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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
❦薄明光線ー超大陸バンギア北西部ー
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❦+Another Story2「太陽は月を照らす」3/4

「レーヴァテイン!!!」


ギランが炎の大剣を握り、エドワール目掛けて振る。




「終わりだ!人を人とも思わない悪魔の所業、ここで断ち切らせてもらう。」


「待て。早まるな!私を殺してもいいことはないぞ!」


ギランの剣がエドワールへと届く寸前。


何かがそれを遮った。


炎が散る。




キュッキュッ




(何だ?)


ギランは再び剣を握り、目の前に現れたものに警戒する。


白い毛に覆われ、暗闇に光る赤い目、耳は後ろに鋭く伸びていた。


巨大な兎型怪人の姿がそこにはあった。


「イートゥー。月に住む兎の名前を関した化け物だ。太陽の君にとってこれ以上ない良い相手だろ?」




キュッキュッ


イートゥーとギランの周りに結界が張られる。


「しまった!!!」


ギランは結界の中に閉じ込められる。




「おっと、これは予想外だった。怪人態の状態で超能力を発動できるのか。面白いな。しばらく観察させてもらおう。」


エドワールは呑気に結界の外から高見の見物をしていた。




ギランの方は結界に閉じ込められてからイートゥー以外の姿を認識することが出来なくなっていた。


「くそっ、あと少しだったのに!!」


キュッキュッ


イートゥーが鳴き声を発し、ギランの方へ跳躍する。


ギランは前転し、その巨体を回避する。


続けて、炎の大剣を握り、振りかざした。




イートゥーがそれを毛深い両手で受ける。


ギランはその様子を観察する。


(レーヴァテインが皮膚に当たる前に、毛で防いでいるのか。)


イートゥーの毛の黒焦げになった部分が抜け落ち、新たに白い毛が生え変わった。


「ふぅ。こいつは疲れそうな相手だ。レオを早く助けないといけないのに・・。」


ギランは背伸びをする。




「アァ、アァ・・・。」


イートゥーが音を出し始めた。


「ギ、ラ、ン・・・。」


イートゥーは笑いながらギランの名を呼び、指を差した。


「何故、俺の名前を・・・。」


ギランは突然のことで動きが止まってしまう。


そのせいで目前に迫る拳に対応が出来なかった。




ギランは後ろに吹き飛ばされる。


(イテテ・・・。しまった。油断した。)


ふと気が付くと目の前にイートゥーの姿があった。




「レーヴァテイン!!」


炎の大剣でイートゥーの打撃を受け止める。


右、左と交互に素早い打撃が放たれた。


片手では上手く捌ききれない。


そのまま剣が勢いよく吹き飛ばされた。




イートゥーがタックルを放つ。


ギランはまともにその攻撃をくらう。




「はぁ、はぁ。」


ギランは倒れた。


内臓が傷つき吐血している。




「ガハッ!!」


追い打ちをかけるように、イートゥーの巨体がギランにのしかかった。




「ボクハ、、ツヨクナッタンダ!アナタ二マケナイクライ。」


イートゥーの言葉がはっきりと聞こえる。


ギランはこの時初めて理解した。


(あぁ、こいつは、間違いなく。)


ギランがイートゥーに語りかける。


「イートゥー、いやレオ!」


イートゥーの動きが一瞬だけ止まった。




「目を覚ませ!!それがお前の求めていた姿なのか??」


「うるさい、この溢れんばかりの力。最高だ!!」


レオは高らかに笑うとギランにとどめをさそうと高く跳躍する。




ー立ち上がれ。決して負けてはいけない。


レオは昔の自分と同じだ。


正義の味方になりたくて、力を欲していた自分と。




「俺は!!!!英雄になる!!!」


昔の自分はとにかく自信にあふれていた。


木の枝を剣代わりにし、皆を守っている英雄だと信じて止まなかった。




自分の村の周辺には盗賊の縄張りがあるらしく、襲われたなんていう話はしょっちゅうだった。


村の長の一人息子であった自分はそれが許せなかった。


だから決めたんだ。


自分は正義の味方になるんだ。そして、村の皆を守りたい。




できることは何でもやった。


近くの森で木登りをはじめた。


朝早く起きて村中を走り、持久力もつけた。




全て正義の味方になるために・・・。




少し、張り切りすぎたのだろうか。


自分は、高熱を出し寝込んでしまった。


村には自分を治せる者がいなかったので専門医がいるパピルスという都市に運ばれ、入院することになった。




自分を担当したのがさっきの男、エドワール=コクトー。


彼は表面上はただの医者だった。


彼は丁寧に私に治療を施し、私は彼にすっかり気を許していた。


私は彼に自分の夢を話したのだ。


正義の味方になるために力を付けていることも。




退院予定日前夜。


風船の割れたような大きな音が私の病室で鳴り響いた。


私はその音に起こされる。


何が起こったのかまったく分からなかった。


明かりへと手を近づけようとしたその時だった。




何かに押し倒され、私はベッドに押さえつけられた。


必死の抵抗も虚しく、私は何かを注射される。




意識を失い次の日、目を開けると悲惨な光景が眼前に広がっていた。


真っ白な病室が赤く塗りつぶされ、生き残っていたのは私だけだった。


ついこの間まで喋っていた患者もすでに原型を留めていない。


私はこれが夢であるに違いないと思った。


今となっても現実感がない。




脳裏に焼き付いて離れないものがある。


パピルスから戻った私に待っていたのは辛い現実だった。


盗賊が村を襲っていたのである。


私は直ぐに皆を守ろうと駆ける。




私は知らぬ間に炎を操っていた。次々と盗賊を追い払っていく。


その時自分はとても喜んだものだ。


村の図書館で読みふけっていた、スーパーヒーローの気分だった。


何故その力が使えるかはその時は分からなかった、神様からの贈り物だと勝手に思っていた。


あぁ、そこで終わっていたら私の物語は始まってはいなかっただろう。




私の能力は決して神から賜ったものではなかった。


その火は私の体を燃やしていく。




あぁ、気持ちが高ぶっていく。


私がよく大声で叫ぶのもそのためだ。


抑えられない炎はやがて・・・。




村を炎の海に包んでいく。


そう、これは神からの贈り物ではない。


悪魔の呪いだったのだ。ー




ギランの皮膚が焦げていく。


その髪は金色へと変貌を遂げていった。




呑気にみていたエドワールの皮膚はカチコチに固まる。


「おっと、これ以上はまずいな。」


彼は、その場から慌てて離れていった。




「顕現、火之迦具土神ひのかぐつちのかみ」


それは神というにはあまりにもおぞましい見た目で。


上空から飛んでくるレオに目もくれず。


眩い光を解き放った。


「クラウ・ソラス」


強烈な光がレオを襲う。


「うっ。」




「一撃必殺。」


眩い光に包まれたレオは、わけもわからぬうちに切り刻まれた。


「ばかな・・・。一瞬で・・・。」


怪人態が解除され、レオは地面に落下する。




「レオ!!」


ギランが能力を解除し、レオを抱える。


「うぅ、ギランさん・・・。」


「良い!喋るな。」


「俺、どうして・・・。」


「クラウ・ソラスは不敗の剣。一度切ったものは必ず破壊する。すまない君を助けるにはこれ以外方法が思いつかなかった。」


ギランの目から涙が流れた。


レオが静かに息を引き取る。




ギランはレオの体を横たわらせる。


「虹色炎舞 ー復活の儀ー」


レオの体の周りを虹色の炎が回っていた。


「炎環 不死鳥」


虹色の炎がレオの体にまとわりつく。




(この技は燃やされたものの一日を切り取り一周させる禁じ手。疑似的なタイムスリップ。レオが怪人になったのが昨日ならもう手遅れだが・・・。一か八かの賭けだ。)


ギランは祈りながらレオを燃やしていく。


「ここだ!」


ギランは炎を消す。



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