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もう一人の調成師 ネルハ

第三ヒロイン

「うーん。 今日貼られてた依頼、どれもパッとしないなぁ。」


 サガミは手に取った依頼書を見ながらそう呟いた。


 ギルドハウスに貼られる依頼は庶民から王都直々のものまで、様々なものが貼られるのだが、大抵は庶民レベルのものが多く、王都関係の依頼などは、大抵他の街のギルドハウスとの共同になる。 それだけ重要な依頼であることは確かだ。


 そして庶民用の依頼でもピンキリで依頼の報酬額が変わる。 今回の依頼内容は大体が低ランカーでもクリアできる手頃なものだった。


「やっぱりBランクへの昇格試験に挑戦しようかな? でもそれだと僕の場合()()が絶対に揃わないもんなぁ。 でも家でなにもしないって言うのも、なんだかなぁ。」


 頭を悩ますサガミ。 彼は「調成師」である事を逆手にとって、色んなものに挑戦をした。 結果、「薬師」でも合格率の低い試験に合格して特許を貰ったり、自己欲のために作ったものを機関に提案して、そのアイデア量を貰ったりと、資金面に関してはCランカーとは思えない程の収益を得ている。 換算すると、2、3ヶ月程なにもしなくても生きていけるレベルにまで達している。


「うーん。 ここはとりあえずでやっておこうかな? こういったものはCランカーだともう受注すらしない・・・」

「あの・・・」


 この後の事を独り言でぶつくさと言っていると、後ろから声をかけられる。 振り返ると白の三つ編みで、瞳の色も同じく白色。 青いシャツに黄色のサロペットを来ているが、声色的に女子だろうというのはサガミでも分かった。 そこそこ身長差があるので、サガミは下を向かざるを得ないが。


「あの・・・サルガミット・コーナンさん、ですよね?」

「うん。 そうだよ。 僕がサルガミット。 ・・・って、君、どこかで会ったことある?」


 サガミはその少女に見覚えはあったものの、どこで会ったかまでは詳しく思い出せない。 するとその少女はホッと一息ついた。


「良かった。 人違いだったらどうしようかと思っちゃった。」

「君は?」

「あ、自分はネルハ・クウォーター。 今日から冒険者になった者で、貴方と同じ調()()()です。」


 その職業を聞いて、サガミは「ハッ」と驚いた。


「もしかしてあの時公園でみんなに責められてた・・・」


 それはまだサガミも職業を受け取ってすぐの話。 この世界では15歳になった年に職業を受け取り、研修期間のような形でEランクとして依頼をこなす事がある。 本来ならその時点である程度はパーティーも組んで依頼を遂行するのだが、この頃からサガミは孤立していた。 「調成師」を選んだのが祟ったのか、パーティーに入れさせてもらえなったのだ。 しかしサガミはそんなことは気にしない性分で、むしろソロで頑張りを見せていたので、今の地位がある。


 そんな冒険者に成り立ての頃に、これまた慣れたように1人で依頼をこなしていた帰り道。 ある公園で1人の少女がみんなに囲まれてなにかを言われていた。 そしてその少女1人になった辺りで、サガミは声をかけた。 そのときの少女は涙を堪えるような顔をしていた。


「大丈夫? なにもされてない?」


 いきなり知らない人から声をかけられれば普通は警戒するものだが、その判断が鈍くなっているくらいに、少女は弱々しくなっていたのを、サガミは思い出す。


「今日、職業適性の確認を、したの。 そしたら、「調成師」だった。 だから「お前は使えない奴だ」って、言われて・・・」


 その辺りで少女は泣いてしまった。 その職業が適性だと言われても、その職業が使えない職業だと言われてしまえば、みんなの目の色が変わってしまう。 この世の中はそんな残酷な世界である。


 しかしサガミは違った。 何故なら彼もまた「調成師」に()()選んだ人間である。 故に痛みはよく分かっているのだ。


「僕も職業が調成師なんだ。 でも僕は気にしていないし、自分で選んだ職業だから、その職業で頑張ろうと思ってるんだ。」

「自分で、選んだ、んですか?」

「そうだよ。 ・・・ねぇ。 もしも調成師が認められるような世界になったら、みんなを見返せると思うんだ。」

「そんなこと、出来ませんよ・・・」

「だから君の代わりに僕がやってあげる。 少しでも認めて貰えるように頑張るよ。 君も「調成師」になったからって、簡単には絶望しないで。 誇りを持って、とまではいかないけど、れっきとした職業なんだってちゃんと向き合ってね。 それじゃあ僕は行くよ。 またどこかで会えたら。」


 そう言ってサガミはその時去ってしまったので名前などを聞いていなかった。 だからこそ、最初にネルハが来た時に思い出せなかったのだ。


「自分は貴方のお陰で、こうして「調成師」としてやっていこうという自信がついたのです。 みんなには当然散々なことを言われたこともありましたが、あの時の貴方の言葉を忘れなかったからこそ、自分を見失わずにすみました。」

「そっか。 辛い想いを乗り越えられたのなら、君は十分に立派だよ。」

「それでなのですが、自分の生き方を教えてくれた貴方を、「調成師」の師匠として、付いていきたいと思っているんです。」

「え?」


 そこでサガミは困惑した。 というのもこの世界で研修期間中に先輩冒険者に助言や戦い方、ネルハのように自分の職業のスキルの取得方法などを学ぶのは珍しくはない。 しかしサガミは元々ソロでここまで登り詰めてきた実力者であり、かつ団体行動をほとんど好まないので、慕ってくれる人間が来るとは思ってもみなかったのだ。 なので唐突なお願いに反応出来なかったのだ。


「駄目・・・ですか?」


 ネルハは涙腺を溜めながら、サガミを見上げる。 そんな中でサガミは考える。 ソロで依頼をこなしていくのも、なにかと限界があるのかも知れないと。 ならば少しでもパーティーとして依頼をこなすということにも慣れていないといけないだろう。 それに調成師として1人でやっていくのは自分1人で十分だとサガミは思った。


「分かった。 だけど君と僕だとランクに差があるから依頼を受けるのは君の受注でお願い出来るかな?」

「! はい!」


 そう元気よく返事をしたネルハはサガミの持っていた依頼書を持っていった。 そして数分後、ネルハがユクシテットを連れてサガミの元にやってきた。


「おいおい、どこに行く・・・おう、サガミ。」

「どうもユクシテットさん。 もしかしなくてもネルハに呼ばれたんですね。」

「ああ、そうなんだが・・・なんとなく納得がいったぞ。 確かに師弟としては一番分かりやすい。」


 ユクシテットが納得するのも無理はない。 今この街で「調成師」を名乗っているのは彼ら以外にいないのだ。 ならば勝手の分かっているサガミの元にネルハが行くのは必然だと感じたのだ。


「ま、依頼自体も大したものじゃないし、何個か成功すればランクはすぐにDになるだろう。 ネルハは他のパーティーに行くかもしれんが、それまではしっかり見てやれよ、先輩。」

「分かってますよユクシテットさん。 僕だって同業者をそのままにしておく程心は捨ててません。」

「はっはっはっ。 同業者なんて堅苦しく言ってやるな。 お前の初めてのパートナーになるかも知れない相手をよ。」


 パートナーという言葉にサガミは改めて考える。 サガミには友人と呼べる者はいない。 いや、正確には数名いるのだが、一緒にパーティーを組む程の仲にまではならなかった。 なれなかったのだ。 それはサガミ自身が避けたことの1つで、自分と一緒にいる友人まで迷惑をかけたくなかったのだ。

 だからこそ彼女もおそらくここで別れてしまえば、同じ目にあってしまうことだろう。 ならば目の届く所に置いておくのも、先人の役目だろう。


「まあ、師弟って言う関係は、悪くないかも知れないです。」

「ほほぅ? お前も誰かに教えを伝える時が来たか?」

「とはいえ自己流やネルハにしか出来ないこともあります。 教えるには限度がありますよ。」

「その辺りはお前の匙加減に任せるさ。 さ、初めての依頼を、人生の先輩と行ってきな。」


 どういう感性なんだろと思いつつもサガミとネルハはギルドハウスを出たのだった。


「さてと、なら今回は依頼を進めながらネルハのスキル上げでも・・・ネルハ?」


 サガミが喋っているが、ネルハの方から声がかからないので、どうしたのかと振り返ると、そこには俯いたネルハがいた。


「どうしたのネルハ? 具合でも悪くなった?」

「師匠の・・・初めての・・・パートナー・・・」

「ネルハ?」

「師匠! 自分、もっと師匠の色んな初めてになれるように頑張ります!」


 その言葉はネルハは純粋に言ったのだろうが、サガミにとっては視線を浴びるような気配に誘われ、逃げるように歩き始めた。


(やっぱり弟子なんて取らなくても良かったかも・・・)


 居たたまれない気持ちと共にサガミは街の出入り口まで歩くのだった。

とりあえずヒロインは3人いるのは不思議じゃ無くなってきてますね。 感覚麻痺かな?

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