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人には人の調成師

 今回サガミとネルハが受けた依頼は「雑草取りと庭木の剪定」となっている。 そんなのギルドに依頼することじゃ無くないか?とも思われるが、そう言った依頼をするのは金持ちか体が不自由になった人の家である。 前者の場合は大抵が大きい都市の豪邸持ちや別荘をやらされるのだが、その場合でもかなり細かく指示されるし、なにより職業柄で選んでくるので、ギルドでもあまり請け負わないのだ。


 だが後者の場合ならば研修期間中の冒険者には優しくなるので、大体は研修冒険者かDランカーに成り立ての冒険者が受注するのだが、全員が全員しっかりと受ける様子はなく、下級冒険者でも狩りに行きやすいような依頼の取り合いになることもしばしばあるとか。 身の程を弁えない冒険者にはユクシテットからお灸が据えられるが。


「でも師匠。 わざわざ自分のために同じ依頼を受けなくてもよかったんじゃ?」

「この依頼はそんなに難しくないから、終わり次第時間の許す限りネルハのスキル向上に使うんだよ。 それに僕はここの依頼主と顔見知りだし。」

「顔見知り?」


 言葉の理解が追い付かないまま依頼主の家に着いた。 サガミは手慣れた様子で玄関口をノックする。 すると数分後に扉が開けられた。


「はいはい。 あ、サルガミット君。 今回も来てくれたんだね。」


 出迎えてくれたのは金髪の若い女性だった。 しかも車椅子をしていた。


「どうもキュセラさん。 本日も参らせて頂きました。」

「毎回ご迷惑おかけしてるわね。 あら? そちらの女の子は?」

「紹介します。 彼女はネルハ・クォーター。 本日から僕と同じ調成師として冒険者になった子です。」

「ネルハ・クォーターです。 本日はご依頼を承りに来ました。」

「はじめまして。 キュセラです。 立ち話もなんですからどうぞお上がりください。」

「失礼します。」

「し、失礼します。」


 サガミとネルハは家に上がらせて貰う。 そこでネルハは疑問に思っていたことを聞く。


「師匠。 あのキュセラさんって人」

「冒険で魔物にやられてね。 まだ後遺症が残ってるんだ。 少なくとも後10年はああだってさ。 極限薬草でも後遺症までは治せなかったんだ。」

「そう、だったですか。」

「ネルハ、庭の方は任せてもいいかな? 僕は別の依頼をこなすから。」

「別の依頼? 今回の任務は庭の剪定・・・」

「あ! サガミ兄ちゃんだ!」


 ネルハの疑問を遮るように1人の男の子がサガミに飛び乗ってきた。 サガミはそれを拒否することなく受け止める。


「サガミ兄さんが来たの!?」

「今日もお庭のお掃除に来てくれたのですか?」

「そんなところ。 みんないい子にしてたかな? お母さんに迷惑かけてない?」

「うん! でもお兄ちゃんが前に「お母さんを早く連れていくんだ!」って言って、車椅子を思いっきり押した時があってね。」

「馬鹿! 兄ちゃんにバラすなよ! それに母ちゃんは怪我をしてなかっただろ!?」

「駄目だよそんなことを言ったら。 キュセラさんは自分で歩けないんだから、もしもの時の時があったら大変だよ?」

「ごめんなさい・・・」

「よーし! 今日もお母さんの代わりに遊んであげるから、邪魔にならないようにリビングの方に行こうか。」


 そうサガミぎ言うと、ドタドタと部屋の奥に子供達が走っていった。 そしてその後をサガミが追いかけるように歩いていく。


「ごめんなさいね。 あなたはこちらに来て貰えるかしら?」

「は、はい。」


 取り残されたキュセラとネルハは庭の方に向かって行った。 そして庭につくとネルハは驚きを見せていた。


「これ・・・」


 依頼内容は「雑草取りと庭木の剪定」だと言っていたが、雑草はほとんど生えておらず、木も剪定するほどでも無いくらいに整っていた。 これのどこが依頼なのかと言わんくらいに綺麗だったのだ。


「うふふ、凄いでしょ? サルガミット君が定期的に来てくれるお陰で、こうして綺麗なお庭を見れているんです。」

「そうだったのですか。 素敵です。」

「折角だからあなたの事を聞かせて貰ってもいいかしら?」


 キュセラの申し出にネルハはなにを聞かれても言いように心構えをした。


「どうぞ、なんでも聞いてください。」


 だがそんなネルハの予想を遥か斜め上の質問をキュセラはしたのだ。


「あなたは、サルガミット君の恋人?」

「ふぇ!? え!?」


 突然の質問と、これまたさも当然の様に聞いてきたキュセラに対して、作業に取りかかろうとしていたネルハは、変な声をあげながら転びそうになり、顔を赤く染めながらキュセラの方に顔を向ける。


「い、いいいいいえそんな! 私と師匠はそんな関係じゃ・・・」

「ふふっ。 ごめんなさいね。 意地悪な質問をしてしまって。 そう言った関係じゃないのは、知っているわ。」


 そんなキュセラのお茶目を他所に、ネルハは息を荒くしていた。


(師匠と自分が恋人なんて、そんな事はなりえっこない。 自分みたいな新米には興味ない筈だし。 だけど、それで本当に自分と師匠が恋人同士に・・・)


 そんな妄想じみた事を考えていると更に顔が熱くなったネルハは、気を紛らわせるために、少ない雑草を抜いていった。


「あらあら、若いわね。」


 そう笑いながらネルハを見るキュセラだった。



「すみません、終わりました。」

「ご苦労様でした。」

「・・・ところでずっと師匠の姿が見えなかったのですが・・・」


 先にやっておいてくれと言っていたにも関わらず、サガミの姿が見えないことに気が付いたネルハは、キョロキョロと家を見回していた。


「サルガミット君なら、今頃子供達と遊んでるんじゃないかしら? 彼、ここの依頼に来ると、必ず私の代わりに子供達と遊んでくれるんですよ。 「お母さんが遊んでくれないのは分かっているから、代わりに遊んであげるんです。」って。 でもそのおかげで依頼を出す時まで子供達は大人しいし、サルガミット君の言い分を守っているからか、私に迷惑かけないんです。」


 そう言いながら居間の方に向かうと、サガミが自分の「調成師」のスキルを使って、炭酸飲料を作って子供達にあげている所だった。


「あ、ネルハ。 庭掃除は終わったかい?」

「はい。 奥様も見ていましたので。」

「よし、それなら。 キュセラさん。 この辺りで広場みたいな場所ってありましたっけ?」

「ここから少し歩くと公園のような場所があるわ。」

「え? 兄ちゃん帰っちゃうの?」

「まだ帰らないけど、修行の為に出掛けてくるだけさ。」

「俺達もいきたい!」

「君達はまだ危ないからお家で待ってて。」


 サガミの言葉に子供達は「はーい」と返し、そのままサガミはネルハを連れて家を出た。


「随分と懐かれていますね。 師匠。」

「この依頼を受けてからずっと付きっきりで遊んでたらね。 さ、今度はネルハの番だから、ちゃんと出来るようにしないとね。」

「よろしくお願いいたします! 師匠!」


 そうして広い敷地に2人はポツンと立って、修行の開始をする。



「それじゃあまずはなんでも良いから作ってみようか。」

「作るって、この砂でですか?」

「正確には土の中にある粘土とかも使ってだね。 ただ生成する「だけ」だと思ったら大間違いだよ。 「調成師」はいついかなる時でも「作る」事が出来るのが一番いいんだ。 それに作るのは慣れておくと、便利な事もあるんだ。 とりあえずはやってみよう。」

「はい!」


 そうしてネルハは手を地面に置いて周りの砂を集める。 すると手の近くにどんどん吸い寄せられるように砂が集まってきて、形を生成していく。 完成したのは砂の机。 ただしかなり小さめのものだ。


「うんうん。 最初なそれでも全然問題はないよ。 後はそれをどんどん繰り返して、作れるものを大きくしていこうか。」

「師匠はどのくらい出来るんですか?」

「僕? 僕はスキルとして「超能作成」になっていて、空中で作成出来るのはもちろん、指先で簡単なものを生成出来るようになっているんだ。」


 人差し指一本で簡単にナイフが出来上がる。 砂鉄は地面にあるので、それがいかに優れたことかが伺える。


「そして僕のスキルは分子からでも作れるようになっているんだ。」


 そういって空中で水を生成した。


「す、凄い!」

「ただこれは僕の場合だから、ネルハが僕と同じスキルじゃないと思うんだ。 だからこうして修行をするんだ。 さ、どんどん作っていこうか。 普通のものが出来るようになったら、もっと細かいものを作ってみようか。」


 そうして修行を開始して数時間が経過した頃、「テロン」と音がなった。 この音はスキルの習得、もしくはスキルの熟練度の向上の音である。


「師匠。 自分にもスキルが発現したみたいです。」

「ほんと? どれどれ?」


 そう言ってネルハが発現したスキルは


『高速作成

 通常よりも作成、分解速度が速い。 手のひらで行える。』


 そう書かれていた。


「高速作成・・・師匠のとどう違うのでしょうか?」

「試しになにか一緒に作ってみようか。 土人形を作ってみよう。」


 そう言ってサガミぎ地面に手を付けるのをみて、ネルハも地面に手を付ける。 そして土人形を同時に作成する。 するとネルハの方が若干ではあったが、速く完成させることが出来た。


「師匠よりも速く出来ちゃいました。」

「へぇ、純粋に速くなるんだ。 ・・・ネルハ。 少し手のひらをこちらに向けてもらっていいかな?」

「こうですか?」


 そう構えた瞬間にサガミは自分の短剣をネルハの構えた手に向かって投げつけた。


「え!?」


 そしてネルハの手に当たる・・・かと思いきや、そのまま宙で鉄の粉になってしまった。


「ふんふん。 生成も速いけど分解も速いのか。 鉱物持ちのモンスターなら無効化が出来るかもしれないね。 とはいえとても近付かないと効果が発動しないみたいだから、その辺りが一番気を付けるところかな? でもこれなら即席ならすぐに出来るかもね。」


 そう確信するサガミであったが、ネルハは自分に向けられたナイフが分子化してしまったことに、思うところがあるらしい。


「すみません師匠。 自分のスキルを確認するために、大事なナイフをこんな風にしてしまって。」

「うん? ああ、気にしなくていいよ。 これくらいならすぐに作れるから。」


 そう言ってサガミは鉄粉に触れると、瞬く間に寸分違わない、自分のナイフを作り出した。


「さ、戻ろうか。 依頼完了の手続きをして貰わなきゃ。」

「はい!」


 そうしてサガミの後ろを歩いていくネルハだった。

今回で毎日更新の方を終了とさせていただきます。


お試しという期間もあって、あまり書けていないようにもかんじますが、ご容赦下さい。


更新は考えていますが、不定期になるので、気長に待っていただければと思います。

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