『5792番目の元勇者と元魔王』
続き書いちゃいました。会話文形式だと誰が話しているのかわからなくなるので勇者には『勇』魔王には『魔』をつけました。
勇「おつかれー元魔王」
魔「おお、元勇者、やっと死んだのか。おつかれ」
勇「やっととか言うなし。これでも一生懸命往生したんだぜ」
魔「お前俺が死んでからどんだけ長く生きてるんだよ、待ちくたびれたわ」
勇「悪かったって。でも俺一応妻子持ちだったからさー、色々死ぬのにも準備が必要なんだよ」
魔「嫌味か。生涯独身だった俺に対する嫌味か」
勇「なにこの人超ネガティブ。普通に結婚すればよかったじゃん。モテただろ? 魔王なんだから」
魔「そらモテたよ? モテまくりでしたよ? でも相手がサキュバスとかだからさー、なんつーの? 盛りまくり? 不倫しまくり? むしろ恥じらい? 道徳? 貞操? なにそれおいしいの? って奴らばっかだからさ……俺魔王だったけどそういう方面はキッチリしたいと思ってて、純愛を求めてたらいつの間にか死んでたわ」
勇「魔王がなにやってんのお前」
魔「魔王が純愛を求めちゃいけませんか」
勇「いけません」
魔「おい」
勇「いやだってさ、魔王だよ? お前神様から『魔王マニュアル』貰っただろ? そこになんて書いてあったよ」
魔「えーと『魔王とは世界を我が物にせんと企む極悪非道の糞親父である。故にろくな女にモテないし将来禿げる。絶対禿げる。品性方正である神が禿げているんだから魔王は絶対に禿げる。純愛? 結婚後の幸せな家庭? 全知全能である神が結婚に失敗し離婚の際親権を取られ慰謝料の支払いに苦しんでいるのに魔王がなれるわけないだろう糞が』……だとよ」
勇「神様……」
魔「これマニュアルとか言っておきながらほとんど神の愚痴だからな。ぶっちゃけほとんど読んでない」
勇「まぁ勇者マニュアルも似たようなもんだからな……俺も正直1ページ目で読むのやめたわ」
魔「どんなん?」
勇「『勇者とは神である私のように品性方正で清く強く正しい存在である。故に私のように他人(特に女性)に受け入れられる事はなく、また結婚をしたとしても絶対にうまくいかない。絶対にだ。あと禿げる。ストレスで禿げる。神である私も禿げているんだから勇者も当然禿げる。いやむしろ禿げろ。いやいや、むしろ剃れ。修行僧の如く頭を丸めろ。無駄に髪をなびかせるな。無駄に流し目を送るな。頭を丸め他人には厳しい表情で接し(特に女性には悪鬼の如き顔をせよ)自らも厳しく律せよ。それこそが、世界を救いし者としての在り方である。とりあえず禿げろ』」
魔「ひどいわ」
勇「だろ?」
魔「そういや、俺が死んで元魔王になった時、神様俺んとこきたわ」
勇「それでなんだって?」
魔「いや、なんか妙に嬉しそうな顔しながら『よくぞ孤独に魔王を勤め上げた! 偉い! 特に孤独というところがポイント高い!』とか言ってたわ。何度も『孤独』を連呼してたから多分結婚しなかったのが神様のツボだったんだろうな」
勇「だから俺のとこには来ないのか。結婚しちゃって子供を作って幸せ満点だったから」
魔「そうだろうな……神様お前の事上から見ながら舌打ちしてたし」
勇「え、なにそれ怖い」
魔「呪詛っぽいもんもなんか呟いてた」
勇「怖すぎて笑えない」
魔「その内邪神に進化するんじゃないかってくらい悪鬼羅刹の如き表情だった」
勇「多分肉体があったら失禁してるわ俺」
魔「こういう時魂だと楽だよな」
勇「魂様様だわ」
魔「お、次は5793番目の勇者と魔王か」
勇「現魔王盛りまくってんなおい」
魔「現勇者はまだ赤子か」
勇「前にさ、俺らも5793番目の奴らも『次期』だった時にちょっと話したんだけどさ」
魔「え? いつの間に? 俺の事も呼んでくれよ」
勇「悪い。なんか寝てたっぽいからさ。で、生まれたら何がしたいって聞いてみたのよ。そしたら次期魔王の方が『脱童貞』とか言ってきてさ」
魔「叶えまくりだなおい」
勇「で、次期勇者の方が『乳幼児の時におっぱいを堪能する』だった」
魔「そんな赤子は嫌です」
勇「二人とも有言実行だな」
魔「嫌だなそんな有言実行」
勇「生まれる前の記憶がないくせになぁ。魂に刻み付けられてでもしてんじゃないか」
魔「嫌な魂だな」
勇「そういうお前だって魂に『純愛したい』って刷り込まれてたじゃん」
魔「だって4000年前からの夢だったんだもん」
勇「その結果が生涯独身とか本末転倒も甚だしいぞ」
魔「言うなよ傷つくだろ……」
勇「ごめん」
『5792番目の元勇者と元魔王』完結
勇者と魔王は生まれた後も記憶があるの?というコメントをいただいたので書いてみました。