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夜の森は奈落のようで

*文変えましたー

奈落のように暗い森の中をリシェアは一人歩いていた。


足元もおぼつかないほどの闇。


押し寄せる恐怖と戦いながら進むこと一時間。


リシェアは村まで戻ってきていた。


「どういうことよ?森の中心部へ進んでいたはずよね・・・」


考え込むリシェアに背後から声をかける人物がいた。


ナハトだ。


「お前、無事だったか・・・」


「あ、ナハト?・・・あれ?ケェーナは?」


疑問符を頭の上に浮かべながら振り返る。


ナハトは眉間にしわを寄せ、うなる。


「いきなり反応が消えた。あなたの反応も消えたから心配になってここまで戻ってきたんだ」


「なんですって!?・・・作戦失敗ね。ケェーナの反応がどのあたりで途絶えたか分かる?」


驚愕し、目を見開くが、ナハトの不安げな表情にすぐに落ち着きを取り戻す。


リシェアにそう聞かれ、こっちだ、と言って再び森へ入ろうとするナハト。


しかし、突然耳に滑り込んできた声にびくっと足を止めてしまった。


リシェアには聞こえなかったらしく、怪訝そうな顔をされながらもナハトはあたりを探った。


その声は、確かにナハトの耳元でささやいたのだ。


≪夜の名を持つ同胞よ。君の主は無事だ――≫


と。


しばらく反応を(うかが)っていたナハトだったが、リシェアに話しかけられたことによって中断することとなった。


「ちょっと?いきなり立ち止まんないでよ」


迷惑そうに言われ、ナハトは一瞬固まる。


「あ・・・、すまない。いきなり誰かに(ささや)かれたものだから驚いてしまって・・・」


(ささや)かれた?どういうことよ?」


またも疑問符を飛ばすリシェアに、うつむいて考え込み、やがて状況を整理してから説明した。


「いや・・・。君の主は無事だ、と。君は分からないかもしれないが周囲の魔力が一瞬乱れたからな。ヴァンパイアがやったんだと思うが・・・」


「うーん・・・。全っ然!分かんなかったわ。というか主って誰よ」


リシェアは何かを念じるような仕草をした後、ケロッと返した。


「あー。たぶん・・・ケェーナのことだと思うが・・・」


「あらそう。じゃあとりあえずはケェーナは無事なのね。まあ、捜しに行かなくちゃいけないのは変わんないけど」


まだ何かうだうだと考えているナハトに対し、リシェアは気楽そうに言う。


「そうだな。じゃあ、まあ、改めて。出発しようか」


「そうね。ほら、さっさといきましょ!」


リシェアに背中を押され、急かされナハトは再び歩を進めるのだった。



森の中を進むこと2時間ほど。


リシェアとナハトは今、ケェーナの反応が消えた辺りにいた。


だが、何の痕跡も残っていなかった。


おかげで、リシェアもナハトも立ち尽くしていた。


「うーん・・・。何か痕跡でも残ってると思ったんだけどなぁ・・・」


「何も無いな。さっきの声の主がここに居ればと期待したんだが・・・」


不自然、である。


生き物が歩いた形跡すらない。


手際が良すぎなのだ。


この近くにヴァンパイアが居るのは間違いなかった。


と、ここで周囲を探るために今まで目を(つむ)っていたナハトがいきなり目を開いてある一点を見つめた。


その様子に気づいたリシェアが、首をかしげながら口を開く。


「どうしたの?何か分かった?」


「・・・ああ。この辺りに結界が張ってあるようだ。人を惑わす結界が、な」


ナハトは意外そうに言う。


それを聞いてリシェアも、意外そうにする。


「あら、誘うんじゃないんだ?ふーん・・・。ま、いいや。その結界って破るか通るかできる?」


「通れはするだろうが・・・。おそらく、出れなくなるな。それでもいいか?」


破れないのは、結界の主がナハトより強力な証拠だ。


「全然かまわないわ。出る方法は一応あるもの」


ナハトの問いに至極あっさりとリシェアは答えた。


ナハトは怪訝そうな顔をしつつも、そうか、とだけ返し結界があると言う空間に手を向けた。


魔力を扱う素質が無ければ分からないが、うっすらと張ってある膜状の結界に、ジワリとナハトが操る魔力がしみこみ、人一人(ひとり)が余裕で通れる大きさの穴を開ける。


「これでしばらくは通れるぞ」


「よしっ。それじゃ、行きましょ」


そうしてリシェアとナハトは結界にできた穴を通って行った。



結界を通った後、二人はさしたる障害も無く、茂る木々の先にあった、古びた教会に着いた。


古びてはいたが、まだ使われているのか門には開閉した形跡があった。


二人はぽかーんと口を半開きにした間抜け面で門の前に立っている。


「教会だわ」


「教会だな」


「・・・ヴァンパイアが結界を張ってる中に教会があるわ」


ヴァンパイアが張ったであろう結界内に教会である。


「そう・・・だな」


驚愕がさめるまでしばし沈黙がおりる。


「・・・」


「・・・」


ややあって、先に驚愕から覚めたリシェアは、ややぎこちなく門を開けた。


その途端、リシェアの意識は闇に染まった。

知ってるかもしれませんがナハトってドイツ語で意味が夜なんですよ。


察しがいい人は(良くなくてもですが)既にナハトのことでピンと来るものがあるんじゃないかと思います。

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