閑話 2 村長カザック&運命を変えた男
村長カザック視点です
私の名前はカザック、ウォーヌ村の村長をしています
この村は米の栽培と米を原料にした酒造で名を知られるようになった村です
主要の街道から少し外れている為、人はそんなに多く訪れることはありません
ですが自然豊かでのんびり過ごすには丁度良い村だと私は思います
Xデーより1週間前
最近村の周辺にゴブリンが出没するようになってとても不安な日々を過ごしています
村近くの森の木を伐採に出ていた村人が怪我をしたとの報告がありました
怪我人の元に行って話を聞いてみると、ゴブリンが襲ってきたそうです
数は3匹だったそうですが、いきなりの事だったらしく対処が遅れ切られたそうです
周辺を自警団に見回ってもらう事が決定しました、数が少ない今なら対処が可能だと判断されました
8名の自警団で森の奥に入り探索をした結果、6匹のゴブリンと遭遇したそうです
怪我人が数名出ましたが、ゴブリンの3匹を倒すことに成功したそうです
この調子で討伐が進むと良いのですが、ゴブリンは繁殖力が高く数がすぐに増えるので心配です
Xデーより5日前
見回りをしていた自警団から緊急連絡がありました
森の奥にゴブリンが10匹以上居たそうです、自警団は即座に撤退したので怪我人は居ませんでした
村に襲撃に来る可能性が高いとの事で、村人に注意喚起と自衛の準備更に避難の準備もして貰いました
その夜、ゴブリンが村を襲撃に来ました、数は10匹でしたが家畜を狙われ持って行かれました
村人には被害が無いのが幸いでした、ですが襲撃が何度も起こると被害が出るでしょう
村の役職を集め対策会議を行います、自警団は村の警備に回るのが決定しました
ただ、自警団だけでは手が足りないのは明白です、冒険者に助けを求める事に決定しました
村の資金を集めても冒険者に依頼できるほどの金額がそれほど高くはありませんでした
それでも引き受けてくれる冒険者に期待するしか道はありません
出発準備をしてグランフォートまで行ってもらう事にしました
Xデーより3日前
夕方、ゴブリンが襲撃に来た
ゴブリンの数は10匹ですが、一回り大きなゴブリンが指揮を執ってるように見えます
まさか、ゴブリンウォーリアー、ゴブリンの変異種で数段強いゴブリンです
自警団は善戦してますが怪我人が多く出ました、急がないと村は壊滅してしまう
「リック、君の能力が無ければ不可能な事だ、だが君一人にすべてを押し付けるのを許してほしい。」
「いえ、大丈夫です、必ず冒険者を連れて戻ってきます、それまで耐えてください。」
リックを1人送り出しました、特別な能力を持つ彼じゃなければグランフォートまで辿り着けないのです
彼の能力は騎乗してる馬の能力が上昇すると言う珍しい能力だそうです
彼ならば途中で盗賊や魔物に会っても逃げ切れるでしょう
私達は彼が戻るのを耐えて凌がなければいけません
Xデーより1日前
怪我人は備蓄していた薬草で何とか治療が出来てます、重傷者が出て居ないのが幸いですね
昼のうちに村外縁付近に住んでいる人は、中央広場付近へ避難するように要請しました
ゴブリンの襲撃があった場合、外縁付近に住む人を守るのは困難でしょう
広場にテントを張り、自警団以外の戦える者にも警備にあたってもらいます
自警団から報告がありました、ゴブリンが襲撃に来たそうです、襲撃の頻度が上がってる
自警団と共に戦える者は全員戦闘に出ました、私も鉈を持ち自警団の後に続きます
戦闘の経験が多少しか無い私は大した役には立ちませんでした
家畜が連れて行かれ、畑の作物も持って行かれました、怪我人もかなり出て居ます
次の襲撃は耐えられるか....おそらく無理でしょう、自警団も半数がまともに動けなくなりました
リック、無理だとは思いますが急いでください
Xデー
朝日と共に昨日の襲撃の惨状が見えてきました
外縁の家が3棟ボロボロになっています、家畜も数匹残ってるだけになってます
畑も荒らされ、備蓄倉庫の扉も破られ半分ほど無くなっています、半分でも残ってるのは幸いですね
今日も襲撃があった場合もう持ちこたえられそうにありません
村を覆う柵は1部ですが、襲撃により完全に破壊されてますね
怪我人も薬草が底を付き治療もままならなくなりました、重傷者も2名居ます
皆死が迫ってるのを感じているのでしょう、数人は諦めたような顔をしています
夕方過ぎに最後の時がやってきました
怪我を負った自警団も武器を持ち戦いに赴きます
戦闘は、戦闘と呼べるものではなくなっていますね、ゴブリンウォーリアーが2匹に増えてます
私は覚悟を決めました、1匹でも多く道ずれにしてやろう、大事な村と皆を守るために
”殺される!”と思った次の瞬間です
赤い瞳を輝かせ、漆黒の衣を纏い、光る剣を振るい、死神がやって来ました
私はその姿を目にした時、私の運命はここまでだと思いました
ですが死神は我々ではなくゴブリンの元にやって来たのです
一瞬の出来事でした、彼の者が通り過ぎた後にゴブリン共の首が刈られていました
暫く後彼は広場に現れました、自警団からグランフォートの冒険者でリックの依頼を受けたと聞きました
リック、ありがとう、何とか間に合いました
「ベーダー様ですね、私はウォーヌ村の村長をしております、カザックと申します、
この度は村の窮地に救援に来ていただき、誠にありがとうございました。」
私は深々と頭を下げました
その後はベーダー様がゴブリンを全滅させてくださいました
更には村の防衛力の向上の為、用水路、外壁、自警団の訓練と様々な恩恵を頂きました
私達はベーダー様に深く感謝いたします
次から本編に戻ります




