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「真琴、どうかした?」

 その言葉に、軽くドキッとした。

「え? 別に」

「なんか、たまにイライラしてる感じのときあるよね。生理が重いとか?」

「全然」

 私は大きく首を横に振った。

「ごめん、心配させちゃって。ほんとに何にもないよ」

 学校で、笑顔をつくって、クラスメイトで友人の朝香を安心させた。

 しかし正直に言うと、指摘されたように気が滅入ることがある。

 私の名は栗原真琴。現在、高校二年生だ。テレビのニュースは以前からそこそこ観ていたけれど、親から高校生になったら新聞くらい読まなきゃ駄目だと言われて目を通すようになり、社会の事柄の理解がかなり上昇した。人間の歴史には常に戦争があったみたいだし、どの時代も多くの問題を抱えていたのだろう。にしても、現代は日本国内も世界全体も、人々の存亡に関わるほどの、本当にやばい状況にあるのではなかろうか。そうしたのは大部分が過去の人たちなのに、私たち若い世代がたくさん被害を受けるうえ、今後事態はもっと悪化していくという。暗澹たる気持ちになる。

 でも、学校で周囲にそんな話をしてもシラケさせてしまうだけだろう。ただでさえ、お堅い、つまらない奴だと同級生たちに思われている感じなのに。

 ずっと不安で仕方ないわけではない。私の学校生活は幸せなほうであろう。

 けれども時折暗い気分になってしまうのを、朝香は仲が良くてよく一緒にいるだけあって気づいていたようだ。


「アー」

 学校からの帰り、電車通学の私は、到着した自宅の最寄り駅を出て、徒歩で七、八分の家までの道中にあくびをした。

 その直後だった。

「え?」

 目の前を横切った小柄な男のコに、私はすぐに気がついた。それが、あの大塚であることに。

「いやいやいや、待って。似てるだけでしょ」と心の中で冷静な自分が言った。

 が、直感のほうの己が「絶対に本人だよ!」と強く訴えた。

 ちょっと距離があったし、向こうはこっちを見ていない。私は近くまで急いで行き、数メートル後ろを恐る恐るついていった。

 大塚だろうと素早く思うことができたのは、ここのところあいつが頭に浮かぶ機会がたびたびあったからだ。

 もうおわかりかもしれないが、社会問題への関心が高まり不安にもなるなか、あの小学校の卒業式での大塚の「少子化をストップさせる」という宣言に対する興味が再燃したのである。

 中学生のとき、仲間内でちょっとあいつが話題になった際に、一人のコが「大塚くんて、おちゃらけてたけど、頭は良かったから、あの言葉は本気だったんじゃないかと思うんだ」と口にした。

 同じクラスだったので勉強の成績が良いらしいくらいは知っていたものの、当時そんなにしゃべったり接したりせず、私は大塚がお調子者という認識しかほぼないのだが、あのコが言ったことは当たりなのだろうか? だとしたら、どうやってやる気だったの? と、死んだゆえに無理だけれど、真意を知りたい気持ちが大きくなっていたのである。

 眼前で歩を進める大塚であろう男子は、亡くなった小学六年生の頃のままの姿だ。だからこそわかったのだけれども、要するに幽霊ということか? まだ明るい時間帯なのもあって、まったく怖さはなかったが、いざ声をかけようかという今、さすがに少し恐怖が込み上げてきた。

 すると、大塚だろう少年は、ピタッと足を止めた。


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