第25話 しっかりシメておきました
ようやく屋敷に平穏が………なんてこともなく。
「どういうおつもりですか?!」
「何故我が娘が解雇なのです!!」
侍女や騎士達の親が屋敷に来て喚き散らしている。仕事したいんだけどな〜。まあこれも仕事のうちかしらん。
「じい」
「ええ、お任せください、お嬢様……いえ、小公爵様。聞け!!これから小公爵様が1人ずつ話を聞く!しかし、これだけの人数だ!要点を簡潔にまとめられていないものは後回しにする!!」
「ドアは開けたままとする。どんな会話がされるのか、貴殿らも気になるだろうし……小公爵様に襲いかかる者もいるかもしれぬ!」
傍らに立つのは騎士団長。仕事ができる2人に挟まれる安心感よ……。
最初に入室したのは侍女の父。確か伯爵だったかな。
「レッズ伯爵か。では、話すがいい。あくまでも簡潔明瞭にな」
「我が娘はこれまでお嬢様に何年も誠心誠意仕えておりました。ソレをあのような仕打ち……!無実の娘を投獄したばかりか着替えも与えず辱めを……!」
いやこれ、どこからツッコむべき?さては娘の訴えをまるっと信じちゃった感じ?
「先ず、誠心誠意は仕えてない。まともに勤務したのは最初の3日だけよ」
「なっ……」
「ええ……事実を聞かされて目眩がいたしました。これはレッズ伯爵令嬢だけでなく彼女らを管理するメイド長の落ち度でもありますが………彼女たちは亡き奥様の宝飾も持っておりました。現行犯として投獄しただけです。証拠隠滅などされてはたまらないですからね」
じい……なんか怒ってる?熱いんだが。頼むから書類は燃やさないでね。
騎士団長もめっちゃ眉間にシワ寄ってる〜。
「まあ、着替えを全部送っちゃったのはこちらのミスだから下着と服代ぐらいは出してあげるわ。まあ、働いてるふりすらせずにずっとサボってたわけだし、給料の返還請求と慰謝料請求するからそちらへの支払いの方が確実に上だけどね。盗品についてはお母様の遺品と知っていたか否かで罪が違うからそのつもりで」
「わ、我が娘はお嬢様に誠心誠意お仕えしていたのと……!」
意気揚々と金を巻き上げるつもりでいたのにむしろ逆に多額の請求をされて、冷や汗ダラダラだわ。
「その主って、私ではなくメイド長のこと?少なくとも勤務してる間、彼女と顔を合わせたこともないわよ。本来私の話し相手として雇われているのにね」
「我々がお仕えするようになってからも1度もいらしておりません」
「自分に押し付けて、上級メイド達も働いてなかったです」
ララとアリスが挙手した。
「そもそも、なんでお前の娘が私に軽く燃やされたか知ってる?」
「そ、それはお嬢様の機嫌を損ねたから……」
「では、機嫌を損ねた原因は?」
「そ、れは……」
知らないのだろう。それはそうだ。だって、言えるわけがない。
「私が不義の子だとほのめかしたの。お母様を馬鹿にしたのよ。そんなあり得ない侮辱をあの程度の軽い火傷で済ませてあげたの。私、優しいでしょう?お父様に知られたら、首が取れてたかもしれないもの」
私の魔力に呼応して赤い炎が人へと変わり、イフリートが現れる。
「でも、私は間違いなくお父様の子供よ。このイフリートが何よりの証」
「我はルビー=フレアを主と定めた。しかし、人の子は愚かだ。そもそも、何故わからんのだ。ルビーは髪も顔もフレアにそっくりだぞ」
「…………はい????え、フレア様は燃えるような赤い髪の持ち主では???」
「いや?ルビーと同じ色……戦場では赤い炎の色が移って赤く見えてたかもな」
私の赤色コンプレックス、無駄だったってこと……?
「ご主人様は、フレアより我を上手く扱っているぞ。フレアが扱えるのは赤炎だけで、白炎や蒼炎までは操れていなかったからな!」
まさかの始祖より魔法上手いと太鼓判……?え、マジ?マジなの??
「マジだぞ。間違いなくご主人様が今までで1番上手く我を使えてる」
「そ、そうなんだ……」
え、嬉しいけど普通に戸惑う。
「フレア公爵家は常に努力し力を磨き続けてきたからな。そりゃ、フレアより強くなるって」
「……そうなのね」
炎を蝶に変えてふわふわと飛ばしてみる。
「フレアはそ〜ゆ〜のもできねぇぜ。細かいの苦手だったんだよ。本人も大雑把だし」
「そ、そうなんだ」
後でゆっくり勇者フレアの話を聞いてみたいな。そのためにも、この茶番を終わらせないと。
イフリートを従えた姿に驚いているのだろう。皆呆然とこちらを見ていた。静かでいい。
ゆっくりとレッズ伯爵に近づき、小声で教えてあげた。
「裁判になったら彼女の粗相についても包み隠さず話してしまうけど……そうなったら彼女、嫁ぎ先なくなるかしら……?レッズ伯爵、今度こそ誠意を見せてくれることを期待しているわ」
「も、申し訳ありませんでした!さ、裁判だけはどうかご容赦を!!」
「では、誠意を見せてくれたら考えてあげるわ。それから、もうひとつだけ教えてあげる。お父様はとてもお怒りよ。先日、メイド長の実家であるメルト家を謀反の首謀者として潰したらしいの。私を殺して実権を握ろうとしていたとか………怖いわよね。首だけになったメルト侯爵を見て、メイド長……ああ、解雇したから元メイド長ね。彼女は泣き叫んでいたそうよ。お父様、お戻りになったら討伐後でもあるからピリピリしているだろうし、疑われてうっかり首を取られないよう気をつけてね」
レッズ伯爵は何度も頷いた。
「は、ハイ!給金の返還と慰謝料もすぐにお支払いいたします!小公爵様の御慈悲に心より感謝いたします!!娘にきちんとものの通りを教えられず、大変申し訳ございませんでした!!後日愚娘共々正式な謝罪に参ります!!」
床に額を擦り付けての謝罪。正確に伝わったようで何より。父まで愚かじゃなくて良かったわ。
「ええ、待っているわ。さて、他にも話したい人はいるかしら?」
その後はレッズ伯爵のように高圧的な態度をとるものはおらず、今までの非礼を謝罪する者や何か行き違いがあったようなので………と回避する者ばかりだった。
とりあえず屋敷でちゃんと仕事をしていなかった者については貴族であっても容赦なく解雇するし場合によっては給料の返還請求もあり得ると伝えておいた。
そして気がつけば慰謝料だけでランス公爵家の借金を返してもまだ余裕……………。ちなみに慰謝料は私がもらっていいとパパ様から許可をもらっている。
余ったお金で何を買おうかな。ドラゴンタクシーの停留所とか造っちゃう?でもこれ、他の領主も絡むから自領とランス公爵領と……ウインド公爵領、かな。お手紙書いておこう。先生絶対ドラゴンに乗りたいはず。
そしてその後の貴族たちはというと………。
「小公爵様!お慈悲に感謝しております!」
「今まで本当に申し訳ありませんでしたぁ!」
掌返しである。まあ、いいんだけどさ。顔を見るたび謝るのはやめて欲しい。うっとおしいわ。バカにされるよりはいいけどさ。




