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竜人族は成長が早い

 そんな感じの生活を繰り返すこと1週間程。


 シルクは読み書きや最低限の計算はなにも言わなくても暗算が出来るようになっていたし、サガミがシルクを近付かせない場所に行かせないようにする前にある程度距離を離していた。


 それにシルクは料理に関しては好き嫌いが無い。 無いと言うよりはサガミが作る料理に対して文句を言わないのだ。 それだけサガミの料理が気に入ったのか、それとも味付けが気に入ったのかはまだサガミには分からない。

 そんな中サガミは外に出ることを今は極力避けている。 まだシルクを白昼の元に晒すのは危険だとも思っているし、シルクをもう少し教育してからでもいいと考えているからだ。 もっともその考えも後2、3日くらいになるだろうが。


 そんなわけでサガミは外に出られないながらもサガミなりにやっていることをしている。 ちょっと前までは目を離すことが出来なかったが、それが杞憂だということに気が付くとサガミは、1~2時間ほど、自室に籠って、研究を進めていたりする。 今回はBランクの植物を採取したので効果を調べることにした。


 まずはなにが成分として入っているのかを確認するためにすり鉢ですりつぶす。 粉状になるかと思ったが白い液が出てくる。 どうやら葉の中に樹液のようなものが入っているようだ。


「うーん、なら乾燥させないといけないかな。 でも乾燥させる時に粉にならなそうだし、下手をすれば着火しちゃうかもしれないから、アルコールランプを使おうっと。」


 そう言いながら部屋の中にある物をちょこちょこ動かして、アルコールランプでの実験台の完成だ。


「次は火をつけるけれど・・・あれ?」


 サガミは魔法を使えないので道具を使っての発火になるわけだが、その媒体を使い切ってしまっていたことに気が付いた。


「あー、それなら今からでも買いに・・・」

「困り事?」


 どうしようかと悩んでいたサガミに、隣からシルクの声が聞こえた。


「シルク。 どうして部屋に来たんだい?」

「困ってるって、サインが、頭に入ったから。」


 頭に、という言葉を聞いたサガミは


(もしかして使役の効果なのかな?)


 そんな感じでスキルの事を考えながら、シルクに説明をした。


「火をつける道具がね、無かったんだ。 だからこれからちょっと買い物に行くから・・・」

「それなら任せて。」


 そういうとシルクは頬袋を小さく膨らませた後にアルコールランプの先端に息をふきかける。 するとランプに炎が灯された。


「シルク、炎を吹けるようになったのか?」


 そういうとシルクはVサインを出した。


「そっか。 ありがとうシルク。 煙が有毒かもしれないから部屋を出てて。」


「うん。 困ったら()()を呼んでね。 ()()()。」


 部屋を去っていくシルクにサガミは溜め息をついた。 というのも今のシルクの呼び方に些か疑問を持っていたのだ。


 一人称である「ボク」はそもそもサガミが自分の事を「僕」と言うので、それで言葉を覚えて、シルクも「ボク」と呼ぶようになった。 それだけならまだ頭を悩ます問題ではなかったのだが、シルクがサガミの事を「父さん」と呼ぶ方に頭を悩ませていた。


 確かにサガミはシルクの使役主であり、まだ1週間しか経ってはいないものの、親のように育てている。 なにも間違ってはいない。 いないのだが、自分の子供ではないのに、ましてやまだ18歳のサガミは「父さん」という自覚が全く持てなかった。 故にむず痒さがあったのだ。とはいえ今さらそんなことを「止めてくれ」とも言いにくいので、サガミの方が慣れなければいけないかと、お手製マスクを着けて思ったのだった。


 部屋を出る頃には外は日が沈みはじめていた。 常に外で行動していたサガミにとっては時間の感覚にズレが生じないか心配になっている。


 いらぬ心配を考えているサガミは、夕飯を作るためにキッチンに向かう前にシルクに声をかけようとした時に、シルクが子竜の姿で丸まって寝ている事に気が付いた。 最初の頃に出会って数時間で今のシルクの姿を見ていたサガミにとってはかなり興味深い事象ではあったが、さすがに起こすのも悪いと思い、夕飯の支度に取りかかった。


 そして夕刻の時、夕飯が出来上がったところで、シルクが起きる。 どうやら匂いで起きたようだ。 現金な娘だとサガミは思いつつ、シルクに声をかける。


「おはようシルク。 夕飯が出来たけど、その姿だと食べにくいだろうから、人間の姿に戻ってくれないかい?」


 シルクはそう指摘されて、自分の身体を見て、納得したような表情を見せて、身体を発光させて竜から人の姿に戻る。 そのときにサガミは、服が脱いだような状態になっていたので、服が破けないようにシルクが脱いだものだろうと推測した。 意識的か無意識か、とにかく服の消費が激しくなったり、急に竜の姿になって着る服が無いと言ったことが起きないのはサガミにとってはありがたかった事だ。


 とはいえ服自体を生成することはまだ難しいらしい。 その辺りはサガミも練習している最中ではあるが。


 人の姿に戻ったシルク辺りを見渡して服を見つけて着替える。 その間にサガミは夕飯をテーブルに置いた。


「シルク。 竜の姿と人の姿になるのはまだ感覚が掴めなさそうかい?」

「意識的には、まだ。」

「そっか。 別に焦る必要は無いからね。 あ、でも竜の姿の身体が大きくなったら報告はしてね?」

「大きくなったら、父さん、乗せれる?」

「まずは自分が飛べるようにならないとね。 さ、食べようか。」


 そうしてサガミとシルクは落ち着いた夕食を迎えたのだった。


 シルクが来てから更に1週間後の事。 サガミはシルクと共に身の回りや食糧を買うために外に出て、今はその帰り道の事だ。


「ええっと、とりあえずは最低限の物は買ったし、後はなにかあったかな?」

「父さん。 武器屋はいいの?」

「荷物が多いし、今日は止めておこうかな。 それにまだしばらくは外に行く依頼は受けないつもりだし。 シルクをもう少し見てから・・・シルク?」


 使役の効果で距離が離れたのを感じ取り、後ろを見るとシルクが足を止めてなにかを見ていた。 その先のものをサガミは見て、クスリと笑った。


「買い物は終わったから、ついでに買いに行こうか。」


 そう言ってシルクと一緒にシルクが見ていたお店に向かう。


「ん? おお、いらっしゃいサガミ君。」


 そのお店の店主の男性はサガミを見ると、挨拶を交わした。 ここは実は菓子店で、店主の男性が作ったお菓子やスイーツを提供しているのだ。 ちなみに彼は「菓子職人」という職業適性だったので、そのままの流れでお菓子を提供しているのだ。


「こんにちは店主さん。 最近は依頼に行けずにすみません。」

「なに言ってるんだよ。 聞いたぜ? Bランクになったってな。 そんな冒険者が一菓子職人の依頼ばっかり受け持っちゃいけねぇよ。 まあ、そのおかげか、ちょっとショーケースが寂しくなっちまったがな。」


 サガミは彼の菓子用の食材を依頼として受けたことが何度かあり、それなりに顔見知りではあった。 しかしサガミが依頼として行かなくなったのが祟っているのか、ショーケースの中は所々空いていた。 それでも女性には人気なのでサガミ達がいる時間でも女性の姿があるのだが、今回は閑古鳥が鳴いていた。


 そんな会話のやり取りをしているなかで、シルクはショーケースのケーキをじっと見ていた。


「ところでその子は誰だい? まさか、サガミ君と誰かの子供・・・」

「養女です。 正確にはスキルの「使役」で一緒にいる竜人族の娘です。」

「お、おう。 そうかい。 お嬢ちゃん、そのケーキがいいのかい?」


 サガミの圧を受けた後にシルクに声をかける。 しかしシルクは動かない。


「シルク。 そのケーキがいいなら買ってあげる・・・」

「後ろから2つ目。 ケーキ以外のものが()()()。」


 その言葉にサガミはショーケースのケーキを見る。 そして店主にこう言った。


「すいません、一度それを出してもらってもいいですか?」

「お? おう? お嬢ちゃんにはなにが見えてるんだ?」


 そうして出してもらった後に、サガミがそのケーキのスポンジ部分を人差し指で触る。 そしてケーキの形を()()()()()()中身のなにかを外に出すために動かしていた。


 これはケーキなどの料理を「調理されたもの」として認識することで、スキル「超能生成」を行えるようにしたというものだ。 とはいえこれはサガミだからこそ出来る事なので、むしろ他の人が出来たら「調生師」としての株は上がるだろう。


 そしてケーキの中の異物をサガミの手の中に収める。 そしてそれを店主に見せた。


「ありゃ、こいつは好甘虫(こうかんちゅう)じゃないか。 甘い物の中に入って、中から食い潰していく虫だ。 換気したときに入ったか?」


 そう言っているとシルクがその虫を「フッ」と小さく炎を吐いて虫を灰にした。


「これで大丈夫。」

「シルク、他には見えなかったかい?」

「うん。 そのケーキだけ。」

「もしかしたら、シルクの「眼」にはなにかが見えるようになったみたいだね。 帰ったら実験しようか。」

「ああ、待ってくれよ。 折角だ、そのケーキともう1つ出しておいたぞ。 持っていってくれ。」

「え? いや、これくらいならお金を出しますよ?」

「好甘虫を見つけてくれたんだ。 そのお礼だよ。 代金はいらねえよ。」

「父さん。 貰お?」

「それならご厚意に甘えて・・・」


 そう言ってケーキの入った袋を持って店を出たのだった。


「思わないところでお礼を貰っちゃったね。」

「うん!」


 そうして2人は気分が良くなりながら家に帰るのだった。

シルクはいい子です。


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