ステータス、オープン
いやいや、使ったこともない能力をいきなり「知ってる」なんて言われたって…
そう思った瞬間、頭の中に何かが流れ込んでくるような感じがした。
これは…何だ?誰かの記憶?だとしたら、一体誰の…
また、意識が飛んだ。
目が覚める。ここで家のベッドに戻っていたらどんなに良かったことだろう。残念ながら、「夢オチ」なんていう都合のいい展開は待ち受けていなかったようだ。
だが、不思議と気分がいい。誰かの言葉をかりるなら、「生まれ変わったような」気分だ。まあ、生まれ変わるのなんてあとミャマルアとかいうふざけた「神」だけで十分だが。
なんだか、今までとは違う何か不思議なものが頭の中にあるような気がする。これが、「能力を知っている、ということなのだろうか。それはついさっき(どのくらい寝ていたのかはわからないけど)までは俺の中になかったはずなのに、ピッタり記憶の中にハマっているような気がする。
まるで、それを入れるために丁度いい大きさの記憶を削り取ったかのような…
まあ、そんなことはどうでもいい。
問題は、この記憶をどこまで引き出せるか、ということだ。知っているからと言って全部を使いこなせるわけではない。まあ、当然だろう。早く走る方法を知っていれば誰でもオリンピック選手になれるわけがないし、ただしいフォームを知っているからと言ってテニスのプロになれるわけでもない。
まあ、当たり前のことだが、知識よりも実践の方がよほど大事なわけだ。そう考えて俺の能力について「思い出して」みると、ファッ!?ってなった。
そりゃあそうなるよ。あのクソ神様ふざけんなっ、て。
だって、「ステータスオープン」が「誰でも持ってる基礎能力」ってなってるんだぜ? 俺の記憶によると、自分の能力値や持っているスキル等を半透明の、自分だけに見えるディスプレイに映し出す能力だ、って。
…普通にあんじゃねーか、「ステータスオープン」。しかも、誰でも持ってる基礎能力じゃねーか。さっきのでもかなりムカついたが、もっとバカにされたような気分だ。
あとふざけた神様にもらった能力を使うのも嫌な話だが、こうなってしまったらしょうがない。取りあえずこれ、使うか。
どうにかイライラを抑え(抑え切れはしないけど)、口を開く。
「ステータス、オープン」
そう口にするや否や、「記憶」通りの半透明なディスプレイが出てきた。それを見てみると、
坂本 真那 1
〈能力値〉
力 95 知能 86
素早さ 62 魔力 50
体力 63
〈取得済みのスキル〉
ステータスオープン レベル1/5 使用魔力 1
影魔法 レベル1/10 使用魔力 不明
身体強化 レベル1/5 使用魔力 10
〈アイテム〉
取得済みのアイテムはありません
〈備考〉
・以下のスキルから一つを選んで取得できます
テレポート レベル1/5
テレパシー レベル1/5
アイテムボックス レベル1/5
・以下のアイテムから一つを選んで取得できます
短剣 ランク E
・各項目のさらに詳しい説明は、スキル「ステータスオープン」レベル2を使用することで参照可能です
・スキル「ステータスオープン」は100回使用するとレベルが1から2へと変化します
・〈能力値〉各項目及び〈スキル〉各項目は本人の修練度に応じて変化します
…なんてゆーか、「ザ・王道」って感じの表示だな。名前の横にある数字って何だろ。やっぱレベルとかかな?まあ、こんなところで意外性を出されたところで見にくくなるだけだろうけど。
取りあえず、取得可能なスキル、アイテムってのを選ばないとな。
テレポート、テレパシー、アイテムボックス。取りあえず、テレパシーはないか。これ使って話す相手、いないし。となるとテレポートとアイテムボックスのどっちかから選ぶのか。
アイテム一個もらうし、取りあえずアイテムボックスにしておこう。どうせそのうち、テレポートも使えるようになるでしょ。
そんな安易な思考を経てスキル「アイテムボックス」とアイテム「短剣」(アイテムは選択肢がない!)を手に入れた。
影魔法か…なんか、「お前はインキャ」って言われてるみたいで腹が立つな。
どうやって使うのだろうか、と記憶をたどってみても何もわからない。あの神様、サービス悪いな。
とりあえずステータスオープンのレベルを2にするためにディスプレイを閉じたり開いたり。この作業が、地味に疲れる。
案の定、50回使ったところで意識が飛んだ。
ここまでラノベっぽくしなくたっていいのに…
また目が覚めた。この世界に来てから、何度も意識が飛んでいるような気がする。
「使用魔力」ってとこからなんとなく察してはいたが、魔力を使い切ると気を失ってしまうようだ。ありがちな表現で言えば、「魔力酔い」といったやつだろう。んで、まあ、一回魔力を使い切ると…
「ステータスオープン」
確認してみると、予想通り魔力値が65にまで増えていた。やはり、一度使い切ると増えていくシステムのようだ。まあ、かといってこれを体力で試してみるだけの勇気はないが。
よしっ、取りあえずあと50回で他のスキルについての詳しい説明を見ることができる。魔力値も増えて魔力酔いを起こす心配もなくなったし、ちょっと大変だけど、がんばりますか。
…ヤバイ。いくら魔力を使い切っていないとはいっても、これ、すっごい疲れる。大体魔力値が30を切ったあたりか疲れ始めたから、半分使うと体にダメージが来始めるのだろう。
でも、これで99回が終わった。あと一回…
「ステータスッ、オープン!」
もはや完全に耳に馴染んだ、プォンという音が鳴る。すると、見慣れたあのディスプレイの上に、メッセージが表示された。
[スキル「ステータスオープン」を100回使用したので、スキルレベルが2に上がります。それにより、スキルやアイテムの詳細を確認できるようになります。また、プレイヤー「坂本真那」のレベルも2に上がります。それにより、〈能力値〉各項目がそれぞれ20アップします。]
やっと終わった…
達成感と疲労感が3対7くらいの割合でこみ上げてくる。これでやっとスタート地点、といったところだろう。
それにしても、俺、プレイヤーだったのか。やっぱあの数字レベルだったし。マジでラノベ(いや、というかゲーム?)みたいになってんな。
そんなことを考えながら、俺は画面上の影魔法の項目をタップする。
すると画面が切り替わりそれの説明が出てきた。
〈影魔法〉
希少度 B
影の力を使った魔法です。最大10種類の魔法を使えます。スキルレベルを上げることで、魔法の威力を上げたり、使える魔法を増やしたりすることができます。
現・在使用可能な魔法
シャドウルーム 使用魔力 5
ハイド 使用魔力 1
シャドウ・テレポート 使用魔力 2
ほう。希少度Bとは、そこそこ珍しいということなのだろう。現状、これが俺の最強スキルということか。取りあえず、これを中心に鍛えていくか。これはレベルアップ条件とか出てないけど、使ってれば上がるよな?
あの神様から与えられた一ヶ月間、とにかく俺はスキルや魔法をその後、使いまくった。