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よほろ軍談記   作者: 鈴木カラス
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第2話 「怒りの歴史」 その4

 王都を奪回し第二王子フィリップを奉ずる南部諸侯の連合軍を破った第一王子シャルルであったが、依然として新王として即位できずにいた。

 元々シャルル王子は先王の正妃であるアンヌ王妃の長子であり、王太子に即位していないとはいえ公妾ポンパドールの子であるフィリップ王子より格上の存在であった。さらに言えば王国の歴史の中で公妾の子が王位についた前例は無い。国法で認められた王の愛人である公妾の地位は王族と等価であり社交界のみならず政治面でも少なくない発言力と影響力を持っていたが、それ故に王が亡くなればその権利の一切を剥奪される一代限りの身分だったからである。これは王の庶子として高い爵位や広い領地を与えられる彼女たちの子も同様だった。

 しかし、それは飽くまで暗黙の了解に基づく慣例であり、実は王室法典の中には明確に公妾の子つまり庶子の王位継承権を否定する文言は無かったのである。

 歴代の公妾の中でも一際才気に溢れ、後の世に女傑と評されることになるポンパドールはその事実を発見し、前代未聞となる庶子身分の王位継承を唱え、シャルル王子より早く即位に必要な三種の宝具を抑えたのである。

 王国の開祖クロヴィス一世が古都ランスの大聖堂で神の名の下に王国王として即位した故事に習い、歴代の国王は全てランスにて三種の宝具――王冠、宝剣、宝玉を揃えて洗礼を受ける必要があった。これは国法でもあり、仮にシャルルが王太子であったとしても、三種の宝具無くしてランスでの洗礼を受けることは叶わなかったのである。

 そして三種の宝具は、王国最南部へ一時撤退したフィリップ王子の元にあった。

 決戦の勝利によって盛り上がっていたシャルル王子派の中には、この勢いのままフィリップ王子を追撃して宝具を取り戻し、一日も早い新王即位をと声高に叫ぶ者――特に侍従長ミシェイルを中心とする文官に多くいたが、将軍となったローランドはその声を静かに否定した。フィリップ王子派の支持層は母ポンパドールの出身地である王国最南部の大都市マルセイユ近郊が最も多く依然として大きな勢力を保っていたし、深追いすることで王都を手薄にする危険があった。常にローランドを警戒していたシャルル王子軍の重要な戦指揮官でもあるナンシー伯カイン=ローレルも、この時だけはローランドの意見を否定せず、性急な好戦論を制止した。

 目をかけ取り立ててやったローランドの反論にミシェイル候があからさまな不満の態度を見せ、かと言って他に有効な策が出ず陣営内に窮屈で重々しい手詰まり感が漂った時、ローランドは満を持して一つの秘策をシャルル王子に献上した。


 遠征軍『旅団』による帝国侵攻作戦である。

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