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29. エリーヌ、4聖使の好感度を上げる


エリーヌの成績が、目覚ましく向上した。

基礎教養である作法や所作、儀礼の知識はまだまだだが、歴史や文化、地理に政治経済は、なんとか講義についてゆけるレベルにまでなっている。


「セスラン様、わたし今日先生にほめられました!

ずいぶんがんばったねって」


褒めて褒めてのオーラ全開で、セスランの周りをくるくると回る様子は、雪の色をした子猫がじゃれているように愛らしい。

ミントのソーダ水がはじけるような、元気な緑の瞳をいっぱいに見開いて、セスランの胸元からエリーヌは見上げる。

白銀の長いまつ毛を幾度か上下させることも、忘れない。


「これもセスラン様が、ずっとそばで励ましてくださったおかげです。

うれしくって」


「ああ。

成績が上がったのなら、それは良いことだ。

よ……く……、がんばった……な」


いかめしいもの言いばかりするセスランが、誉め言葉を口にするなど滅多にないことだとエリーヌは知っている。

たとえそれが、つっかえつっかえの棒読み状態のものだとしても、それは(ひとえ)に照れによるものだ。

「エルドラ」、ゲームの中でもそうだった。


「でもぉ……」


しゅんと、エリーヌは眉を下げる。


「パウラにちょっと悪いなぁって思うんです。

わたしばかり、こうして応援していただいて。

いいのかなぁって」


パウラを呼び捨てにしたのは、セスランを試すためだ。

初めての謁見で、呼び捨てを(たしな)められた屈辱を、エリーヌは忘れていない。

今、セスランはほぼ毎日のようにエリーヌの様子を見に来てくれる。

ゲームと違って、好感度のパラメータは見えないけど、きっとかなり上がっているはずだ。


「パウラ、きっと寂しい思いをしてるんだろうな」


「エリーヌ、お前はよく努力している。

だが礼儀作法は、今少し努力が必要だな」


ぎこちないひきつった微笑を浮かべながら、セスランはゆっくりと続ける。


「パウラが特に許さない限り、名前を、まして呼び捨てで呼ぶなど、礼儀に反することだ」


「わかってますよぉ」


ふっくらとした頬をぷうっとふくらませて、エリーヌはそっぽを向いた。

パウラをまだかばうとは。

ゲームのとおりなら、パウラ呼びを注意などされなかったのに。


「でもぉ、もっと身分の高い聖使様たちは、みんな名前で呼んで良いと言ってくださいます。

なのにパウラは、名前で呼んで良いと言わないんです。

わたしはただ……、いっしょに頑張るお友達として、仲良くなりたいだけなのに」


はぁ……と、セスランがため息をつく。

見事な赤毛の頭を振って、もう何も言わなかった。



同じことを、エリーヌは他の3人の聖使にもやって見せた。

感触は上々で、3人が3人とも、エリーヌの頑張りをほめてくれた。

特にあの無口なアルヴィドが、エリーヌには積極的に話しかけてくれる。


「成績が上がっているそうだな。

……………。

なによりだ」


とか


「おまえの頑張りには……、その……、頭が下……がる」


とか。


4聖使の中でもダントツで口の重い彼が、自ら積極的に話し出すのは好感度が140を超えたあたりからのはず。

200がマックスの好感度の7割を、エリーヌは既に超えているらしいとわかる。


(狙いどおりよ。

セスランとアルヴィドを押さえて、ホントならここでセーブしたいとこだけど。

シモンとオリヴェルは、好感度120~130ってとこかな。

まぁまぁね)


それでは本気で攻略にとりかかろう。

好感度の高さとチョロさから、まずはセスランルートか。

セスランルートは、試練の儀の後半の実践課題で好感度がマックスになったはず。

たしか南の大陸ゲルラに降りて、そこを視察する課題があるはず。

同行者はセスラン、シモン、それにパウラの3人だった。

途中、白虎の一族に襲われて、ケガをしたパウラをシモンが先に連れて帰る。

エリーヌをかばったセスランがケガをして、看病しながら一晩を過ごすイベントがくる。

このイベントに成功すると、二人抱き合う美麗スチルが見られる。

あれをリアルで体験できるのだ!

そのスチルが出た後、好感度は180を超え、セスランからの告白可能性がぐっと上がる。


(どうしても成功させなくちゃ)


万が一、失敗してもアルヴィドの好感度は、140を超えている。

こちらに切り替えれば良いだけだ。


大丈夫よ。

きっとうまくいく。

だって彼女はエルドラのヒロインだ。

それぞれのルートの選択肢は、頭に入っている。


ふ……と、微かな不安がよぎる。

ほとんどのことはシナリオどおりで、4人の聖使はエリーヌの味方で毎日のように彼女のもとへ来てくれる。

パウラには仕事の依頼以外で、話しかけたりする様子はない。

ゲームのとおり。

だけど微妙に、ほんのわずかに、ゲームのシナリオと違うことが起こる。

たとえばセスランにパウラ呼びを注意されたこと。

たとえばエリーヌにだけ、補講が課されたこと。

小さなことで、ゲームの進捗にさほどの影響はないが、シナリオ外のできごとには違いない。



(まぁ良いわ。

セスランルートでエンディングになるんだから)


もうじきあの大甘、あまあまでろでろの、セスランが見られるはず。

エリーヌに夢中になって、昼夜問わず、彼女の部屋へおしかけて愛を囁くセスランを、もうじき。

にへらっと、唇が緩む。

明日の課題の予習などすっかり忘れて、選択肢の確認にエリーヌは励む。

攻略法をまとめたマル秘ノートは、既に何度も読み込んだせいでボロボロになっているが、これを見ている時が一番楽しい。


万が一にも負けたくない。

何もかも全て持っていて、当然のようにエリーヌを見下してくるパウラには。

最後には笑いながら言ってやる。


「聖女オーディアナには、パウラの方がずっと相応しいんですもの」


きっと胸がすく。





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