【第5話】とどめ
もやもやした意識の中、腕に伝わる感触。柔らかく、手応えがあり、温かく、生ぬるい。自分の身体は冷めきっていて、なおかつ火照っている。そうとしか言えない。大きく息を吐き、ゼーレを貫いた手を抜き取る。血はない。さっきと何ら変わらない。地面で唸りながら痙攣しているゼーレにぽっかり空いた穴からは、霧のような光のような何かが溢れている。しかし、まだ生きている。死んでいない。
息の根を止めなければ。
そう思うと、身体の中を巡る何かが1ヶ所に……喉の辺りに込み上げてきた。集まる集まる、凶暴な力の塊。膨れ上がり、膨れ上がり、閉じた口からまばゆい光が漏れ出す。つま先立ちの獣脚でゼーレの肩を踏みつけ逃げられないようにする。そして手でゼーレの顎を掴む。憤怒の色を目に浮かべるその顔に、口を大きく開ける。エネルギーはもう集まっている。浴びせるだけでいい。唸り声が聞こえる。僕の口から聞こえる。
勝者の唸り声だった。
ゼロ距離で放たれたそのエネルギーは、ゼーレの頭部を吹き飛ばすのに十分過ぎる威力だった。ちりぢりの光の粒と化し消えていくその身体、僕は無意識にその中心にある一回り大きな光の玉を見つけ、わし掴みにした。そして、僕がされたように、荒々しく、それを、喰らった。
そこに僕の意思はない。勝手に身体が動いていた。
楽しい楽しい束の間の夢のように。
けれどこれは悲しい悲しい終わらない現実なのだと、僕は知る事になる。




