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もて余す屋敷の生活

「それじゃあ僕は料理を作るから、その間にみんなは休んでてよ。」

「そう言うわけにはいきません。 お婆さんを含めてここには6人しかいませんが、料理を1人に任せるわけのも、申し訳無いです。」

「そうですよ。 それに魔物達もいますので、その分の料理も拵えないと。」

「ここで師匠だけにやらせてしまっては、弟子の名が廃ります。」

「父さんの手伝い、ボクもやる。」


 サガミが積極的にやろうとした作業はみんなの言葉で完全に分担されてしまった。 別にそこまでして貰わなくてもいいのになとサガミは思ったが、あまり抱え込むのも良くないと判断して、マニューにはお婆さん用の食事(事前に聞いていた)を用意して貰い、シンファは魔物達用に。 ネルハとシルクには料理のサポートをして貰うことにした。


「本当は食べるのに苦労しない食事が良いらしいですが、それでは栄養価ぎ偏ってしまいます。 お米は食感が残るくらいまで煮込んで、お肉は良く火を通して、お野菜は食べやすいように細かく切って・・・」

「魔物達は味付けが濃い食事をさせるのが定石だけど、ここの魔物達は多分舌は肥えてるはずだから、下手な味付けよりもしっかりした味付けにしないと。 ええっとこれとこれは食べさせられないし・・・」


 マニューとシンファはそれぞれ教えて貰ったように料理を開始する。 残った3人も冷蔵庫の中身を確認しながら、本日の食事と買い足さなければならないものを確認していた。


「調味料関係はほとんどあるから大丈夫みたいだね。 ふんふん。 至って普通の店にある食材ばかりだ。」

「庶民の心を忘れない領主って事ですね。」

「喋り方おおらか。 態度デカすぎない。 いいお偉いさん。」


 シルクの言葉に、どう反応すればいいか困っているサガミではあったものの、食事の準備に取りかかるのだった。



「そういえば先輩はどうやって料理の事を学んだんです?」


 魔物達に食事を出し終えたシンファとこの家に住む老婆への食事を終えたマニューを加えて5人で大きすぎるくらいの円卓テーブルを囲みながら食事をしている時に、シンファがそんな事をサガミに尋ねた。


「学んだもなにも、独学だよ。 そもそも僕はあんまり食に興味は無かったんだけどね。」

「では何故料理を学ぼうと?」

「そうだねぇ。 僕が1つのパーティーに入った時に、振る舞われた料理で体調が優れなくなってからかなぁ? その時は僕も欲しい素材があったし、相手も即席でも1人欲しかったみたいだから、利害の一致って形で組ませて貰ってたんだけど、振る舞われた料理に対して文句は言いたくないんだけど、なんと言うか味が滅茶苦茶だったんだよね。」


 その台詞の後にサガミは遠い目をした。 あのときの事を思い出しているのだろう。


「訳が分からない味のせいで身体がおかしくなっちゃってさ。 それで依頼を完了して、同じ料理を家に帰ってから自分なりに作ってみたら、そっちの方が断然美味しかったんだ。 だから簡単なものでも作れればって思って頑張ったって訳。 ちゃんと料理本も家にあるしね。」

「なんと言うか、師匠の勤勉さの理由が分かった気がします。」

「でもそれもサルガミット君だと思います。」


 そんな雰囲気で響き渡る屋敷の中で食事をするのだった。


 その後は各々一度好きな場所へと向かった。 シンファは魔物達と戯れる為に庭に。 マニューは話し相手として老婆の元に。 シルクは警戒も予て屋根上に。 ネルハは絵画の飾られている部屋に。 そしてサガミは書庫に向かった。


「これだけ広いのと書籍の数ならなにか見つかるかもしれない」

 とはサガミが言ったことである。 それでもサガミは自分の気になった本を数冊取って、それをまずは一冊読み始めた。


 そして一冊を読み終えた(総ページ数150ページの簡素な参考本)サガミは時計を見ると、夜の7時半を差していた。


「そろそろお風呂入ろうかな。」


 そうポツリと呟いたサガミは書庫を出るのだった。


「あぁ~。 いいお湯~。」


 昨日も入った風呂にサガミは入る。 このお湯はお昼の時点である程度お湯張りをしておいて、炎を出すのが得意な(というよりも炎そのもの)魔物に頼んで作ったお風呂である。 その魔物達も自分達の役割だと分かっているかのように、普通に仕事をしに行ったので慣れているんだろうなとサガミは勝手に解釈した。


「流石に大きいかな? でも使用人さん達の事を考えると一気に入れた方が楽ではあるよね。」


 そんなことを染々と感じているサガミではあるものの、大きなお風呂というものはなんといってもその解放感にあるとも思っていた。


「僕1人だからこの解放感だけど、やっぱり他の皆は一緒に入るのか」


「父さん。 お風呂入りにきた。」


 な。と言おうとした瞬間にシルクがタオルも着けずに入ってくる。


 シルクはフレムドラコの竜人族と言うことなのだろうか、その肌は少し褐色がかっている。 つまり湯気で隠れるところが隠しきれていない状態なのだ。 微妙にシルクの四肢がシルエットのように見えている。


「こ、こらシルク! いくら僕が使役してるからって無防備に入ってきてはいけません!」

「でもほんの3ヶ月前までは一緒に入ってた。」

「それはシルクがまだそれなりに小さかったから! 今の君は成長してるんだから!」


 そう、シルクはサガミが拾ってきた時はまだ3歳程度の身体だったが、今では背こそ高くないものの中学生位の身体になっているのだ。 胸部も小さいながらも女性特有の膨らみを持っている。 補足として言えば、それに比例して角、羽、尻尾も大きくなっているのだ。 当然成体に比べればまだまだ未熟ではあるが。


「はぁ・・・もう入ってきちゃったからこれ以上はなにも言わないけど、明日からは分かれて入ろうね?」

「気にしすぎな気がする。」

「ちゃんと倫理は守りたいし、男女の分別はつけようね。 竜がどこまで許容するかは知らないけれど。」


 人間レベルで3ヶ月、成長具合で言うなら小学校低学年位ならまだ許されるが、流石に中学生位ともなると色々と面倒な部分が出てくるのだ。 シルクは育ちがいいため、特に学校に通わせるつもりはないサガミ。 なにかあった時真っ先に竜人族と言うことで疑われるからだ。 それだけはサガミ自身も避けたかった。


『や、やっぱり駄目ですよ・・・ いくら時間が勿体無いからって。』

『シルクちゃんがお風呂場の方に行ったのまでは良かったんです。 一緒に入ろうかと思ったら先輩も入っていたのは私も想定外だったんですよ。』

『お二人がそう言うことなら自分は行かせてもらいます。』


 そんなくぐもった声が聞こえてきたと思ったら、浴室と脱衣所を仕切るドアが開かれた。


「師匠! お背中流しに来ました!」


 そう言ったネルハはシルクと違ってタオルは巻いていた。 ただし腰だけ。 つまり上半身はなにもつけていない。 だがシルク同様に女性特有の膨らみはあった。 ネルハ自身も顔が赤い。


「ネ、ネルハ!? き、君までなにをやって・・・って言うかさっきの会話からしてもしかしなくても・・・」

「私もマニュー先輩もいますよ。」


 そう言って入ってくるシンファはタオルを前に持っていた。 しかしタオルがそこそこ小さいため四肢が隠しきれていない。 胸の膨らみも前の2人よりも大きいので、前だけ隠しても横側が見えてしまっているので、サガミの鼓動を速めるには十分な威力だった。


「シ、シンファまで・・・! ・・・ぼ、僕はもう出るよ! みんなでゆっくり入ってて!」


 そう逃れるようにサガミは湯船から立ち上がり(ちゃんとタオルで前は隠した)脱衣所のドアを開けると


「・・・ぁ。」


 そこにバスタオルで完全にガードしたマニューとバッタリあった。 完全に覆っているはすなのだが、マニューの体勢が前のめりなせいか、タオルで覆い隠せていない胸の谷間がサガミの目に入り、サガミはその場で膝から崩れ落ちた。 鼻血を流すと言うオマケ付きで。


「・・・絶対寿命が縮まった・・・」


 風呂から上がってからもう一度書庫で本を読もうとしたのだがまともに内容が頭に入ってこなかったので、借りてもいいと言われたベッドで横になって、眠くなるまで時間に任せることにした。


「うぅ~・・・みんなどうしてあんな行動をしたんだろう・・・? シルクはともかく他の3人は流石に・・・」


 そう言ったところでサガミは先程の光景を思い出してしまいそうになり、それを取っ払うために空を仰ぎ、別の事を考える。


「明日は明日で色々と買い足さないとなぁ。 あとはこの屋敷の問題も解決して・・・ うーん、ベッドが大きいから落ち着かない・・・ 僕、屋敷生活は向いてないかもなぁ・・・」


 そう言いながらサガミは疲れがあったのか、夢の中へと入ったのだった。

お風呂ハーレムと血上り鼻血って、本当に2次元的世界でしか起きないのではないでしょうか?

興奮して鼻血が出るのは特にそう感じます。

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