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Prolog

プロローグなので短めです。

これは夜が更けるのが早くなってきた秋頃の話。

俺は友人と遊んだ後、冷たい夜風に吹かれて誰でも分かるほどの上機嫌オーラを醸し出しながらで帰宅をしていた。

町外れの静かな道を歩いているとホテルがぽつんと立っていた。

ホテルの前には女子高生ほどの年齢の女性とスーツを着た男が立っている。ホテルに入るつもりなのだろう。

足を進めホテルの前を通り過ぎようとした時女性の顔が見えた。

するとそこに居たのは俺が推している人気アイドル及川凛であった。

色々な感情が身体中を駆け巡る。

「え…」


俺は思わず声が漏れてしまった、声に反応して凛は振り向きこちらを見て口を開きやってしまったという表情を隠せていない。

しばらくお互い固まっていたが凛は人差し指を唇に当てた。誰にも言うなと言っているのだろう、俺は小さく頷いた。

すると凛は安心した顔を見せて振り向きホテルへと入っていった。


しばらく俺は衝撃で動けなかった。

自慢ではないが彼女が小さな箱で歌って踊っている頃から応援してきた。

LIVEには毎回行っていたし握手会も何度も言った。名前も覚えて貰っている。

彼女の隣にいたスーツの男は彼女のプロデューサーだった。

イケメンで性格も良さそうな好青年で喋ったこともあるのだが言葉の節々に知性を感じる優しい方という印象だった。

もちろん恋心を抱いている訳では無いのだがこれから彼女が男に抱かれる所を想像するとどうにかなってしまいそうである。

しかし自分は彼女に信頼されているという高揚感もあった。普通のファンとこういう状況になってしまったらシーだけではすまないだろう。

そこを俺にはそれだけで済ませてくれた。

俺は嫉妬、高揚感そしてアイドルに彼氏がいて嫉妬をするという愚かな事を自分がしてしまっているという困惑で立ち竦んでいた。


その後の事は覚えていない。

気がつくと自室のベッドの上にいた。

自室の壁には凛ちゃんのポスターが貼られており、机の上にはポストカードが写真立てに入れて飾られている。

暇つぶしをしようとスマホを手に取るが、ロック画面には凛がおり、思わず目を逸らしスマホの電源を落としてしまう。

見慣れた天井を見つめながら明日からのことを考える。

考えているつもりだが何にも考えてない無駄な時間を過ごしていると寝落ちしていた。


次の日の朝、5時に目を覚ました。

俺は親に頭痛がするから学校を休むというメールを送り再び布団に包まり寝る体制に入った。

このまま何にも考えずずっと寝続けていたい。

本当はこのまましばらく休んでしまいたいのだが、それをすると友人などから怪しまれてしまうだろう。

それは好ましくない、今日見てしまったことは自分の胸の中に締まっておかなくてはいけないのだから。

俺は現実から逃げるように再び深い眠りについた。










夢を見た、それは花が広がる幻想的な公園で少女が自分の手をひっぱりどこかへ連れて行ってくれる夢。

しばらく走っていたが少女は足を止め、こちらに振り向き

「ねえ…キミの夢ってなに?」

と手を後ろに組み身を乗り出しながら問いかけた。


「俺の夢は…***」

質問に答えようと口を開いたら、突然視点が暗転した。


















「あ、やっと起きた」

目を覚ますと目の前には大きな目をした少女が自分を見つめていた。


「近い、てかなんでいるんだよ…学校は?」

俺は目の前に鎮座している少女に問いかける。

寝てからまだそんなに経っていない筈だ、学校さぼったのか?


「え?何言ってんの?もう6時だよ」

「嘘だろ…」

まさかの返答に俺は動揺を隠せなかった。

あの後13時間も寝ていたのか。


「そんなしょうもない嘘なんてつかないよ

何?せっかく美少女幼馴染ちゃんが心配してお見舞いに来てあげたのに」

少女はベッドに腰掛けて自らの隣を手でとんとんと叩く、お前も隣に座れということだろう。


「本当に大丈夫?普段学校休んだりしないじゃん、ていうかずっと皆勤だったじゃん」

こいつの言う通り俺は中高と皆勤賞だった。雨の日も風の日も休むことなく通っていた。

「大丈夫だって、寝たらましになったよ」

「本当に?いつもより言葉数も少ないし」

「寝起きだしな」

そう言うと少女は納得したようで立ち上がり、机に移動して椅子に座りゲームを起動した。


この普通に部屋に居座っている少女の名前は島田奏。

俺の幼馴染で信じられないことにアイドルもやっている。

人気はそこそこあり、正直に言えば凛ちゃんと同じくらいである。


奏はゲームをしばらくした後満足したみたいで帰るようだ。


「それじゃあ帰るね、お大事に」

「ああ、わざわざありがとな」

「わざわざも無いじゃん家隣だし」

そうなのだ奏の家は俺の家と隣にあり、赤ちゃんの頃からの腐れ縁である。

「まあな」

やり取りを終えると奏は立ち上がりドアノブに手をかける、そのままドアを開けて出ていくかと思いきや、こちらに振り返り話を始めた。


「何か悩み事があったら相談してね?自分だけて抱え込んだらダメだよ?」

それを言われて俺はビクッとしてしまったかもしれない。

奏は昔からこういうことに敏感なのだ。

隠し事をしてもすぐ見破られる。

しかし今回は笑い事ではすまない、隠し通すしかないだろう。


「ああ、そういう事があれば相談するよ

お前も何かあれば相談してこいよな」

そういうと奏は何か言いたそうではあったが、1度俯き顔を上げると微笑んで

「わかった」

と少し不服そうな顔をして帰って行った。



ここで素直に打ち明けられていたらどんなに楽だったことか。

少し後悔しながら中野愛斗は眠りについた。





ヒロインは奏です。

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