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お偉いさん

「先輩! そちらに行きました!」

「了解! ネルハ、砂利を固めて壁を作るんだ!」

「分かりました!」


 ネルハは地面に手を置いて突っ込んでくるウモダックの前に砂と石で生成した小型の壁を作る。 ウモダックは一心不乱に突っ込んでくるので前を見ていない。 なのでそのまま容赦なく頭から突っ込んでいった。 おもいっきり行ったのでウモダックは脳震盪状態で気絶してしまっている。


「このまま止めを刺す!」

「任せて。」


 サガミが突っ込もうとするよりも先にシルクが飛び出す。 そして爪を一点に集めて、素材採取で一番邪魔にならない頭部へと突き刺す。 5秒突き刺した後に引っこ抜き、息の根が止まったのを確認した。


「よし、剥ぎ取りはこっちが引き受けるよ。 他の皆は周りの警戒を。 マニュー、剥ぎ取りを手伝ってくれるかな?」

「分かりました。」


 そうして2人で剥ぎ取りを行っている間に、他の3人は辺りを警戒する。 ウモダックは群れを作らないが、このウモダックを狙ってやってくる魔物がいないか確認しているのだ。


「西方面、異常無いです。」

「南方面も大丈夫です。」

「お日様の昇る方、敵いない。」


 ネルハ、シンファ、シルクの順番に報告をしていく。 そう言っている間にサガミとマニューは剥ぎ取りを終了していた。 残っているのは毛の取れたウモダックだけであった。


「・・・ふう。 これだけあれば十分かな。 後はこれを持ち帰って、確認と精算をして貰うだけだね。」

「ただ、これだけの多くのウモダックは、簡単には持ち運び出来ないですね。」

「あ、それなら任せてください! こういう時は・・・」


 サガミ達が持ち運びに悩んでいると、シンファが魔物達の領域のゲートを開いて、顔だけ中にいれる。 そして数体の魔物を出してきた。


「この子達は「バンデットウォーカー」という魔物で、この子達が持ってるこの袋の中に入れて運んでいきましょう。」

「バンデット、盗むって意味。 預けたら心配。」

「そこは心配ご無用ですよシルクちゃん。 この子達はちゃんと私が教育しています。 なので盗むようなことはしないように言ってあります。」

「それは魔物としてはどうなんだろ?」


 サガミも疑問には思ったが持ち運びしてくれるのならば細かいことは気にしないことにした。


 なかなか羽毛が採れなかったのでそこそこのウモダックを狩ったのだがバンデットウォーカー達が一人2体袋の中に入れるので、特に問題にはならなかった。


「では行きましょう、先輩。」

「そうだね。 あんまり長居してもしょうがないし、肉質が落ちちゃうかもだからすぐに戻ろうか。」


 そうして5人(+バンデットウォーカー数体)はギルドハウスへと歩いていった。 さすがに魔物使いのシンファがいるとは言えバンデットウォーカーを連れながら馬車を利用するのは憚れたからだ。


 そんなわけでサガミ達の出発拠点である街、オーミュの入り口についた。 そしてサガミは門番の人にユクシテットを呼んで欲しいと伝達をする。 基本的に魔物を入れないための門番であるため、例え魔物使いが従えている魔物でも、街の中には簡単には入れられない。


 もちろん登録を行ったり害がないと判断されれば街の中で出すことは出来る。 子竜だった時のシルクが街の中に入れた理由がそれに当たる。 だがシンファの場合は登録をしていない魔物が多い。 これはシンファが登録を怠っているのではなく、常に出している事もないというシンファなりの判断であった。 なのでこうして門番に説明をしなければならないのだが、門番も交渉相手がシンファだと知っているので、大体の事情は知っていたりもするが、規則は規則なので仕方なく受けているのだ。


 そして数分もしないうちにユクシテットと数名の「鑑定士」の人達がやってくる。


「やぁすまんな。 ちょっとお客の相手をしていてな。 それにしてもシンファの魔物なんだから別にこんな伝達をしなくてももういいと思うんだけどなぁ。」

「仕方無いですよ、規則は規則ですから。 でもユクシテットさんが相手をしなくても、ギルドハウスには受付の人は何人かいますよね?」

「俺が相手をしなきゃならん特別な相手だったんだよ。 というか、少なからずお前にも関係している人物だ。 帰ってきたのなら丁度いい。」


 ユクシテットの言葉に疑問を抱いたサガミだったが、とりあえずギルドハウスに戻ろうと思ったので、そのまま街に入った。 ちなみにバンデットウォーカー達は既に帰還している。


 ギルドハウスに着いて、ゾロゾロとギルドハウスの受付の奥に入っていく鑑定士の人達を見送った後に


「それじゃ、ちょいと鑑定してくるから、少し待ってろ。 ま、今回はほぼ人海戦術だがな。」


 そう言ってユクシテットはギルドハウスの奥に消えていった。


「じゃ、せっかくだし待たせて貰おうか。」

「そうですね。 飲み物を用意しますか?」

「それよりもお腹が空きました。 私何か食べ物を注文してもいいですか?」

「魔物使いって召喚する時にエネルギーを消費するって話は聞いたことありますが、あれだけの数の魔物を従えるのには相当な労力がいりますよね?」

「ボクもなにか食べる。 おすすめはなに?」


 5人はいつもの席に座り、思い思いに言葉を並べた。 そんなやり取りを繰り返しているうちに、テーブルの上にはそれぞれの料理が並んでいる。 そんな中で1人のドレッドヘアーの男が近寄ってくる。


「ようよう。 なんだよ若い女の子がテーブル囲ってパーティーかい? オイラも混ぜてよう!」


 レゲエかじりのような喋りをしてくる男に全員が「またか」というような表情を作り出す。


「なんだよぅ、そんなに嫌な顔しなくてもいいじゃないかよぅ。 もっとチャラけて行こうぜ!」

「あいにく僕たちそう言ったノリにはついていけないんだ。」

「おろ? おーう、サガミ君じゃないかい。 ってことは君のクランだったかい? それはごめんよぅ。 邪魔して悪かったね。 チャオ。」


 そう言ってドレッドヘアーは去っていった。


「知り合いだったのですか? 師匠。」

「ううん。 たまたま一緒に組んだパーティーのメンバーだったんだけど、見た目とやってることに反して悪い人じゃないんだ。 あれくらいなら許してあげて。 ま、もう一回くらい来そうだけど。」

「そう言うことなら別に構いませんよ。 いつもの感じの方達で無いのなら。」

「それって誰の事を言ってるんだい?」


 ドレッドヘアーと入れ替わりで今度はゴロツキがやって来た。


「おうおう、揃いも揃ってお喋りか? Bランク様は余裕があっていいねぇ。」

「依頼が終わったから、その達成祝いでやってるんだけど?」

「けっ、サガミ。 たまたまBランクに受かったような奴が威張ってんじゃねぇよ。 言っとくけどなぁ、ここにいる奴らにはな、お前のことなんか認めてねぇ奴だっているんだよ。 調成師がBランクなんて聞いたこともねぇ。 どうせその女共の力を借りなきゃなにも出来なかったんだろ? お前は成り上がりどころか女の腰巾着だろうが。 ハッキリ言ってやる。 俺はお前が気に入らねぇ!」

「君が気に入らなくても、評価を下すのは君じゃない。 そして正当に評価をしてくれる人間がいるからこそ、君達の価値も見出だせる。 この世界はそう言う理があるのです。」


 そんな風に割って入ってきたのは1人の女性、茶髪でポニーテール、眼鏡の先にはキリッとした目をしている。 フォーマルスーツを見に纏ったその四肢は、スラリとしていてかなり魅力的にも感じた。


「あ? なんだぁ? あんたは? ・・・おう、よく見りゃいい女じゃないか。 どうだい? 俺と一緒に・・・」

「あなたに用は御座いません。 私はこちらの方とお話をしに来たのです。」

「僕?」


 口説き始めた男をスルーしてサガミに声をかける女性。 そしてスルーされた男はというと


「俺よりもサガミの方がいいだと・・・? あんた見る目がないんじゃないか? そいつなんかよりも俺の方が・・・」

「自分の実力をお分かりでないあなたに話しかける理由などありませんので、どうかお引き取り願います。」

「てめぇ! 下手に出りゃ付け上がりやがって!」


 そう言いながら拳を振る男に


「ここでの暴力行為は禁止されています。 そしてあなたは()()()()()手を出しているのか分かっていないようですね。」


 そう言って女性は後ろにいる男の拳を背を向けながら止めた。


「なっ・・・この(アマ)・・・!」

「おーい、確認と精算終わったぞ・・・って、なにやってるんですか、貴女は。」


 仕事を終えてサガミ達に報告をしに来たユクシテットが状況をみて呆れていた。


「ユクシテットさん、知り合いですか?」

「知り合いもなにも、その人は俺の()()()()()()()だよ。 直接ではないがな。」

「ユクシ。 それでは説明になりませんよ。」


 そう言って男の手を弾くと、ギルドハウスにいる人達に向かって、自分の事を名乗り出した。


「直接的に顔を出すのは初めてですね。 私はギルド管理協定会副会長秘書の「ノーノ・メタリカ」と言います。 皆様どうぞよろしくお願い致します。」


 そう言って丁寧に頭を下げる。 そして周りがざわつく中、ノーノは先程殴りかかろうとした男に声をかける。


「さて、あなたは管理協定の人間に対して暴力を振るった、ということになるわけですが・・・」

「ま、待ってくれ! あんたがそんな方だとは知らなかったんだ! だから・・・」

「ええ、知らなかった。 だからこの件については今回だけは不問とします、ですが・・・」


 そう言ってノーノは男の前に顔を近付ける。


「人の事を簡単に見下す人間に、次に同じ様な場面があった場合は有無を言わさず冒険者登録を剥奪する事もありますのでご注意下さいね?」


 その最後の笑顔に男は青ざめながら後退りするしかなかった。


「ったく、そんなふらふらと歩き回るから、威厳が見られないんですよ。 貴女ももう少し自覚を持って行動をしてください。」

「このようなスタイルの方が冒険者の真意に近付くには早いのよ。」


 そのユクシテットとノーノのやり取りをただただ唖然としながら見るしかなかったサガミを含めた5人だった

本当はレゲエ冒険者で絡ませようとおもったのですが、自分の勝手なイメージに合わなかったので止めました。

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