オーク、出現しました
「へ?」
2メートルはある巨体に緑色の肌。まるでゲームの中から飛び出してきたみたいなバケモノの姿に思わず腰を抜かした。
ウォー、と低い唸り声を上げ、襲いかかってくるソレ。
足が思うように動かなかったが、間一髪でなんとか避ける。
ハァハァと息が上がってきた。まだほとんど動いてないし、運動神経には自信あったのに。それほどまでにこの非日常への緊張と恐怖は、体力を消耗する。
また攻撃される前に、一旦距離をとった。
ソレが距離を詰めてくるまでの間、コンマ数秒。その一瞬で考えを巡らした。
どう足掻いたって、肉弾戦であのバケモノニ勝てる訳がない。となると能力を使うことになるわけだが、こっちの世界で使ったことはまだ一回もない。あの白い世界では魔法の威力とかわかりにくいし、万一敵が耐性持ちだったりしたら詰む。今コイツと戦うのは現実的じゃないな。じゃあ…
「身体強化、脚!」
突然能力を使った俺に、バケモノが一瞬怯む。
その瞬間を、俺は逃さなかった。
「それじゃあまたな!もう二度と会いたくないけど!」
そう言って、脱兎のごとく全力で逃げる。後ろを振り返ってみると、あのバケモノはいなかった。別の獲物を見つけたのだろうか。
「ふう、助かった…にしてもさっきのアレは何だったんだ?」
すると、「お知らせ」と書かれたウィンドウが飛び出してきた。
〈お知らせ〉
ヴィランと遭遇しました。ヴィランは、ですゲームの進行を促進するために召喚されたモンスターで、ランクA〜Cに相当します。倒すと、アイテム・経験価を獲得できます。