乃は首を傾げる。
異世界なので、知らない地名が出てきてもおかしくはないのだが、どうにもアーシアの様子がおかしい。
「えっと、簡単に言えば、私を崇拝というか、信仰してる国なの」
「……」
アーシアは女神である。
どこかで信仰されててもおかしくはない。ないのだがーー
「ヤバくない?」
「冗談抜きでマズいです」
下手をすればバレる。主に神殿とか教会方面の人に。
どうしよう、と唸る二人だが、アーシアが何かを察知する。
「何……?」
「え、どうしたの?」
不思議そうな瑠乃に対し、彼女と自分に姿変化の魔法を掛ける。
「不自然な魔力の流れ……瑠乃、少し移動するよ」
「え? あ、うん」
いきなり歩き出したアーシアに、瑠乃は戸惑いながらもついていく。
少し歩くこと数分、アーシアは、そして瑠乃も理解した。
「っ、」
未だに光り続ける巨大な召喚陣の上に、瑠乃と同年代、または少し下に見える少年が倒れていた。
早速、何らかのトラブルに巻き込まれたらしい二人
ここで少し、二人の容姿説明
○アーシア
女神及び本気時:紺色の髪に緑色の瞳
人間界時:茶髪に緑色の瞳
○瑠乃
基本:黒髪に黒眼
変化後:髪はアーシアの魔法で、若干青みがかっている。