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閉塞感を吹き飛ばせ  作者: 柿井優嬉


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 翌朝、登校するために家を出ると、大塚が早々に現れた。

「よお」

 昨夜ああ思ったのに、目にするとまた腹が立って、私はプイッと顔を横に向けて、無視して通り過ぎた。

「おい、まだ怒ってんかよ?」

「別に」

「昨日、お前帰っちまったから話せなかったけど、続きがあったんだぞ。つーか、そっちがメインだ」

 私は黙って歩き続けた。

「俺たちが何を良くしたくて頑張ってきたかっつーと、学校よりも、少子化をはじめとする社会全体だろ? それで一個思いついたんだ。お前、介護保険の存在は知ってるだろうけど、その中身について理解してるか?」

「……あんまり」

 話の展開が見えず、少し気になって、そう返事をした。

「うち、じいちゃんとばあちゃんが介護保険でサービスを受けてたから、てか今も受けてて、そんで俺、多少知ってんだけど、ケアマネージャーってのがいるんだよ。それは、一口に介護っていっても範囲が広くて考えることがたくさんあって、施設はいろんな形態のがあったりとかわかりにくい部分も多いし、介護される本人やその家族だけだと判断に困るから、詳しく知っているケアマネージャーって役割の人がだいたいのことを決めてくれるんだ。もちろん本人や家族が嫌だったら勧められてもやらなくていいんだけど、ほぼ丸投げできて、担当になったケアマネが合わなかったら別の人と代えてもらうこともできる。優れた制度だと思う」

 それが、何なの?

「でだ。今って、児童手当や、物価高とか何かあると給付金をやるけど、例えばギャンブルとか、本人や家族に浪費癖があったら意味ねえし、単にカネを配るだけじゃなくて、世の中のいろんな制度なんかについて、ケアマネージャーみたいに豊富で適切な情報を有している人間が助言したりして、上手に使いこなせるようにまでなってこそ、うまくいくと思うんだ。だから、例えば職探しや日々の困り事とか、生きていくうえで何でも相談できる、名称は『ライフサポーター』なんてのがいいかな? って人を希望する誰もが持てるようにすれば、生活の安定や安心が向上して、少子化に限らず、社会が明るく良い方向に進むんじゃねえか? 別に一人に対して一人のサポーターってかたちじゃなくて、集団で情報を集めて提供したりするのでもいいと思うけど。んで、昨日話した学校を改革してくれそうな優秀な面々に今の話をして、力を貸してもらえるってなってるから、お前、そのメンバーに加わらねえか?」

 ……。

「どうだ?」

「……そんなの」

「ん?」

「そんなのねえ……やるに決まってるでしょうよ!」


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