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第14話:イセカイde修学旅行


「よーし、全員集まったので出発しまーす」


 俺は転移ポータルの前にいた。

 興奮した様子で騒ぐクラスメイトを引き連れてポータルをくぐると、


「ようこそエジンへ!」


 兵士の爽やかな歓迎を受けて、ぞろぞろと転移してくる。

 魔法工学のメッカ、エジン国へ俺たちは二泊三日の修学旅行へ訪れていた。


「それじゃあみんな楽しもう!」


 すごくやる気に満ちたカリストロの声が聞えてきた。




「アリストテレスありがとう」


 生徒たちの最後尾で歩きながら俺は王女を見た。 彼女は首を傾げて「はあ……」と不思議そうに言った。


「いや、まさか本当にエジンに来れるなんて思わなかったから」

「そんなに来たかったんですか? 修学旅行」

「……うん、そうそう! 修学旅行に来てみたかったんだよ!」


「意外ですね」王女は勇者を見守りながら笑う。


「何が?」

「年相応なところもあるのだなあ、と。 普段は老成しているように見えるので」


 楽しそうに笑う王女の方こそ、修学旅行という非日常に浮かれているように見えた。


『勇者様~、アレ見てください』

『ねえ、勇者様~』

『勇者様~』


 離れた位置でも勇者の取り巻きの声が聞こえてきた。


「そういえば勇者のパーティーメンバーってどうやって決めるの?」

「スカウトや紹介で声をかけてますよ。 良い返事はありませんが」


 ため息を吐く王女を横目にやっぱりリアルは都合悪いな、と思い知る。


「最終的には有志ということになるかもしれませんね」

「まあ頑張って」

「あなたが立候補してくれてもいいんですよ?」

「お断り。 俺なんか足手まといになるだけだ」


 俺は平穏を愛する転生者(モブ)なのだ。






 一日目は町を観光し、工学に関わる施設を見学さてもらった。

 他国に来てもやっぱり困った美少女は現れないし、事件も起きない。 佐々木は取り巻きの対応に疲弊していたが、その他の生徒は概ね楽しめていたように思う。


「本当に大丈夫でしょうか? 私が」

「フォローしに行くなよ。 アリストテレスが入ると余計にややこしくなる」


 宿の部屋で俺は俯く王女に釘を刺した。

 王女が加わった所で、取り巻きにとっては餌を与えるようなものでしかない。


「打ち解けてくれることを願おう。 ダメだったらまた別の策を考えたらいいよ」

「そんな適当な」

「俺もお前も勇者も誰も正解なんて分かってないんだろ? ならウジウジ考えるより、次々に色々やった方が早いと思う」


 このやり方が正しいという保証もない。 でもやらなければ正解にもたどり着けない。


「アリストテレスは考えてから動きたいタイプなんだろうけど」

「そう……かもしれません」

「考えながら行動したっていいだろう?」

「言ってることが正しい気はしますけれど……なんだか納得したくないです」


「ところで」王女は言って怪訝そうに部屋に置かれた大荷物を指さした。


「何を持ってきたんですか?」

「ああ、これ? 明日のお楽しみ」


 俺が思わせぶりに言うと「そうですか」と王女は素っ気ない返事だ。


「では明日もよろしくお願いしますね」

「うん、こちらこそよろしく」


 そして部屋から出る王女に向かって俺は、


「あと、ごめん」


 と小さく呟いた。


***


「それじゃあ気を付けてね」


 とある宿の一室、二人の男女が静かに会話する。


「どうして、ここまで、する? あの、女、のため?」

「いいや」

「なら、どうして?」

「俺はこの世界がどうなろうと構わないよ。 ただこれが一番楽な方法だから、かな?」


 たどたどしい口調の女は一つ頷いて、溶けるように消えた。


「勇者が満たされることが俺の平穏に繋がるなんて、この世界の神様は恥ずかしがりで意地悪だよ」


 男の呟は遠くから聞こえてくる楽しげな声に書き消された。


***


 次の日、俺たちはゾロゾロとドーム型の施設へ向かう。 これからここでゴーレムコンテストが行われる。


「なあ、お前コンテスト出るんじゃないの?」

「いやー、親に反対されちゃってさ」


 俺は落ち込んだ風を装ってため息を吐くと、カリストロが口を尖らせた。


「なんだよー、せっかく手伝ったのに」

「うるせ一番落ち込んでるのは俺なの! 慰めてくれよ」

「おーよしよし」


 いつものように話しながら横目で周囲を確認する。


(情報通り)


 警備は大型のイベントにしては手薄だ。 異世界といえど現代では戦争もテロもない平和な世界。 おまけにここエジンは研究者が多く、戦闘員も少ないと聞いていた。





 ステージで白衣を纏った司会者がにこやかにコンテストを進行していく。


「まもなくコンテストが始まります」


「研究者たちのロマンと技術の結晶をどうかお楽しみください」


 コンテストはお祭りのような雰囲気で始まった。


 動物だったり、巨大な人形だったり、岩で出来た魔物を模したものだったり様々なゴーレムが登場し会場を盛り上げていく。


 そして、


「続いてのゴーレムは……



ーーアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア



っなんだ?!」


 突如上がった人が発したとは思えない気色の悪い叫び声。 それはまるで地獄から這い出る怪物の呻きのよう。


ーードンッ


 舞台裏から跳んできたソレが着地した衝撃でステージは破壊された。

 



 




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