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私の友人の渡瀬繭子は地味だ。背は私たちの年頃の女子の平均より多分ちょっと低いくらいで、顔はバランスはいいけれどどのパーツも特徴がなくて、一回会っただけだと忘れられてしまう印象である。
といっても、別に見下しているわけではない。私の容姿のほうがもっとイケてない。私と繭子だったら、大概の男子は繭子のほうを選ぶだろう。
つまり、私たちはともに華やかさがなく、目立たないグループで静かな学校生活を送ることになる——そう思ったし、最初は予想通りだった。
ところが繭子は、性格が優しくて親切なのに加え、問題を解決する能力がすごくあって、困っている人を次々助けてしまう人間だったのだ。本人はその実績をアピールなどしないが、少しずつ噂が広まり、今では悩みを抱えるコがあちこちから頻繁に繭子のもとにやってくるのである。
「繭子さ、訊きたかったんだけど」
高校の休み時間に、私は言った。
「ん? なに?」
「あんたのその困り事を解決する、アイデア力って言うの? って、昔っから? 身につけるきっかけや出来事とかあったの?」
「ああ、お母さんがね、私がお腹にいる妊娠中から、この子が将来非行に走ったり、悪い方向へ行ったらどうしようってすごく不安だったんだって。まだ生まれてもないのにって周りから笑われたらしいけど、お母さんはずっとそういう悪い物事とは無縁だったから、現実になった場合にどう対処すればいいか見当もつかなくて心配だったみたい。それで考えて、私を『悪いことをするよりも、悪い状態のものを良くするほうが楽しいよ』って言って育てたの。『善いことをするほうが』よりも、本当に楽しいだろうし、うまくいくに違いないと思ったんだって」




