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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
●完全閉鎖孤島ーキロネキシアー
7/504

●「様々な思惑」2/4

日光はさらに占い師を照らしていく。

「…だ……の…」

占い師が小さな声でつぶやく。

「何だって?」

「まだ、私の運命の人は現れないのね。」

占い師が一瞬虚ろな顔をしたかと思えば突然動き出した。

「どういうことだ?」

エリアスは占い師に再び細心の注意を払う。

(何故?日光が効かない?)


エリアスはとりあえず、能力を使う。

「無駄よ。とても一直線な色。」

占い師は素早い動きでエリアスの能力を避けた。

「私の前で何回も能力を使ったのは失敗だったわね。自分の周りの重力を変化させる、それがあなたの能力ね。」

(まずい、能力がばれた。)

エリアスは内心焦ったが、顔には出さなかった。

「私の前では、そういう駆け引きは無駄よ。全て筒抜けなの。」

占い師は呆れてエリアスの方を見る。


エリアスは重力を下げ、宙に浮く。

「また逃げる気?」

占い師は翼を広げ、エリアスに近づいた。

「くらえ!」

次の瞬間、一気に重力を上げる。

「!?」

エリアスと占い師は空中から一気に地面に落下する。

「ぉぉぉぉおおお」

凄い風圧が二人にかかる。


突然占い師の体が紫に光りだす。

なんとその体は分解され、姿を変えたのであった。

無数の蟻が地面に落ちていく。


エリアスは呆気にとられた。が、慌てて重力を下げて、ゆっくりと地面に降りた。

無数の蟻は地面に着くと、何事もなかったかのように集合して再び元の姿に戻った。

「今のは危なかったわ。」


以前読んだ本の内容を思い出す。

蟻はその外骨格と受ける空気抵抗の大きさからどの高さから落ちても、落下の衝撃で死ぬことはないんだととか。

(普通の攻撃はもちろん高低差の攻撃も効かない。しかも、変身した瞬間、能力の射程距離外にちゃっかり出ているところをみると…)

(詰んだな。)

脳裏に敗北の二文字がよぎった。


「いい絶望の色ね。無駄な抵抗をしなければ楽に殺してあげるわ。」

占い師が笑いながら、近づく。

(ここで終わりか。)

自分の終わりを感じる。

占い師の鋭い爪が襲う。


グサッという鈍い音がした。

そして、血が噴き出してきた。

「!!爺さん!!」

目の前には血まみれの老人が立っていた。


「ゴホッ、よく見ておるか吸血鬼!」

爪は心臓を貫いていた。

「これで、、、一矢報いることができたかのぉ。」


声にならない悲鳴が辺りをこだまする。

「離れろ!痛い!」

占い師が苦しみもがくとフードが外れる。

白い雪のような肌に真っ赤な目をもった吸血鬼は、まだ顔つきが幼い少女だった。


「おぉぉぉぉぉ」

エリアスは叫ぶ。

(まずいわ!重力が!)

彼女は力を感じ取って、一歩後ろに下がる。

あぁ、神がエリアスの味方をしたのだろうか。

先程エリアスの捨てた剣が一度上空に上がったあと、なんと今まで落下していたのだ。

グサッと占い師の左足を切断した。


「ブラックアウト!」

エリアスは間髪入れず、追撃をする。


重い力がのしかかる。

「エリアス!いいの?あなたの能力は自分にも効果があるんでしょ?」

占い師が苦しみながら叫ぶ。


「爺さんは命をかける覚悟を見せてくれた!だから、俺もこのくらいの覚悟はしなくちゃいけねぇだろうが!」

エリアスは凄まじい迫力でそう言い放つ。


二人に重力が重くのしかかる。

まず、二人は立つことが出来なくなった。

そして、次第に視界が暗くなっていった。

「やm、、ろ!!!」

占い師が力に逆らおうとする。

「やめたほうがいい、特訓もしていないお前がこれ以上無理をしないほうがいい。」

「う、う」

やがて占い師は意識をなくし、地面にたおれこんだ。


「爺さん!しっかりしろ。」

占い師を捕縛すると、すぐに老人の元へと駆け付けた。

「も、う、良い。」

老人は力を振り絞って声を出す。

「あきらめるな、必ず助けてやる!」

「自分、の、命、じゃ、、、もう、、助から、、ん、、こと、、、ぐら、い、わか、、る。」

老人の体温が下がっていくのを肌で感じ取った。

「仇は、、とれたようじゃの。感、、謝するぞ、、、息子よ、、今、、行く、、ぞ。」

老人の目から光が失われた、彼はまさに今ここで死んだのである。

彼の死に顔はとても穏やかだった。


エリアスは地面を掘ると、老人と息子の灰を埋葬した。

(二人でゆっくり過ごしてください、、、神の加護がありますように、、、)

(、、、神か、、、本当にそんなものがいるのだろうか、、、こんなにも悲惨な状況で救いなんて結局なかった、、神がいなかったら、教会の意味は?)

墓の前で色々と考えてしまう。

(とりあえず、任務は果たそう。私には目的がある。その目的に近づくためには周りに認められなくては)


占い師を見る。まだ、気絶しているようだが、切断されたはずの左足が生えてきていた。

(こいつ!無敵か?とりあえず、教会に連れて行って助力を求めよう。)


「げほぉ、げほぉ。」

占い師が意識を取り戻す。

体が先ほどのように紫に光りだす。

(しまった、変身能力か!)

咄嗟のことで対処が遅れた。

占い師はスライムになって、地面に潜っていった。

「エリアス、私をここまで追い詰めたのは褒めてあげる。もう会うことはないかもだけど、私の名前とあなたの未来を真剣に占ってあげる。」

声が辺りに響く。

「まず、私の名前はカレン=プレガディオよ。しっかり覚えておいて。そして、あなたの任務だけど、あと少しのところで何者かに邪魔されて失敗するわ。あなたの色が教えてくれている。誰かまでは分からないけど。」

「なっ!」

「これはあなたとおじいちゃんに対する精一杯の敬意よ。信じるかはあなた次第。最後にもう一つサービス。少女は東の鉱山へと向かっているわ。」「あなたの色は不思議ね、弱いはずなのに力強い赤といったところかしら。仕事じゃなければ運命の人がどうか試せたのにすごく残念だったわ、、。」

それ以上カレンの言葉は聞こえてはこなかった。


辺りはすっかり明るくなっていた。

エリアスは身支度を済ませると、最後にもう一度お墓参りをして、村を後にした。


シュゼットが朝日を浴びて目を覚ます。

左足に激痛が走る。応急手当に使った布から血がしみだしていた。

それを見ていると、昨日のことが思い出される。

過去の憎しみに囚われ、ローブの男を倒すことばかりに気がいき。

部下を大勢失い、結局男に逃げられてしまったことを。

あの時、何をすれば最善だったのか自問自答を繰り返す。

そして、次はどうするべきかも悩んでいた。

任務と私怨の間に挟まれてどっちつかずではやはりだめだと彼女は考えている。

(確かに、任務は大事!教会やエリアス様に恩を返したい。でも、次いつあいつと出会えるか分からない、今ならまだあの近くにいるかもしれないし。)

そんな感じで悶々としていた。


(ごめんなさい。)

散々悩んだ末に彼女は復讐を優先することにした。

馬の進路を変え、今来た道を引き返す。

(まずは、滝の周辺の地図を作らなくちゃ。)


丁度崖の橋が架かっているところに着いた時のことだ。

前方に何者かが立ちふさがっていた。

馬の手綱をとり、その場にいるものに声をかける。

「そこにいると邪魔です!どいていただけませんか?」

「…」

その人物は女性だった。なにやら様子がおかしい。

腰から、何かを取り出す動作をする。

それは鋭利な刃物であった。

即座に能力で刃物を消す。すると、女性は慌てて刃物を探し回った。

5秒後、急に現れた刃物に驚いて手を放してしまう。

隙だらけの女性にシュゼットが攻撃をすると、意識を失ってしまった。


(敵だったようだけど、何故一人でここへ?)

シュゼットは女性の持っていた荷物を調べる。

(!!これは、抵抗軍の指令書!それと、これは人形?)

以前巷の噂になっていた、絵本のキャラクター。

そのキャラクターを模した人形だった。

「へぇ。」

シュゼットもその絵本を読んだことがあった。

人形を触る。細かいところまでよく出来ていた。


「…ス。」

突然頭の中に多くの言葉が流れてくる。

「コ…。」

「コロス!!」

「ニンゲン!コロス!」


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