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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
❦薄明光線ー超大陸バンギア北西部ー
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❦「鍛」3/4

長時間戦い、エドゥはいよいよその場に倒れ込んだ。


「二ヒヒ、まだ休んでいいとは言っていないよ。ほらほら立ち上がって。」


男の姿が漸く鮮明になってきた。


「マーリン。」


その男は両目の色が違っていた。


「師匠って呼んでも構わないよ。」


その男は自分がマーリンだということを認めニヤニヤ笑っていた。


(マーリン=ルイスか。縮めてリンス。はっ!いかんいかん。真面目に考えなければ。)


エドゥの脳裏にふとイイ感じの名前がよぎる。


「マルス、と呼ぶのはどうだろう。僕の知っている神様の名前だ。」


「良いね!師匠より神様みたいに扱ってくれた方が楽しい。」


「マルス、君の性別はどっちなんだ?」


「最初に言ったと思うけど私は猫の妖精だよ。性別なんて変えたい放題さ。ただ、男性の方が力が強く、女性の方が魔力が高い。そして、猫だと素早さが早いからその時次第で変えているだけさ。」


「最初の方で喋らなかったのは何故です?」


「喋らなかったんじゃない、君に言葉が届いていなかっただけさ。この島は特別でね、慣れるのに時間がかかるんだ。」


エドゥは能力を発動してみる。


すると、先ほどまで出来なかった獣化が出来るようになっていた。


「今日の修行はここまでだね。能力が使えなくなった状況での戦闘訓練をこれから昼にやっていこう。」


エドゥは聞き逃さなかった。確かに今、マルスは昼といったのだ。




エドゥはこの島についての質問をマルスにぶつける。


「マルス、この島は一体?」


「この島は、理想郷、アヴァロン、ティルナノーグ、常世の国、色々な名前で呼ばれている、この世に存在しない島。」


「あなたは本当に教会の関係者なんですか?」


「ここにはリンゴしかないからね、お金を稼ぐにはあそこが一番いいよ。」


「最初に、色々わざが使えなかったのは何故です?」


「さっきも言ったけどこの島は色々特別なんだよ。もっと強くなれれば、制約は受けない。弱いものは楽園に入ることを許されないってことだね。」




エドゥの質問に一通り答えるとマルスは今後の予定を話した。


「まずは昼の鍛錬。基礎体力の向上を目標にしよう。そして夜は魔法の訓練をする。」


「夜はいつまで訓練をするのですか?」


「強くなりたいなら一晩中やるべきだよ。安心してほしい、夜は意識だけ魔法で持ってくるから肉体的な疲労はないはずだよ。」


「魔法というのは僕みたいな素人でも使えるものなのですか?」


「二ヒヒ、面白いこと言うね。既に使っているじゃないか。」


エドゥは首を傾げる。魔法という概念はよくファンタジー小説などで呼んだことはあるが、ここにくるまでにそれらしきものは使った覚えがない。


「windy」


マルスはそう唱えるとエドゥ目掛けて風を吹かせる。


エドゥは勢いに押されて数歩後ろへと下がった。


(この感覚は・・・。)




「分かったかい?君の必殺技は魔法によるものだってこと。」


「なるほど・・・つまり気来風体掌はオリジナルじゃなかったってことか。」


エドゥは肩を落とす。彼にとってそれはかなりショックだった。


「いや、そうでもないよ。風の魔法を使えるものは少ない。風の魔法はエルフ族に代々伝わっていた秘術なんだよ。私も昔エルフに教えを請ってやっと会得したんだ。」


マルスは少し悲しそうに語っているようにエドゥには聞こえた。


エルフの歴史を考えれば大体その理由が推察できる。


(あぁ、きっとそのエルフ達はもう・・・)




「さぁ、いったん街に戻ろう。また時間がたったら迎えに行くよ。」


「ありがとうございます。でも、なんでここまでしてくれるんです?」


「君の未来に興味があるからさ。」




エドゥを送り返すと、マルスは島の奥へと進んでいった。


「嘘をついてしまったかな。」


「彼は器足りえるのか・・・。」




 エドゥは探偵事務所へと戻っていた。


島から戻ったエドゥの体は快適そのものだった。


上から押しつぶされるような感覚が消え、今にも宙に浮いてしまうのではないかと心配になるくらいだった。




エドゥは扉を開ける。


するとそこには依頼人が来ていたのだ。


依頼人は、エドゥ達がこの大陸にやって来た時にお世話になった漁船の親父さんであった。


「よぉ、相棒さん。久しぶりだな。」


「お久しぶりです。おやっさん。」


エドゥは親父さんに挨拶をするとピザファットに話しかけた。


「依頼の内容は?」


「これから聞くところだったんだよ。ナイスタイミングだな。」




エドゥ、ピザファットの二人は漁船の親父さんと向かいあって座った。


夫人が紅茶を3人分淹れてくれる。


「それで、依頼というのは。」


「実は最近漁師仲間の間でな、密漁者がいるという噂があるんだ。」


「密漁者か、そいつは許せねぇな。」


「あくまでも噂だ。教会にも掛け合ったが、被害が本当にあるのか定かではないとか言われちまってな。」


「ったく、起こってからじゃ遅いってのになぁ。」


「じゃあ依頼は、密漁者が本当にいるかどうかの調査ってことですね。」


「あぁ、頼めるか。」




エドゥ達は書類をまとめる。


「それじゃあ頼んだぜ。」


親父さんを扉まで送る。




「やったな。仕事が来たぜ。」


「あぁ、早速明日の早朝から聞き込みをしよう。」


「良かったですね。仕事が入って。」


夫人がニコリと微笑みかけてきた。


「相棒。多分だけどあの親父さんを連れて来てくれたの、夫人のおかげだぜ。」


「まじか、絶対に依頼を成し遂げないといけないな。」




その後、エドゥはピザファットと明日の予定をたて、飯を食い、風呂に入り歯を磨き、寝床に入る。


そして、エドゥは深い眠りに入った。




気が付くとエドゥは昼に来た島に立っていた。


体が慣れるまでその場にじっとしている。




漸く体が上手く動かせるようになった時だった。


目の前にマーリンが立っているのがうっすらと見えてきた。


エドゥは驚き後退する。




「二ヒヒ、結構時間がかかったね。」


「驚いた。最初からそこに?」


「そうそう、いつ君が気付くかってね。」


「何だか、不思議な感覚だ・・。」


「君の意識だけをここに呼んでいるからね。」


エドゥは体を動かしてみる。


「しかし、これで魔法の力を鍛えることが出来るのか?」


「魔法に大事なことはイメージだよ。さぁ、早速始めよう。」




マーリンが手招きをする。


「さぁ、この白線の前に立って。」


エドゥは言われる通りに動く。


「まずは魔力の継続の鍛錬をしよう。必殺技を打って向こうにある蝋燭の火を消してごらん。」


エドゥは遠くに一本の蝋燭があるのを確認する。


マーリンは思い出したかのように条件を付けくわえる。


「あぁ、そうだ。勿論、能力の使用は禁止だよ。」


「はい!」


エドゥは深呼吸をする。風体術を習ったときのことを思い出す。


「気来風体掌」


エドゥは風を飛ばす。




「んー。炎が靡いてもいないねー。よしもう一回。」


「はい!」


エドゥは再び風を放つ。


やはり、蝋燭の火は消えなかった。




「一回能力使っても良いよ。」


マーリンが笑う。


エドゥは試しに右手を獣に変える。


「気来風獣掌!!」


今度は先程とは違い激しい風が吹き荒れる。


それは周りの木々が揺れていることからも明らかだった。


蝋燭の炎はしっかりと消えていた。




「今蝋燭の炎を消せたのは距離が近かったから。じゃあ、あそこの蝋燭の炎は消せる?」


マーリンが指さしたその先には先程より遠い場所にある蝋燭が確かにあった。


遠すぎて目を凝らさなければいけないほど蝋燭は小さく見える。


「流石にあの距離は届かないのでは?」


エドゥは正直に思った事を口に出す。



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