✟「オーバーロード」2/4
「これは一体どういうことだ!!」
ハーシュは果汁が消えたことに気付いた。
(あり得ない、一体どうやって消したのだ‥‥‥。)
ハーシュは苛立ちを感じていた。
「攻撃が止んだぞ!今のうちに押さえろ!」
生き残った暗殺者たちがハーシュに襲い掛かる。
「説明しろ!何故今あれを使った!!」
「…れ。」
「何?」
「黙れといった。」
ハーシュが暗殺者たちに触れる。
触られた者たちが次々と地面に倒れていった。
既に息を引き取っているのが見て分かった。
「接近戦はまずい。殺されるぞ!」
「じゃあどうする?遠距離で攻撃するか。」
「多分無駄だろうな。奴は洗礼を受けている、つまり不死身だ。」
「それが最期の台詞でいいな。」
ハーシュが手を伸ばした。
「うっ。」「ぐはっ。」
暗殺者たちは寒気を感じる。
ドタ、バタ
次々と暗殺者たちは倒れていった。
(くそ!こうなったらこの手で片っ端から魂を集めるまで!)
ハーシュが歩き始めた。
それから少し時間が経った頃。
ハーシュの目の前にラルフが現れた。
「おっと、あなたは?」
「時間が惜しい、お前に構ってる暇はない。」
ハーシュはラルフに手を伸ばす。
「おっと!」
ラルフは片膝をつく。
「はぁあああああ!!!」
ハーシュは能力を強める。
「何故だ!何故能力が効かない!」
ラルフは起き上がる。
「残念。あと少し早ければ僕は一溜まりもなかったでしょう。」
「まさか、お前があの果汁を取り込んだのか……。」
「その通り。僕はあなたが崇拝するアレと同等の存在となったのです。今ここにいる僕は既に♣の7のラルフ=ビョルケルではない。そう、この姿こそ“オーバーロード”
これからはロード・メーティスそう名乗らせてもらいましょう!」
ラルフ、ロード・メーティスがその真の姿を現した。
紫の怪しい煙がメーティスを覆う。
「その姿は!?」
{あなたでこの力を試すのも悪くない。}
メーティスは血液のように赤く紫が散りばめられている鎧を纏っていた。
メーティスが手を出す。
すると本が姿を現した。
{まずは、小手調べに}
本から剣が飛び出してきた。
「本当に厄介なやつが来たなぁ。」
ハーシュがメーティスの首元目掛けて手を吹き飛ばした。
{さぁ。どんどん来てください。殺す気で来ないと僕があなたを殺します。}
「この!?」
メーティスがハーシュの腕をいとも簡単にはじいた。
{さぁ、次はこれです。}
本から銃が飛び出してきた。
バババババババババ
ハーシュに銃弾が次々と撃ちこまれていく。
「うぉおぉおおおお」
{おっと。}
ハーシュが能力を解放し、銃を壊す。
{なるほど、そんなことも出来るのか。伊達に一組織のリーダーをしているわけじゃないんですね。}
「くそっ!何故今日に限って邪魔ばかり入る!」
{邪魔?ハハハ、別に邪魔する気はないですよ。}
「どういうことだ!?」
{僕はこの力を試したいだけです、アレの復活は勝手にやってください。}
「なら他を当たれ!魂には鮮度がある、早いうちにあと2人、能力者を殺さねばならんのだ!」
{勘違いするなよ。僕はやってもいいとは言ったが、やれとは言っていない。}
「どういうことだ。」
{お前ごときの都合で、僕の予定を狂わせるな。ということです。}
「狂人の相手などしている暇はない。」
ハーシュは地面に能力を発動させる。
メーティスの足元が陥没していく。
「はぁああああ!!!!」
ハーシュはさらに追い打ちをかける。
周りの木が次々とメーティス目掛けて落ちていく。
「今のうちだ。来い、デズモンド!」
{無駄なことを、時間稼ぎにしかならないというのに}
メーティスが這い上がってくる。
{逃げられましたか‥‥‥。}
既にハーシュの姿は消えていた。
メーティスを覆っていた紫の瘴気が消え、元のラルフの姿に戻った。
(凄い、この力をもっと使いこなせれば僕は頂点に立つことが出来る!)
ラルフは武者震いする。
(とりあえず、まだこの力は未熟だ。しばらくは厄介になりましょうか。)
ラルフは来た道を引き返し、ハルトムートのところまで引き返していった。
まるで何事もなかったかのように。
「遅かったな。それでどうだったんだ。」
「えぇ、きっと満足いくと思いますよ。」
2人の前に宮本が現れた。
「あのダークエルフはどうした?」
「逃げられた、だがまた必ず戦う機会があるだろう。」
「でも結果的に良かったと思いますよ。聖剣はあそこにあるんですから。」
「あれか‥‥‥。なぜ取りに行かない。」
ラルフはこれからのことを説明する。
「なるほど、ではここで奴らを待っていればいいということだな。」
「えぇ。」
(聖剣を手に入れろ。)
ラルフの脳裏に言葉が聞こえる。
(そうしたら、もうお前に敵はない。この世界を支配しろ。)
ラルフは何事もないかのように振舞っていたが、頭の中に黒い靄がかかっていた。
「皆?無事?」
一方、エドゥ達は合流地点で集合していた。
「グォオオオオオオオオオオ!!」
未だ黒い煙があがる山から咆哮が聞こえる。
「相棒、追ってくると思うか?」
「分からん。だけど、予想以上にダメージを与えることは出来たようだな。」
「とはいえ、時間があれば回復するだろうな。」
マクシモヴィッチが会話に入ってきた。
軽く自己紹介を終え、これからのことを話し合う。
「山の守り神、シャシャシャか。その神様を呼び出す方法を知っているのが老人だとその木は言ったんだな?」
「サンシャシャな。バビチェフって名前だから君のおじいさんかと思ったんだが、何か知っていることはないか?」
「はぁ。」
マクシモヴィッチが深呼吸をする。
「いつかこうなるとは思っていた。よし、今から俺の家に向かう。」
「やっぱり関係があるんだな!」
「全てはそこで話す。」
「分かった!」
エドゥの声が弾む。
その一方でマクシモヴィッチはどこか暗い表情をしているように見えた。
だが、その理由を尋ねることは出来なかった。
「おい、お二人さん。あんま長居は出来ねぇみたいだぜ!」
ピザファットが指を指していた。
その方向には‥‥‥
「見つけたぞ!高潔な魂」
暗殺者たちが向かってきている。
「皆こっちだ!ついてこい!」
エドゥ達はマクシモヴィッチの後に続く。
暗殺者たちを振り切りエドゥ達は長老たちがいた山より低い集落へとたどり着いていた。
「待った。止まって!」
エドゥが先行するマクシモヴィッチを止める。
「どうした?」
エドゥの目には不吉なヴィジョンが映っていた。
ザーザー
次の瞬間、無数の鉄の針が雨のように上から降る。
「……何もないのになんで立ち止まったの……?」
「大丈夫。問題ないわ、既に2人はマークしてあるんだから。」
集落から二人の影が見えていた。
「くそっ!こんなことしてタダでは済ませないぞ!」
ダークエルフの戦士たちが二人を睨んでいた。
「……ちっ。動くなって言っただろ。」
「まぁまぁ、シーラ。約束を破るなんていけないわね。」
ニョキニョキ
「きゃあああ。」
1人の女性が突然叫びだす。
喉元から何かが出てこようと皮膚を突き破ろうとしていた。
「待て!すまない!ちゃんと言うことを聞く!だから止めてくれ!」
「……カーラ姉ぇ。どうする?……」
「そうね。じゃあ許してあげましょう。その代わりやってもらいたいことがあるの。」
エドゥ達は集落の入り口までやって来ていた。
「大丈夫だ。少なくとも5秒の間だけど。」
「ここでじっとしていても話は進まない。行こう!」
門に到着した。
「どうぞ。入ってください。」
門番が門を開ける。
「相棒。暗殺教団のやつがどっかに隠れてるんだよな。」
「あぁ、どうやらここにいる人たちは何も知らないらしい。被害を最小限にするために最速で倒さないといけないな。」
全員が門を通り、集落に入った。




