✟「閉ざされた森」2/4
「どうなってんだ?」「勝手にポケットが伸びてくぞ!」
周りが騒いでいるのとは対照的にエドゥ達は静かに事の成り行きを観察していた。
「相棒、気付いたか?」
「あぁ、あの細身の男の方。人差し指を動かしてる。」
「あいつ、何かしらの能力を持ってるぜ。」
「あぁ、あっちの大男も能力者の可能性があるな。」
ポケットの中から財布が出てきた。
「あれ!!あたしの財布!」
人混みの中から声が聞こえた。
「おぉ!やっぱり持ってたな。」
「くそ!!こうなったら!!」
盗人が大男に襲い掛かる。
「何から何まで選択をミスってるぜ、お前さん。」
大男が高らかに笑う。
「最強、最高、究極無敵。天下無双のこの俺に挑もうなんざ。百年早ぇぜ。」
「何!」
盗人の動きが止まった。
これまでただ突っ立っていただけの細身の男が盗人の体を掴んでいた。
「不思議、不可思議、摩訶不思議。」
そのまま細身の男は盗人を地面に押さえつける。
「イテテテテ!放せって!放せよ!」
周りからパチパチと手を叩く音が鳴り響いた。
「よし!よくやったミステリン!おーい誰でもいい!教会に連行してくれ!」
「相棒、結局あの大男の能力は分かんなかったな。」
「あぁ、あの細身の方の能力も結局分からなかった。」
「分かったのは名前だけだな。」
「ミステリン。本当に本名か?まぁどうでもいいか。」
「相棒~。俺っちいいこと思いついたぜ。」
「おい、何をするつもりだ・・。」
エドゥの声が届く前にピザファットは大男たちの元へと駆け寄っていた。
「いやぁ~。凄かったぜ、今の。超能力みてぇだな!」
「ん?何だ、何だ?お前さんは盗人の仲間か?」
「あー。いやいや。そいつとは何にも関係がねぇよ。俺っちはピザファットっていうんだ。この街で探偵をしているんだぜ!」
「おー!こいつは失礼した。俺も名乗らねばなるまい。」
大男は大きく息を吸う。
「最強、最高、究極無敵。天下無双のバーガー=ボンとは、あぁ~俺のことでぇい!」
大男、バーガーは高らかに声を発した。
「ほぉ、俺っちを差し置いて最強を名乗るなんて随分な自信だな。」
よくわからないが、ピザファットの対抗心が燃えたようだ。
「俺は事実しか言わない。なぁ、ミステリン。」
「不思議、不可思議、摩訶不思議!」
「まぁ、というわけだ!」
「全然わっかんねぇぜ!!バーガー!俺っちと勝負しやがれ!」
エドゥは頭を抱える。
「おい、そこまでだ。ピザファット。帰るぞ。」
「相棒!どっちが最強か白黒つけなきゃいけねぇだろ?」
「ガハハハハハ」
バーガーは自信満々に笑う。
「よっしゃあ。そこまで強さに自身があるってならこっちに来い!」
そういうとバーガーは近くにあった机に自分の肘を乗せた。
「ん?超能力勝負じゃねぇのか?」
「おいおい、そんなことしたら世界が滅ぶぜ!腕力勝負といこうじゃねぇか。」
「まぁしょうがねぇな。俺っちの超能力も世界を滅ぼしちまうからな。その腕相撲対決のった!」
ガシッガシッ
ピザファットとバーガーが手を掴んだ。
「相棒!合図頼むぜ!」
「あぁ。」
エドゥは二人の手の上に自分の手を乗せる。
「よーい。スタート!」
エドゥの合図で勝負が始まる。
「ふぬぬぬ。」
「はぁあああ。」
二人の腕が震える。
「おぉおおおお!」
ピザファットが一気に力を込める。
バーガーの手の甲をそのまま机に押し付ける勢いだった。
しかし、自称最強の男。そのまま終わるわけがない。
「おりゃあああ。」
バーガーも一気に力を込め、ピザファットの手を押し返す。
今度はピザファットの手の甲が机に近づいていく。
「ふん!」
ピザファットは手首を曲げ、抵抗する。
そして遂にピザファットの腕が机と平行になった。
だが、まだ負けていない。手の甲は机から離れている。
「おりゃああ!」
ピザファットが上半身を動かし、腕の位置を元の状態にした。
「おいおい!そいつは反則じゃねぇのか?」
「いや。肘をその場から離さなきゃ、いいんだぜ!俺っちはそのルールで今までやって来たからな!」
「そーかよ。じゃあ俺もそのルールでお前を倒してやるぜ!」
グググ
バーガーも自身の体重を前方にかけ始めた。
二人は体を前へ前へと傾ける。
腕に体重を乗せていく。
「なぁおい。肘をその場から離さなけりゃいいんだよな?」
「あぁ。」
「じゃあ、これもありか?」
「何?」
バーガーは肘を机につけたまま、ジャンプした。
そしてなんと自分の体を仰け反らしたのだ。
その巨体、故の重さで机が傾く。
「おいおいおいおい!」
ピザファットの体が浮く。
だが、ピザファットは肘を離さなかった。
「へぇ。中々やるじゃねぇか。」
「当たり前だぜ!俺っちは最強の戦士だからな!」
バキ
バーガーが加えた下方向の力と、ピザファットが元に戻ろうとして加えた下方向の力が机を割ってしまった。
そのまま、机の破片が飛んでいく。
「これ以上は危険だ!止めだ止め終了!」
エドゥがこれ以上は危険だと判断し、二人を止めに入った。
「引き分け・・・だな。」
エドゥは状況を確認する。
ピザファットとバーガーの肘は机から離れていなかった。
そこ以外の机は無くなっていたが、肘の部分だけは残っていたのであった。
「ガハッハハハ」
バーガーは高らかに笑った。
「ピザファット、だったか?気に入った!探偵を止めて、傭兵にならんか?」
「傭兵だと?」
「あぁ、俺は民間軍事会社をやっているんだ。」
バーガーから名刺をもらう。
名刺には“ファット パティ”と記されていた。
「おぉ、ピザにピッタリの名前だな。」
エドゥが名刺をのぞき込み、ピザファットをからかう。
「わりぃけど、相棒は裏切れねぇぜ。」
「そうか・・。まぁ、気が変わったらいつでも来てくれ。その名刺に住所が載ってるからな!」
「あぁ・・・・っとそうだ!」
ピザファットが急に何かを思い出したように手を叩く。
「どっちが最強とか争ってる場合じゃなかったな。傭兵ってのはいくらで雇えるんだ?」
「おぉ。どんな用件で俺たちを雇いたいんだ?」
ピザファットとバーガーは椅子に座り話を始める。
手持無沙汰だったエドゥにミステリンが近づいてきた。
「あぁ、あんたは確か、ミステリンさん?」
「いかにも、わたくし不思議、不可思議、摩訶不思議のミステリンでございます。」
「面白い超能力ですね。」
「ヒヒヒ・・・。企業秘密なので能力は明かせませんが、あれはほんの一端にすぎません。」
「あのバーガーさんも超能力を・・・?」
「えぇ。もっとも、彼と一番長くいる私でも彼が能力を使っているのを見たことがありませんがね。」
ミステリンは薄ら笑いを浮かべる。
エドゥは、本当に能力を持っているのだろうかと首を傾げた。




