表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

第十五話 バッドエンド


 暗がりの中、咳を一回。数秒置いて、もう三回。身体が上下する度、骨の音がギシギシと響く。

 どうにか治まれと、苦しさを水で流し込む。息を整えて、十秒。咳の波は止まった。また始まったときの為に冷蔵庫から一つペットボトルを取り出し、ベッドに戻る。ベッドの上には、写真が散らばっている。


 ひとつは、「入学式」と書かれた看板の前に立つ母子の写真。またひとつは、「卒業式」という看板の前で仲良く肩を組む青年二人の写真。

 そしてもうひとつは、古びた旅館と大きな桜の木。それは色褪せていない。


「花取楓」


君への未練も、沢山の言葉を帯びて、綺麗に完成した。終わりはハッピーエンドじゃない、バットエンドだ。

 ヒロインも主人公も死ぬ、愛を伝えられずに。自分の望みを物語の中だけでも実現しても良かったが、それは僕の美学に反する。


 ノンフィクションのありのままの物語。僕は最後の言葉を頭の中でなぞった。達成感に包まれ、心がふわっと軽くなる。

 差し込む月明り、僕の影も随分細くなった。

 心地良い眠気が襲い、僕は目を閉じた。

 目を瞑り、じんわりとした視界の中、意識を手放した。


 桜は散っている。


 十一月二十日土曜日、夜十一時。


 僕は、もう目覚めなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ