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復讐は突然の日に起こった。
突如、欲望の衝動がきた。
肉を食いたい。
復讐者の怨念だ。
分かっている。
ダメだ。やってはいけない。
本能が理性を喰い尽くされそになりながらも抗う。
食いたい。あの塩辛い肉を喰いたい。
人の肉を喰いたい。
「っっっ!」
声にならない喘ぎ声を出す。
くそっ!
インスタントのラーメンを作りながら沸騰している片手鍋を吹き飛ばした。
熱いお湯が右腕全体に飛び散る。熱いはずなのに熱いと思わなかった。
ただ赤くなるだけだった。
やばい、痛みを感じない。体中が凍りつく。
見えない恐怖に襲われ
まるで自分の体じゃないような、錯覚におちいった。
くそ、こんな事なら誰かに殺してもらえばよかった。
「相川夏唯・・・。まさか、死ぬ間際におまえ顔が浮かんでくるなんて」時間が過ぎ度に理性がなくなるのが実感してきた。
もう、おれは長くない。
「すまない、オームさん。約束ははてせないようだ。世界を変えたかったな」
意識が虚になってきた。
狂喜が体の中で弾くように広がっていく。
――――
「黒岩、今の世界はおかしい。上の人間がいいように世界が変わっていっている」
「庶民にも変えられる世界にしてやるぞ」
――――
オームの幻覚が走馬灯のように流れた。
「オームさん、オレはもうおしまいです」
「世界を変える夢をはてせないよう・・で・す」
途端に意識が深い海に突き放された。