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Bランクになった恩恵

宴の翌日

「あの・・・私・・・サルガミット君に・・・ご迷惑をお掛けした・・・でしょうか?」

「た、確かにやってもらうのは願っても無かったことですけど、な、なにも酔った勢いでやらなくても良かったじゃない私。」

「あまり覚えてないですけど、師匠の香りがします。 覚えてないですが。」


 女子3人が昨日の事で顔を真っ赤に染めながら、ギルドハウスのいつもの席に集まった翌日。 サガミはそんな3人を気にしないように、今後の事を考えていた。


 今後と言うのは、そもそもこのクランはサガミのランク昇格試験のために作られた即席クランであり、これと言って予定として組み込んですらいなかった。 だがパーティーとしてのやりやすさを考慮したり、Bランク依頼の難しさを考えると、このままでも特に変化はないようにも思える。


 むしろ今まで出来なかったことにも挑戦できる可能性も出てきている。 サガミの中で、悩まされる事案ではあるが、クランを結成したのだって、何かの縁だとも思っているのだ。


「・・・うーん。 とりあえずは僕はしばらくソロで活動してみたいんだけど、みんなはどう?」

「私はサルガミット君の方針に従います。」

「私もです。 先輩の邪魔にはなりたくないので。」

「自分は師匠に教えて貰えればそれで構わないので、気にしなくても良いです。」


 サガミが思っている以上に依存されなくて良かったと、胸を撫で下ろした。


「みんなおはようさん。 Bランクになって初めての依頼について、少し注意事項を言っておかなければいけないと思ってな。」


 そんな風に会話をしていた時に、ユクシテットが彼らのテーブルに声をかけた。


「ユクシテットさん。 注意事項というのは?」

「まずはパーティーの編成と依頼条件についてだ。 分かっていると思うが、ちゃんと説明しておかないとな。 まず、Bランク依頼に、Bランク以下のメンバーは連れていけない。 つまりこの時点では、ネルハは連れていけない事になる。」

「それは自分も分かっています。」

「ま、その辺りはお前達なら大丈夫だろう。 次は依頼の内容についてだ。 Bランクになれば王都からの依頼も少なからず入ってくる事になる。 ただこの依頼に関しては直接依頼となる。 つまり依頼を貼ることがないと言うわけだ。 特にサガミに関しては依頼が来るかもしれないから、覚えておけ。」

「あ、はい。」

「とはいえ、話はこれだけだ。 後はBランクに昇格したと言うのはこの地域の連中なら知っている。 たが後日、お前達にはギルドカードを発行しようと思っている。」

「ギルドカード、ですか。」


 ギルドカード。 遠方の別のギルドハウスでの身分証明書に近いものに値するカードで、これがあるとないとで、ランクの把握も変わってくる。


「申請はしたが、それでも1週間程はかかるから、それまでは遠方用の依頼は受けるなよ。 Bランクともなると遠方に行くことが多くなるからな。 追々それは渡す。 しばらくは近くのBランクの魔物の討伐依頼が多いかもしれん。 ちゃんと考えてやっていけ。」


 そういってユクシテットは去っていった。


「師匠。 自分は研修用の依頼の方を受注してきます。 また指南の方、よろしくお願い致します。」


 そうしてネルハが先に席を離れた。


「私も、気になっていた資料の確認がありますので、失礼しますね。 サルガミット君。 またなにかあったら、呼んでくださいね。」


 マニューも去っていき、残るはサガミとシンファだけになった。


「僕は依頼に行こうと思ってるけど・・・シンファはどうする?」

「そうですね・・・今回はテリトリーの方に行きます。 オオハネードの卵の様子も気になりますし。」

「そっか。 じゃあ集まる時はここで。」

「はい。 お疲れ様です。 先輩。」


 そうしてみんなと別れた後、サガミは依頼書の貼ってある掲示板に向かうのだった。



「いらっしゃい。 お、サガミじゃないか。 Bランクに昇格したんだってな? もう早速行くのか?」


 サガミの中で行けると思った依頼書を受注した後、すぐに向かったのは道具屋である。 ここの店主は、どんな冒険者にも愛想をよくしているので、冒険者達にとっても通いやすい場所になっている。 ただし店主も怒る時は怒ることを、サガミは知っていたりもする。


「ええ、Bランクの魔物がどんなものか確かめたくなったものですから。」

「お前は相変わらずだなぁ。 いやしかし、Bランクになったということはこの素材の武具を扱えるってことだよな。」


 そう言って店主は奥に引っ込んだ後に何かの鉱物を持ってきた。


「それって・・・」

「おう、「超能生成」のお前さんなら加工させても問題ないだろうと思ってな。」

「「アスファルティー」・・・! 鉱物としての硬度がかなり高くて、普通のハンマーじゃ砕くことも困難な鉱物じゃないですか! どうしてこれがここに?」

「簡潔に言やぁ譲り受けたのさ。 なんでも「加工場」の新入りじゃ扱えないってんで、持っててくれって言われたが、俺だって冒険者の職業持ちじゃないからな。 「保管庫」で保存してたのよ。 頑張ってるサガミに、俺からプレゼントしてやるよ。 いつもご贔屓にな。」

「店主・・・ありがとうございます。 大切に扱わせていただきます。」


 そうしてサガミは、ちょっと大きめのアスファルティーの塊を持って、依頼に向かうのだった。


「ふぅ・・・確かにBランク級の魔物ともなると、やっぱり桁が違うや。 パワーも技量も。」


 サガミは森林地帯の中をひたすらに歩いていた。 今現在サガミがいる場所は、Cランクのエリア内での森林地帯ではなく、更にその先の森林地帯の中を歩いていた。 区切られている理由としては、魔物の強さが格段に変わってくるからだ。


 今サガミが討伐のために戦っていた「マッスルサーペント」と呼ばれる、本来蛇に存在しない筋肉のある蛇も、Cランクの冒険者ではまず倒せないが、Bランクの入門の魔物とも言われている。


 そんなマッスルサーペントをあと一撃で倒せると思った時に、筋力を一点集中させてその部分を硬化状態にし、サガミの武器を弾いたのち、その一瞬をついて、一気に後退していったのだ。 サガミはそれを追いかけている所だ。


「道具屋さんの店主から貰ったアスファルティー様々だよ。 これがなかったら戦いにすらならなかったからね。」


 そう言ってサガミは自分の武器を見る。 現在サガミが持っているのはアスファルティーを「超能生成」で変形させた鋳物のミドルブレードとタワーシールドだ。 ちなみに剣を左に、盾を右に持っている。 これはサガミが左利きというわけではなく、盾を右にすることで、重心を安定させることにあるからである。


 そんなことをしているうちにマッスルサーペントを見つける。 全身は3メートルにもなるマッスルサーペント。 それが自分の体力を回復するために睡眠をとっていた。


「敵を前にして後退した後に睡眠を取る、か。 うーん、あいつの身体の方は肉質的にも受け付けない部分もあったからなぁ・・・となると狙うのは頭・・・かな?」


 そう言いながらサガミは近くの大木を登っていく。 そしてマッスルサーペントの頭上の部分に付くと、もう一度位置を確認する。


「マッスルサーペント・・・確かに君は強かった。 この装備がなければ、君を倒すことは叶わなかっただろう。 だから、僕の今後の糧として、君を葬る。」


 そしてサガミは一気に飛び上がり、装備していたアスファルティーの剣と盾を変形させて、1つの銅鐸を作り、そのままマッスルサーペントの頭上へと落とした。 銅鐸はマッスルサーペントの顔よりも小さかったが、それでも脳天に当たればただてはすまない。 マッスルサーペントは雄叫びを一度吠えた後、絶命をした。


「ふぅ。 さてと、後はどうやって持ち帰るかかな。 そのままにしてもバラバラにしてもかなりの重量と質量になっちゃうし、かといって放置するわけにはいかないし・・・でも持っていくしかないか。 解体はギルドハウスに戻ってからにしようかな?」


 そう考えながらマッスルサーペントを引き摺るサガミ。 大蛇とは言うものの、全身が長いだけで、実際はそんなにも重く感じない。 なのでとりあえずサガミの身体の肉付きでも引き摺る事は出来る。 しかし長時間は出来ないのが難点だ。


「うーん、やっぱりある程度は解体した方がいいのかな? でもマッスルサーペントの解体方法はまだ知らないしなぁ・・・どうしよう?」

「それなら俺らに譲ってくれや。」


 その声に反応すると、木の影から数名の冒険者がサガミを囲うように現れる。 サガミはそこで察した。


「あんた達にあげる素材なんか1つもないよ。 これぱ僕が仕留めたんだ。 皮や鱗、血まで僕のものだ。」

「知ったこっちゃねぇな。 お前は泣きながら「依頼に失敗しました」って報告しにいけばいいんだよ。 お前の報酬が無くなるだけで命は助かるんだ。 十分な報酬だろ?」


 そう言いながらジリジリとサガミに近付く男達。 サガミはアスファルティーの装備をしているとは言え、数で押しきられたら確実に負ける。 サガミとしても選択の余地を与えられていなかった。


 そう思っていた矢先に、別の影が、囲んでいた男達を次々と倒していった。


「な、なんだ!? ぐはっ!?」


 目の前の男が倒れた時、その影の人物がサガミを捉える。 サガミもそれに対して身構えていると、その人物はおもむろに自分の被ってい頭巾を外す。


「女の・・・人?」

「サルガミット・コーナン様でございますね?」


 開いているかいないかくらいの細目なその人物は、サガミにそう聞いてきた。


「そう、ですけど?」

「初めまして、私達は冒険者が討伐された魔物や、採取した素材を、ギルドハウスまで運搬する「ギルドウーバー」と申します組織でございます。 Bランクの冒険者方には、必ず我々が活躍致します。」


 そう説明をされつつ、サガミが討伐したマッスルサーペントを次々に解体している集団がサガミの目に移った。


「ご安心下さい。 彼らも「ギルドウーバー」の精鋭達になります。 と言っても我々は集団組織になりまして、複数部隊存在しますので、こうしてサルガミット様の報酬を回収しつつ、他のところにも行っている状態でございます。」

「はぁ、そうなのですか。 でもそれと僕の名前とどう関係が?」

「ユクシテット様からの依頼、もとい今回からサルガミット様がBランクになったことによる我々の依頼先が増えたことをお伝えしたかったようです。 そしてサルガミット様にこれを。」


 そう言ってサガミに渡したのは「信号弾」だった。


「これを空に放てば我々が現場に駆けつける、と言った仕組みになっております。 本部は空にございますので、何時でもお呼びください。」


 それはありがたいと思っておるサガミは、反面どうやってならず者達を倒したのか疑問になっていた。


「な、なにするんだてめぇ!」


 後ろで倒れていたはずの男が襲いかかろうとしているのを、サガミは見逃さなかった。


「! 危ない!」

「申し遅れました。 私は今回の部隊のリーダーにございます「リリストア・ウシル」というものです。 職業は「毒師」になります。 もう少し寝ていなさいな。」


 そう言った後に、いつの間にか男の背後に回って、注射器を差して、注入した。 すると男は瞬く間に寝てしまったではないか。


「眠っちゃいましたね。」

「毒と一言で言っても様々ですからね。 それに私はこう見えてもBランクなので、このような漁夫の利を狙う不届きものとは違うのですよ。」


 それなら納得だと、サガミは感心していた。


「それでは、今後ともご贔屓に。」


 そう言って手を差し伸べられたので、サガミもそのままリリストアと握手を交わして、森を出たのだった。

この話を書いていて、ゲームとかアニメとかで倒したモンスターの処理とか運搬とかどうしているんだろうなと思い当たり、自分なりに納得できる形を取りました


違和感、あるかな?

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