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知ってる土地? 知らない土地?

「さてと、休憩も終わったことだし、そろそろ先を行こうか。」

「そうですね。」

「・・・あ、食器とかは下さい。」


 そう言ってハヤカに食器を渡すと、その食器を手にとって握り潰すと、その握った手からなにかが入っていくのを感じた。


「ん。 魔力の流れ。」

「描いた後の物質を触って気が付いたんです。 そのままにしておくと魔力は切れるまで残りますが、元が紙だったので、こうして崩して私の体の一部に触れれば、魔力が戻ってくるんです。 これなら使い終わった後もこうして有効活用出来るということです。」


 そう自慢気に話すハヤカ。 サガミにとってはかなりありがたいことのようで、アイテム消費が抑えられるのは中々の恩恵であった。


 休憩してから歩くこと30分程。 歩いているうちに道から草が無くなっていくのは感じていた。 しかしその環境変化が完全に起きたのが今の状況である。 草木の枯れた完全な乾燥地帯だった。


「これは・・・太陽のせいじゃない乾燥だね。 どちらかと言えばこの吹いている風の方に問題がありそうだ。」

「雨が降らないのも、風が強すぎるせいで、雲が留まっていないから、なんですね。」

「乾燥地帯なだけあって、さすがに原住民もいない感じですかね?」

「一番の天敵、水分蒸発による乾燥。」


 みなが思うままに乾燥を述べつつも、進まなければ始まらないのでまだ歩いてみる事にした。


「うっ・・・さすがにここまで・・・何もないと・・・なにも作れやしない・・・」


 サガミは言葉を振り絞るように喋っているが、ここまで来ると喋る方が水分を奪われてしまって、逆に危険な状態に陥る。 しかしこの乾燥に加えて、太陽の熱による暑さまで来ている。 ほかのみんなも虚ろな目になり始めている。 竜人族のシルクでさえも、だ。 砂漠とも違う環境に、身体がまだ追い付いていないのだ。


 周りを見渡しても、木や草は枯れており、歩いている土も日焼けした肌が剥がれるような表層をしており、あまりにも水分が足りないのが目に見える。

 そんなサガミの視界に、岩影が見える。 そこには黒い部分があった。 距離はそこまで遠くはなかったが、サガミも環境による乾燥と歩いてばかりいた疲労で思考回路が鈍くなっており、普段なら双眼鏡を用意するのだが、今回は適度な距離を保ちつつ近付くこととなった。


 そしてその岩影に近付いて、その後ろをカルガモの子供のようについてきていた女子達に、こう告げた。


「みんな、洞穴だ。 ここで一回状況を整理しよう。」


 サガミ達は太陽の当たらない場所と言うことで、すぐに入ることにした。 ここなら出してもいいだろうと、水筒を出して、皆の喉の乾きを潤わせる。


「ありがとうございます、師匠。 それにしても本当に何もないところですね。 砂漠とも違う不思議な感覚です。」

「新境地ってこんなにも凄まじい場所だったのね。」

「いや、詳しいことがわからないだけで、地図には載ってるよ。」


 ハヤカの感心する答えにサガミが答える。


「え? でも未開拓の地なんでしょ? なんで地図に載ってるのよ?」

「多分空からでも見たんじゃない?経緯は分からないけど。」


 少しでも気を紛らわそうと会話を続ける。 この時サガミが考えていたのは、日が高いから辛くなると言うのならば、もう少し日が沈んでから行動しようという案だ。 これは新境地で不馴れな環境に身体が対応しきれていないということと、夜の周辺を確認しておきたかったからである。 そして魔物ももしかしたら夜に出るかもしれないという見解も兼ねている。


「ここの地帯だと水も貴重だね。 そもそも前の草原の事もあるから、歩いてはさすがに来れないかな。」

「どうしますか? 環境の説明だけでも情報として持ち帰るには十分かと思いますが。」

「うーん。」


 サガミは悩んでいる。 というのも確かにどういった環境なのかを伝えることも大切なことである。 それによって今後の対処もしやすくなるからである。 しかしただそれだけのために戻るのも、サガミにとっては気が引けていた。 もう少し情報が欲しいと考えているからだ。


「それなら夕方くらいまで待機して、また調べればいいんじゃない? 昼と夜とで環境も変わるだろうし。」

「・・・そうだね。 それならここを仮拠点にしようか。 なにか目印になるようなものは無いかな?」


 サガミはハヤカの意見を汲み取って、そのままなにか無いかと探し始めた。

 日が沈み始め、予定よりはかなり遅くなったが、サガミ達は調査を再開させる。 この洞穴は次の人も利用できやすいようにした。


「うう、なんか急に肌寒くなってきましたね。」

「日だけが、無くなった、という具合、でしょうか? 風の強さは、変わっていませんので。」

「乾燥させようとする環境なのは変わらないって事か。」


 新たな情報が手に入ったと共に、辺りをもう一度見渡してみる。 しかし街頭はおろか、日が沈んでしまえば月明かりも心許ない状態になってしまう現状に、困惑をしていた。


「こう見えづらいと敵もいるのか分からないや。 明かりも大事そうだね。」


 そう言ってサガミはバックパックの中からゴーグルを取り出す。


「それって暗視ゴーグル?」

「うん。 暗闇でも見えるようにね。 でもこれは僕専用だから他の人はちょっと扱いづらいよ。 こんなことなら簡易版でも買ってくればよかったなぁ。」

「専用・・・って」

「僕が造ったんだ。」


 ハヤカは言葉に出来なかった。 それもそのはず、元の世界でもお目にかかれなかった暗視ゴーグルを目の当たりにして、さらにそれを造ったという人物が目の前にいるのだから、驚かない方が不思議である。


「敵の影も動く姿も無し。 これなら歩けるけど、僕だけがこの形だとなぁ・・・」

「光を出す子でも呼びますか?」

「いや、それも敵の目印になっちゃうかもしれない。 お勧めはしたくないけど、致し方ない・・・」

「それなら私がやってみる!」


 みんながハヤカを見ると同時にハヤカは既に描いていた。 そして出来上がったものを浮かび上がらせて、「カチ」という音と共に遠方の地面が見えるようになった。


「よし! 成功ね!」

「凄い!「ライト」がこんなに遠くまで!」


 この世界にも魔法はあるので、属性魔法も当然存在する。 光属性魔法「ライト」もその一つではあるが、それは攻撃魔法であり、明るく照らすものの基本的には一瞬の出来事。 こうして留めておく事が出来ること自体が凄いことなのだ。


 そんな感動も束の間。 シルクがなにかを感じた取ったようで、前方を見る。


「父さん。 なにか来る。」

「どっちからだい?」

「こっちに正面、地面から。」


 そしてどんどんと地鳴りのように近付いてくるのが確認できて、そしてその影は宙に飛び上がる。 それはまるで牛のような姿をしていて、その頭には2本の立派な雄の角が存在していた。 飛び上がったその牛はそのままサガミ達めがけて落ちてくる。 サガミ達は3方向にそれぞれ回避行動を取った。 その牛が潜った後の砂埃をもろに浴びるが、全員無事だ。


「げほっ! みんな! いる!?」

「心配いりません! マニュー先輩といます!」

「ネルハが一緒。 怪我もしてない。」


 その事を確認した上でサガミは隣のハヤカに目を向ける。とりあえずは動けるようなので安心した。


「光を見たら急に来た? じゃあこれ消さないと。」


 そう言ってライトを消そうとするハヤカの手をサガミは止める。


「ちょっと待って。 それは使えるかもしれない。」

「使えるって、どうやって?」


 そう言っていると、再度地鳴りがする。 今度は確実にサガミとハヤカの所に向かってきている音だ。 他の四人は距離があるせいでまともに援護も出来ない。


「飛び上がるタイミングは掴んだ。 だから力を貸してくれる?」

「・・・うん。 サガミさんに託すわ。」


 そう言って地鳴りが止んだ瞬間にハヤカはライトを消した。 そしてそのライトを上に向けて構えて


「・・・今だ! 点けて!」


 パッと空を明るくする。 すると先程の牛が飛んできていたのだが、ライトの光をもろに目に浴びたので、急な閃光で目を痛めたようで、地面に潜ることを忘れて、転げ回っている。


「よし! この暗闇の中でライトの光だけに集中してたから、逆に目がいい方だとは思ってたんだ。」


 そしてサガミは間髪入れずに自分の業物を取り出して、牛に追撃を行おうとする。


「これでお前を倒せるとは思っていないけど、戦利品として鱗や血だけでも持って帰る!」


 そういいながら飛び上がり、剣を振り下ろそうとした瞬間に、牛は頭をおもいっきりぶんまわした。 そのせいで空中のサガミはこれ以上の行動が出来なくなっていた。


「サガミさん!」


 ハヤカの悲痛な声を聞いてサガミはすぐさま自分の手の業物を槌へと変貌させて、今度こそ振り下ろす。 「ガチン」という音と火花も共に、サガミは地面について、牛は地面に潜り、そのまま逃げるように立ち去った。


「危機は脱したみたいですね。 先輩。」

「危なかった・・・ハヤカが声をかけなければ、今頃つばぜり合いをして負けていたよ。」


 そう言ってハヤカが照らすライトのもとに光るものが見える。 サガミがそれを拾うと、なにかがかけているような石のようなものだっだ。 サガミには分かった。 これは先程の牛の角の先端部分を折ったのだと。


「これは戦利品として貰っておく。 今度会うときは互いに正々堂々闘おう。」


 サガミは聞こえていないであろう相手にそう告げて、呼吸を整えるのだった。


 その後は一刻も早く戻るため、ハヤカのライトの先導のもと、元来た道を戻るのだった。

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