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Bランク昇格試験(準備)

 Bランク昇格試験


 Cランクの人間が実力をあげるために行われる試験で、Bランクになれば、依頼完了時の報酬はCランクの時よりも増えるし、扱えるようになるアイテムのランクもあがる。


 だがその分依頼の魔物も強くなるし、過酷な環境に送られるのは当然の事。 報酬と難易度は比例する。


 そして昇格試験を設け、CランカーがBランカーに上がるための力を見せるものが用意された。


 昇格試験の特徴はいくつかある。


 ・参加条件は必ず3~10人のパーティーであること。


 ・試験内容は都度変わるため、最初に内容は知らせない。


 ・試験で命を落とすことの無いように、参加者にはブレスレットを手首につける。


 と、この辺りでユクシテットは話を切った。


「ざっくりと言えばこんな感じだ。 なにか質問はあるか?」

「それなら僕から。 今回はパーティーとして参加するにあたって、ネルハの同伴は可能なのかと、ネルハのランクについて知りたいです。」


 サガミはこの4人で昇格試験に挑むつもりではあったものの、ネルハはまだ研修期間の身である。 参加が出来ないと言われればそこまでだが、せっかく来てくれたネルハを省くのも、サガミは良心が痛んだのだった。


「その辺りは別段問題はないそうだ。」

「それなら自分も行けるんですね?」

「ただし、ネルハのランクについては簡単にBランクには出来ない。 まだCランクにもなっていないからな。 そこでネルハは研修期間を終えて、尚且つCランクで半年間の依頼達成が認められた場合、Bランクへの昇格をさせて貰えることになった。」

「本当ですか!?」

「ここまでやっておいて、「Bランクには上がらせない」って言うのは、おかしな話だろ? だからまずは試験に合格してこい。」

「ありがとうございます!」


 そう言ってネルハは頭を下げるのだった。


「さて、次にお前達に付けて貰うものがある。 お前達、手を出せ。」


 ユクシテットに言われたので、手を出す4人。 そしてユクシテットはブレスレットを装着させる。


「そのブレスレットが試験の合否を分ける鍵になる。 まず合格だと見なした場合に、通知を送り、そのブレスレット内から結果を発表される。 不合格の場合は、ここに転移して戻される。 不合格の条件の例としては、試験の期間を過ぎる。 試験とは違う行動をする等が含まれる。」

「他に条件があるのですか?」

「試験者が死亡しかけた時もここに戻されるぞ。 モンスターに倒されたりしてな。 その場合も不合格になる。」

「でも、ブレスレットなら、すぐに外せそうな、気がしますが。」

「残念だが、ブレスレットを無理矢理外しても不合格とみなし、ここに戻される。 ブレスレットを破壊するのはもちろん、ブレスレットをしている()を切り落としても戻される。 ま、切り落とした腕はすぐにくっつくようにプロテクトがかけられているがな。」


 ユクシテットが言う事はつまり、過去に事例があるということだ。 その人はどうなったのかをサガミは聞くと、少なくとも半年は昇格試験には挑ませなかったらしい。 自分の身体を省みない人間には、昇格する資格が無いと言う訳だろう。


「それと、今回の試験内容を教える。」


 毎回変わる試験内容に4人は唾を飲んだ。


「今回は「風鳥 オオハネードの卵の納品を行う」だ。 期限は10日後の日没までとする。」


 ユクシテットから試験内容を聞いた瞬間に、3人はシンファに目を向ける。


「風鳥 オオハネード。 山の頂上に巣を作る大鳥ですね。 その大きい羽から放たれる風圧は、風速25mにもなります。 また遠くに飛んでいったとしても、卵を採ろうとする物は、例え翼竜でも立ち向かうとの事です。」


 シンファの知識をフルに使って敵の情報を瞬時に提示した。


「後はその場所だよね。 オオハネードって山から山へ飛び移るから、追うことが困難なんですよね。 しかも卵も一緒に持っていくから、卵自体もかなり希少になるって話ですよ。」

「そうだな。 だが場所は把握している。 今奴がいるのはここから150km離れた標高自体は高くない山の山頂だ。」

「標高自体はって事は、別の要因があるわけですね?」

「後は行ってみれば分かるだろ。 それじゃ、俺はここまでだ。 検討を祈る。」


 そうしてユクシテットはテーブルを去っていった。


「今日から10日後の日没まで、か。 おそらくその期間が、オオハネードがその山にいる期間なんだろうね。」

「そのようですね。 先輩。 今回は()を連れていきましょうか?」


 シンファの言う「誰」とは彼女が別の空間で放牧をしている彼女の魔物達の事である。 魔物使いの彼女は、小型も大型も関係無く放牧をしているので、普通には連れて歩いていけないのだ。 ちなみに前回連れていたモージローは人に慣れるという項目をクリアしたらしく、他の魔物達と同じ空間にいる。


「いや、ここでは選定しないよ。 現場についてから、考えたいから。」

「分かりました。」

「師匠。 素材とかはどこで入手しますか?」

「今回は長旅にもなるし、相手も油断できないから、鍛治屋と魔具専門店に行こうか。」

「私はどうすれば良いでしょうか?」

「うーん。 「治療師」は戦闘できない代わりに、回復に特化するから、防御面を強化するのが一番かな? 武器屋にもよっていこう。」


 ある程度方針が決まったところで、今日の予定を書き出していくサガミ。 10日あるとはいえ、時間は限られている。 サガミも今回は初の長期任務であるため、準備を怠りたくないのだろう。


「相手がオオハネードってことは風圧の事も考えないとな。 よし。 とりあえず行く場所に行こうか。」

『はい。』

「ちょっと待ちな。 お前ら。」


 これから準備に取りかかろうとテーブルを立ったところで、先程絡まれた大男のような風貌の男に声をかけられる。 サガミは「またか」とうんざりした様子でその男を見やる。


「なんですか? これから昇格試験の準備をしなければいけないんですけど?」


 そうすり抜けようとした時に、目の前に立ちはだかるように男は移動した。


「まぁ、話を聞けって。 今回の試験内容はオオハネードの卵の納品なんだってなぁ。」

「話を立ち聞きとは、随分と趣味の悪い。 それがなんだって言うんですか?」

「今回の試験、止めておいた方がいいんじゃないかって話だよ。 相手はあのオオハネードだぜ? 命がいくつあっても足りないって。」


 そんな風に言う男を、サガミ達は呆気に取られたように見ていた。 というのも、この男が言っていることが、あまりにも滑稽で馬鹿馬鹿しく、そんなことよりも早く準備をしに行きたかったからだ。


「俺はオオハネードと何度かやりあったとこがある。 奴は飛ぶだけでもその羽を広げただけで影が出来、そこから放たれる風圧は立っていられない程だ。 しかもあいつは、仲間を呼ぶことだってあるんだ。死地に向かうようなものだぜ。 そんなところへこの子達を連れていくなんて、男としてどうかと思うね。 俺は。」


 それを聞いたサガミは、「結局はそこに目が行くのか」と言った具合に溜め息をついた。


「ご忠告は受けておきましょう。 ですが僕達はBランクに上がりたいんです。 これぐらいで逃げていては、Bランクなんて夢の話になってしまいますよ。 と言うことで、僕達は行かせてもらいます。 お話を聞かせていただき、ありがとうございます。」


 そうしてサガミは男からみんなを守るように歩き、そのままギルドハウスを出るのだった。


「師匠。 先程の人の話、ちゃんと聞かなくて良かったんですか?」


 そう聞いてくるネルハを、サガミは指を差す。


「ネルハ。 ああ言った輩の話は、真面目に受け止めない方がいい。 真に受けて「へぇ、そうなんだ」と鵜呑みにすると、いざ本当に遭遇した時に「あの人の話は嘘だったんだ」という考えに至る前に死んでしまうんだ。」

「ネルハ。 オオハネードは確かに強力な敵かもしれないけれど、私達に他人の知識は邪魔になるのよ。」

「どう言うことですか? シンファさん。」

「ネルハはまだ冒険者としては浅いから見る目を養えていないけど、あの男が言ったことが本当なら、身体に傷一つ付いていないのはおかしい。 それこそ、「これがその時受けた傷だ」位のそれじゃないと信用できない。 第一オオハネードは大鳥故に敵味方問わずに攻撃をすることもある。 仲間なんて引き連れるような性格じゃない。 奴はオオハネードを見たことはあっても、直接対峙したことが無いのが見え見え。 だから話を聞くだけ無駄なんだ。」

「分からないことは自分で調べた方が早いって事ですか?」

「他の人に聞いた方が有意義な情報を得られるのならそれに限ったことじゃないけど、人を見る目だけは絶対必要だってこと。 時間を使っちゃったから早く行こう。 今日は準備をするだけして、明日出発しよう。」


 そう言ってサガミはスタスタと歩いていってしまった。


「ネルハちゃん。 誤解の無いように言っておくんだけれど、サルガミット君も、怒って、ああやって言った訳じゃ無いんだよ? サルガミット君も苦労して、ああ言ってるだけなんだよ?」

「調成師はそもそもあまり選ばれないため人もいないし、故にどんなことが出来るのか分からず、イメージすらも良くないとまで言われていて、そんな中で頑張ってきた先輩だから、強い口調になっちゃうのかも知れないって。」

「いえ、自分のために言っているというのは、分かっています。 師匠は意味の無い理由で声をかける人で無いのは、自分も知っています。」


 彼の背中を見ながら3人は、そう語り合ったのだった。

ここから少し長編風になります

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