閑話 1 行商人トーマス&運命を変えた男
行商人トーマス視点です
誤字があったので修正しました
私は行商人をしている、トーマスと申します。
今私が居るところは、クレスポートと言う港町です。
南の航路で商船を手に入れ、海運業をするのが夢です。
海運ギルドには既に登録が済んでいます。
港から少し外れに、事務所兼倉庫を手に入れることも出来ました。
後は商船を手に入れる事と、維持費の為にギルドに預金を一定額貯めておかなければなりません。
なので利益率の高い商品で稼ぎたいところです。
今日は「青海の雫」と呼ばれる貴重な宝石が入港するそうです。
この宝石を北のグランフォートまで持って行けば、貴族様相手にかなりの金額が手に入るでしょう。
問題は、質と数をどれだけ手に入れられるか、と言う事でしょうね。
何しろ貴重品の上に、人気がありますから、でも目利きには自信があります、
今日のセリは、一世一代の大勝負です。
目的の船が入港して、積み荷が海運ギルドに運ばれたそうです。
セリが始まり、次々商品の買い付けが行われてます。
商人同士の探り合いや牽制を凌ぎ、目的の宝石を手に入れる事が出来ました。
質も数も申し分ない結果になりました。
これだけの数があれば商船のお金にはなるでしょう。
維持費分の預金が心許ないので、手を打たないと駄目でしょうね。
グランフォートで何か仕入れて、クレスポートで捌ければ問題はクリアされると思いますが....
まずはグランフォートに移動しましょう。
冒険者ギルドで護衛の依頼を出し、その日の昼過ぎに依頼を受けたいと申し出た方達が居るそうです。
以前にも護衛をして下さった、南海の絆と言う冒険者パーティの方達でした。
私としても信用できる相手でしたので、護衛を頼む事にしました、出発は明日です。
「南海の絆の皆さん、お久しぶりです、今回はよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします、道中危険があったらすぐに隠れてください。」
旅は非常に順調でした、天気も良く、魔物に襲われることもなく、5日が過ぎました。
私はこの日も順調に進むと思っていました、夕方前までは穏やかな時が過ぎていきました、
そのすぐ後に、バボヘッド盗賊団に囲まれるとは思いませんでした、
私はドレッド君達の安否を思いつつも指示どうりに馬車へと隠れました、
激しい剣戟の音、飛び交う矢の風切り音、爆発する火の魔法、盗賊達の怒声や罵声、
さすがの南海の絆でも数で負けているし、B級指名手配犯ですし実力差もあるでしょう、厳しそう、
そう思った直後です、外の様子が変わりました、何かが起きているのは確かでしょう、
今までに聞いたことがない、唸る音が混ざるようになりました、どうやら誰かが助けてくれるようです、
それからは、ものの数分で決着がついたようです、ドレッド君が呼んでます。
「ああ、私は助かったんだな。」
外に出てみると、全身黒で統一された、声から男で年齢も若いと思える人物が立っていました、
この方はベーダー様と言うそうです、話を聞いてみると、水も食料も無く困っているそうです、
しかも人里を探していると言うので、町まで一緒に向かうことを提案してみました、
水と食料、さらに魔物素材の買い取りをすることで、町まで同行して貰える事になりました、
危険な魔素の森にいつの間にか居たこと、此処が何処か分からないとこなど、
謎が多いですがそんな事は些細な事です、私はこの出会いを神々に感謝します、
ベーダー様が居なければ、今頃私は死体になっていたでしょう、
国や領地、使用してる通貨、魔物素材の取引、ベーダー様との会談は実に有意義でした、
残りの2日は何事もなく、町に着きました、私は商業ギルドへ向かうため、皆さんと別れました。
商業ギルドでは、予想を大きく上回る金額を、手にすることが出来ました、
青海の雫も高値でしたけど、それ以上にクリスタルビーにかなりの値が付きました、
商談を終え、お茶を飲みながら一息ついていた時の事です、突然冒険者ギルドの使いの方が、
慌てて入ってきました、何事かと全員身構えました、
すると使いの方からとんでもない言葉が出てきました。
「エルダーロックタートルとルビータイガーが持ち込まれました、巨大なマナタイト結晶が付いてます、
査定をお願いしたいので、大至急人を派遣してください。」
あまりの事に、皆思考が止まっていたようです、無理もありません、私もあっけにとられていました、
商業ギルドのサブマスターがいち早く正気を取り戻し、次々指示が飛びます、
ここで私も正気を取り戻し、そして思い至った、ベーダー様だ!
両方とも魔素の森にしか生息していない、加えてかなりの実力者しか討伐できない、
これは商機です、私も査定員に立候補して、すぐさま冒険者ギルドに向かいました。
冒険者ギルドに着くと、かなりの大騒ぎになっていました、無理もないことです、
解体場には職人ギルドのギルドマスターとサブマスター、更には鍛冶屋と宝石職人も来ていました、
ここで各ギルドの代表は、マナタイト結晶については、領主様に報告しないのはまずいだろう、
と言うことになりました、各ギルドの証明書を持って、使いの者が出て行きました、
私の目的はルビータイガーの毛皮です、クレスポートで探してる人がいたのを思い出しました、
その人物は状態が良ければ、言い値で買うと言っていました、
ここなら腕の良い職人も居ますし問題無いでしょう、なんとか交渉して手に入れたいです、
領主様の代理人の方も交えて査定を詰めていきます、深夜もだいぶ過ぎた頃、
すべての査定が終わりました、マナタイト結晶は領主様の預かりと言うことになりました、
私はルビータイガーの毛皮を手に入れる事が出来ました、職人の手配も終わりました、
さすがに皆さん疲れが見えます、片付けを済ませ解散となりました。
帰路についた私は、今回の事を思い返していました、毛皮を持ち帰れば間違いなく海運業が開設できる、
私の夢が手の届くところまで来ている、それもこれもベーダー様のお陰で間違いありません、
ベーダー様は私にとって大切なお客様であると、改めて心に刻みました。
次話から本編に戻ります