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拝啓、悲劇的で素晴らしいゲームのシナリオライター様。私が平凡でつまらない物語に改悪してみせます。  作者: 明。


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第15話 奴隷と外出

 注文したいものがあったので、護衛を連れて外出することにした。騎士達はどうせうだうだ言うので奴隷達の中から適当に連れて行こうとしたら………。


 なんで囲まれたんだ。でかいしゴツいからちょっと怖いんだが?

 なんでそんなキラキラした目で尻尾を振るんだ。


 あ、今日は差し入れ持ってきてない。後でなんか差し入れるか。きっと奴隷生活辛くておやつが欲しかったんだな、うん。きっとそう!


「外出するから護衛として」

「はい!」

「はい!」

「はい!!」


 やる気がすごいが、ぞろぞろ連れて行く気はないので1人か2人かな……。

 結局リーダー格のベンがついてきた。他の奴隷たちの耳がぺしゃんこ……。つ、次連れてって美味しいもの食べさせてやるから!



 どうにか奴隷達が元気になり、無事出発となった。少し後ろを歩くベンに話しかける。


「そういえば槍は直ったの?」


「まだですが、来週ぐらいには直るそうです」


「よかったわね」


 ベンはなぜか槍を数本持っていた。扱いが荒いのか怪力なのか。

 まだ直っていない槍はよほど大切だったのだろう。確かに修理費は高額だったけど問題なく支払える範囲でよかった。


「はい!ご主人様には本当に感謝しております!」


 犬なのか狼なのか……尻尾をブンブンしているベン。ここ数日はすっかり警戒心を無くして忠犬のように私を見ると尻尾を振って駆け寄るようになってしまった。プライドとかどこいったんだ……?奴隷商でも折れなかった不屈の精神どこいった……?




 向かう先は商会だ。手土産におやつを買っていくことに。


「……失礼ですが奴隷の方は……」

「不愉快だわ。別の店に行くわよ!今後うちとの取引もなしね!お父様にお伝えしておくわ!」


 謝罪する店員を無視してケーキ屋から退出した。ここはうちの御用達だったのだが、契約は打ち切るとして………う〜ん、なんか対策しておきたい。

 次の店は同じく貴族向けの高級店だけど終始丁寧な応対だったので覚えておこう。店員にまた来る、私の奴隷が買いに来ることもあるからと伝えたが、笑顔で承知しましたと返してくれた。味が良ければここと契約だな。

 私の分も買ったし、あとで食べよう。イチゴのタルト、楽しみ!!メイド達と女子会するんだ〜。美味しい紅茶淹れてもらおうっと!



 


「ご主人様!」

「ご主人様?いらっしゃいませ!奥にどうぞ!おい、高級な茶はあるか?!ご主人様がいらしたぞ!!」

「もちろん!ご主人様用にストックされてます!」


 予想外の大騒ぎにビビる。あれよあれよと部屋に連れて行かれてしまった。え?歓迎ムードすごいんだが??

 奥の個室は貴賓室らしく高級感漂う部屋だった。店はパパ様が使ってなかった店舗をくれた。やはり持つべきものは金持ちのパパ様である。

 そしてアポ無しで来たのにめっちゃ歓待されとる。解せぬ……。


「本日はどういったご要件でしょうか」

「な、なにか不備がございましたか?」


「ないわよ。頼んでいた件は?」


「ご依頼のお品は既にご用意できております」


 う〜ん、仕事がデキる。そして用意されたお茶とお茶請けのクッキーおいしい。このクッキーどこの店か後で聞いておこうかな。


「ありがとう、助かるわ。大したものではないけどお菓子を買ってきたの。みんなで食べて」


「!?」

「あ、ありがたき幸せぇ!!」


 いや、大袈裟。そんな咽び泣くなよ……。

 商人経験のある奴隷達は私が写本だけでなく作ったアミュレットをアクセサリーや剣帯に加工したり、いわゆる傭兵や冒険者が必要とするものを多く取り扱っていた。おかげで私の懐は普通に写本を売るより潤いまくり。すでに公爵邸1軒ぐらいなら余裕で買えるぐらいの資産がある。さらに増え続けているので、ベンの槍代を払っても余裕である。


「それから、ちょっと相談なんだけどさ」


「なんなりと!」


 先ほどのケーキ屋での件を伝え、対策を考えてほしいと話した。彼らも同じことで困るはずだがどう対応しているのだろうか。


「なるほど。では、シンボルを持たせるのはいかがでしょうか」


「シンボル」


「例えば、奴隷の中でも我々のように商談を任される者はおります。貴族の代理として働くのであれば、その証としてシンボルを持つのです。つまり、我らを見下して不当な商談を持ちかけるのであれば背後にいる依頼人が黙ってないぞと示すものです」


「いいわね」


 そうすればメイド達に安心してちょっとしたお使いを頼める。お使いに行って不快な思いをさせたらと思ってたからな!

 騎士達や、使えない使用人達にも『お前らより信頼してるのよ』と示せるだろう。奴隷だけでなく、私直属の信頼できる者に渡しておくとしよう。

 今現在、信頼できる直属はアリスぐらいしかいないのが切ないが。


「では、使いやすいようブローチタイプでよろしいでしょうか?デザインですが……」


 テキパキと決めてくれて助かる。結局青い炎にピンクのダイヤ型にカットした宝石を埋め込んだものを使うことにした。


「ご主人様、我もこれ欲しいぞ!」


 すっかりうちのにゃんことなってしまったイフリートが出てきた。


「もちろんあげるわよ」


「………そちらのお方は………」


「…………気にしないでちょうだい。私の可愛いにゃんこよ」


「にゃんこ………?」


 聞きたそうだが面倒なので教えなかった。

 ブレスレットから出てきたイフリートは大変ごきげんだ。外に行きたかったんだもんね。今度散歩につれてってやるか。今日はこれからやることがあるから無理だけど。




「では、承りました。シンボルは出来次第、お屋敷にお届けいたします」


「ええ、待ってるわ」


 そう言って帰路につく。時間を気にせず外出できるとかありがたいわ〜。目についた店に入り、本屋で本を購入した。

 ベンはニコニコしながら邪魔にならないよう後ろを歩いてくれた。人がぶつかりそうになるとそっと庇ってくれる。う〜ん、いい買い物したわね!

 


 さ〜て、帰ったら早速実験しないとね!

 

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― 新着の感想 ―
のんびりお買い物できてよかったね、ルビーたん。なんとなく初めてのお使いっぽいと思ってしまいました。可愛い。 意外と稼いでるのが、中の人の年齢と金銭感覚を感じさせて好印象。どんだけかかるの?と思ってたベ…
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