囚われの姫?
朝日が射し込み、鳥の鳴き声に起こされたリシェア。
ぼんやりと昨日のことを思い出す。
(・・・精神的ダメージを負った割りに落ち着いてるわね・・・。それとも、気が狂う一歩手前なのかしら。)
散漫な思考力の中に沈む。
コンコン。
と、戸を叩く音がリシェアの耳に入る。
返事をする気は無いらしく、無視をしたのだが構わず戸を叩いた主は部屋へ入っていく。
「やっ。気分はどう?少しは落ち着いた?おなか空いてない?」
ダークの口からは次々とリシェアを案じる言葉が出てくるのだが、リシェアは目すら向けない。
「・・・。えー、コホン。ご機嫌斜めなのは分かるんだけどね・・・。少しは聞いて欲しいなぁ。」
「・・・。」
「はぁ。とりあえず朝ごはん、置いとくから食べなよ。君の血がおいしいかどうかは、健康状態と機嫌で決まるからさ。」
だんまりを決め込むリシェアにダークは、一方的に朝食と言葉を押し付け部屋から出て行った。
朝食のメニューは作りたての柔らかそうなパンに木苺で出来たジャム。
そして、入れたての紅茶にミルクと砂糖が添えられていた。
ちらっと朝食を見て、扉を見て、また朝食を見る。
くぅぅぅぅ~。
と、かわいらしくお腹が鳴った。
一人で居てもお腹が鳴れば恥ずかしい。
リシェアは思いっきり赤面した。
しばらく悶えた後、まだ暖かい湯気を出している朝食に手を付け始めた。
(おいしい・・・。ヴァンパイアって人間の食事は必要ないはずなんだけど・・・。)
そのままそう時間もかからずぺろりと平らげてしまった。
食べればどんな状況だろうと元気が出る。
こうなると考えは逃亡のほうへ向く。
昨日は部屋全体を覆っていた茨はもう無く、逃げるには絶好のチャンスだ。
(んー。ここはセオリー通り窓から逃げるとか?)
窓辺に寄って高さを見る。
(高っ。三階?いや、四階?とにかく高いわ。これはあきらめるしかないわね。)
「逃げるの?」
突然、リシェアのすぐ耳元でダークの声が響く。
「っ!きゃあああああああああ!」
「そんな驚かなくても・・・。あ、ちなみに窓開かないから。施錠したんじゃなくて、錆びてるみたいでさ。いやぁ、僕も開けようとしたんだけどね?風の通りが悪いし。」
すぐ背後に立っていたダークを思いっきり突き飛ばした後叫びながら隅まで下がったリシェアに苦笑しながら、リシェアにとってどうでも良いことをダークはしゃべる。
「そそそ、そんなことどうでも良いわよ!い、い、い、いきなり耳元で声がしたら驚くに決まってるでしょ!」
「そう?まあ、いいや。それよりも元気になったみたいだね?という事で昨日言えなかった事を言わせてもらうね?」
「嫌な予感しかしない・・・。」
「大丈夫、大丈夫。えーっと、まず謝んなきゃいけないことがあるんだ。昨日の発言に関して。」
「はぁ?どういうこと?」
「半分くらいノリで言っちゃった。ごめんね?てへ。」
「は?・・・ノリ?何が?ごめんって・・・え?」
「うーんと・・・。脅しっぽいところがウソ。なんかヴァンパイアっぽいかなぁって。」
「ヴァンパイアっぽい・・・?り、理解できない・・・。こいつは何を言ってるの・・・?」
リシェアは混乱をし、頭を抱えて座り込んでしまう。
「えー、大丈夫?えっとぉ、簡潔に言うと、君を本気で監禁するつもりもないし、そもそも僕には眷属にするしない以前に眷属を作ることは例外的状況以外できない。ついでに言うと血は君が干からびるほど飲む気は無いよ。そんなにいらないからね。」
昨日と同じようにニコニコとリシェアに微笑みかける。
だが、昨日ほど恐怖を感じない。
朝だからだろうか。
それとも、何か別の理由があるのか。
リシェアには判断がつかなかった。
ただ、理解できたのは、自分が安全だということ。
そして、このヴァンパイアは人間に対して悪意を持っていないということだった。
「あんたは・・・何がしたいの・・・?」
「ん?んー、まあ、とりあえず平和に過ごすことかな。」
「平和、ね。ヴァンパイアの口からそんな言葉が出てくると思わなかったわ。・・・ねぇ、平和にいきたいんだったらあたしたちの協力してくれない?」
「協力?んー、血をくれてやるから働け!ってこと?」
「ものすごい悪意を感じるけど・・・。似たようなもんかしら。ヴァンパイアにヴァンパイア狩りを手伝わせるんだし。」
「じゃあ、ヴァンパイアは後一匹だね!」
「そうね。あとは・・・そうね、ケェーナたちとも相談したいわね。監禁するつもりが無いってんなら村に行ってもいいわよね?」
「えっ?ちょっとそれは・・・。」
「い・い・わ・よ・ね・?」
「・・・ハイ。」
ショックから立ち直ったリシェアとおどされ・・・ではなく積極的に協力する気のダークはその日のうちに出発した。
後半ほぼ会話文・・・。
どうも私は地の文がニガテ・・・いやなんでもないデス。
だれか何か直したほうがいいところでも教えて欲しいです・・・。