✟「反逆への兆し」2/4
ヒュン
「gyaaaaaaaa」
「……駄目だ。カーラ姉ぇ、何回刺しても死なない。」
「流石既に死んでいるだけはあるわね!」
「灼来風獣掌!」
ドカー――ン
激しい音が鳴る。
鉄の柵が熱によって溶かされたようだ。
「今度は何?」
「……やった!向こうから来てくれよ。」
カーラ、シーラの前にエドゥ達が現れた。
「いるのは昨日と同じメンツか、どうやら最悪の事態だけは避けられたようだ。」
「まず、ゾンビを何とかしてぇな!」
「見つけたぞ、影の化け物!」
エドゥはウィリーの魂に語りかける。
(ウィリー、気来風竜掌に炎を加える。調整してくれ!)
(ははぁ、名付けるなら灼来風竜掌ってわけかい?いいけど、気来風竜掌でさえ使った後の反動が大きいんだ。どうなるかは分からないよ。)
(やれることはやるさ。)
ボォオオオオオ
「灼来風竜掌!!」
エドゥは右手を天に掲げる。
バァアアアアア
雨雲が吹き飛ばされる。
「arrrrr」「arrrrr」「arrrrr」「arrrrrr」「arrrrr」「arrrrr」
眩い光が差し込み、ゾンビ達は日陰へと戻っていく。
「あぁあああああ!!!灼来風体掌!!」
エドゥは痛みをこられ、すかさず双子の暗殺者に向けて炎を放った。
「シーラ危ない!」
カーラがシーラを突き飛ばした。
「今だ!行くぞ!」
カーラの前にマクシモヴィッチが、シーラの前にピザファット、エドゥはデズモンドの前に立ちふさがった。
これで当初の作戦通りことが運んだ。
そしてエドゥ対デズモンドの戦いが始まる。
(さて、まずは影から本体を分離させる必要があるな。)
エドゥは地面の影を見た。
(なるほど、本当に影の中にいるのか。)
影が自身の影の方へと寄ってくるのが分かる。
動く影と自分の影が重なった。
ギィイイイ
「うっ!?」
次の瞬間、腕の影が引き裂かれエドゥの手がもげる。
「うぁあああああ!!!」
と、ここまで5秒間。
(話には聞いていたが、動くスピードが予想以上だ。あっという間にやられるぞ。)
エドゥは未来視を使い、冷静に分析した。
グググ
(でも、位置が分かってれば、対処は出来る!)
ボォオオオオ
炎が燃え盛る。
「灼来風体掌!」
地面、目掛けて炎がさく裂した。
激しい光が辺りを照らし、デズモンドが影から姿を現した。
「ん?こいつは!?」
影から出てきたのはおぞましくも、可愛らしくもない姿をしたものだった。
それはエドゥも知っている姿。
「マクシモヴィッチ……。」
はっとエドゥは本物の方を振り返る。
マクシモヴィッチはかなり苦戦しているようだった。
「……どうしたの?それで終わり?」
「はぁはぁ、まだまだ……。」
マクシモヴィッチは剣を握る。
(上手く能力がかからない!)
刀身に能力を掛けるが変化が起こりにくいらしい。
今度は目の前の影から現れたマクシモヴィッチを見る。
それは本物と同様に剣を取り出した。
次のビジョンで刀身が変化する。
その金属は何か分からないが、切れ味がかなり増しているようだ。
この場にナタリーがいたら、その金属がアダマンチウムだということを伝えらえただろう。重く壊れない鉱石。
それをマクシモヴィッチの能力で軽く扱えるようにしているのだと。
勿論エドゥがそんなことを知る術はなかった。
(あの剣を破壊する!)
エドゥはあろうことか剣に向かって必殺技を放とうとしていた。
次の5秒で自らの手が折れているのが見えた。
(まずい!)
エドゥの動きが一瞬止まった。
その一瞬が命取りだった。
偽マクシモヴィッチが剣を振りかざす。
ブンッ
剣先がエドゥの腕に掠った。
ブシャアーー
少し掠っただけで大量に流血した。
(まずい、次の5秒を見ないと……!)
ブンッ
エドゥは何とか攻撃を躱す。
5秒後のあらゆる未来が入ってくるが、偽マクシモヴィッチがそれを上回る速度で剣を振りかざしてくるので対応が出来ないでいた。
(剣をはじくことも出来ない。でもこのままよけ続けているのも不可能だ。)
偽者がどんどん元気になっているようにエドゥは感じた。
(ウィリー、本物の方は今どうなってる?)
(どんどん押されているようだね。やはりあの影が本物から力を奪っているんだ。)
(そうだろうな、どんどん姿がはっきりしてきてるもんな…よっと!)
ブンッ、ブンッ、ブンブンブンッ
空を切る音が大きくなってきていた。
「気来風獣掌!!」
カン!
苦し紛れに放ったエドゥの必殺技を偽物は剣でいとも簡単にはじく。
「灼来風獣掌!!」
更に炎を加え威力を上げる。
ブォン
これも防がれる。
(ん?待てよ。)
エドゥの脳裏に電撃が走った。
ゴニョゴニョゴニョ
エドゥはウィリーに話しかける。
(何だって!?確かに理屈は合ってると思うけど、待ってくれ!僕が思うにエドガー君の能力は想像した生物に変身するものだ。単純な生物、例えば獣の手とかだね、それなら問題ないだろう。でも竜みたいに複雑な生物は消費する体力が激しいし、その疲労を右手に全て集めるんだよ!?一日に1回でも危険なものだ。ましてや)
(長い。やるぞ!)
エドゥは右手に力を送る。
想像し、創造しろ。
絶えず巡回する炎の中で再生するもの。
神話の本か何かで読んだ、その生物は……。
ーフェニックスだ!-
エドゥの額に汗が溜まる。
この複雑な生物に変身するにはかなりの体力が持っていかれるようだ。
酸素がかなり薄くなっている気がする。
だが、成功した。
右手が炎鳥の手に変わっている。
「こぉおおおお」
必殺技のために酸素を吸う。
「うっ!??」
目の前がぼやけた。
(だめだ!炎が酸素を奪っていくんだ!そんな中で呼吸なんかできるわけない!)
(一発だけで良い!当ててみせる!)
「灼来……鳳凰……掌!!!!!!」
ドゴォォォォォン
今まで以上の凄まじい炎が偽物を直撃した。
剣が熱に耐え切れず溶ける。
そのまま偽物のマクシモヴィッチが倒れた。
影がデズモンドと分離し、元の持ち主のところへ戻る。
デズモンドは慌ててどこかへ逃げていった。
エドゥはそれを見ることなく立ったまま気絶する。
「……もう終わりだね。」
カーラがマクシモヴィッチにとどめを刺そうとしていた。
(これは……力が戻った!?)
マクシモヴィッチが剣を握る。
「そりゃあ!」
カーラの心臓を目掛けて一突き。
(油断したな!能力を使う暇も与えん!)
刃先がカーラに触れた。
これでとどめだ。
サーッ
一瞬何が起こっているのか分からなかった。
剣先が粉になりこぼれていたのだ。
(この能力は!)
マクシモヴィッチは目の前にいる敵の顔を見る。
「嵌められたか。……いや勝手に勘違いしていただけか。」
「……悪いね。これが僕たちのやり方だから。」
カーラに変装していたシーラが刀身を先から粉々にしていく。
マクシモヴィッチは慌てて剣を引っ込めるが、刀身はほとんど粉々になってしまった。
「これじゃあ使えないか。」
剣を放り投げる。
(全く、これだけはしたくなかったが。)
マクシモヴィッチは構えをとる。
「……悪あがきしても無駄だよ。」
「悪あがきかどうかはやってから決める。」
コォォオオオオ
マクシモヴィッチが呼吸をする。
それはエドゥの風体掌の一連の動きとまったく同じだった。
ビリビリビリ
マクシモヴィッチの周りに電気が走る。
シーラはただその光景に驚いていた。
「……何だよそれ?お前の能力は錬金術だろ?」
「これは古代から伝わってきたなんとかって禁術だ。あんまり上手く扱えないからな、降参は早めにしてくれよ!」
シーラがマクシモヴィッチに触れようとした。
ビリビリビリ、バチッ
周りにある電気がシーラを襲った。
「痛っ!」
シーラは慌てて手を引っ込めた。




