❦「鍛」2/4
「そんなことはないよ。島の人たちは、最初は警戒していたけど、最終的に仲良くなれたから。」
(相棒・・・。)
ピザファットは優しく語るエドゥを見て少し申し訳ない気持ちになった。
エドゥ達はそれからこれまでのことを搔い摘んで説明していった。
自分たちの目的、そして探偵を始める経緯など。
正直、依頼人にここまで話していいものかということもあったが、彼らの口は止まらなかった。
「なるほどね。あたいがそのAH社の人間かもとは考えなかったの?」
「まぁ、そん時は逆に利用するだけだと思うぜ。本部はどこだ!とかな。」
「それに、君は戦闘系の能力じゃないだろう?」
ナタリーは工具箱を取り出し、中にある鉄に触れる。
すると、鉄は一瞬で組みたたり、銃がその手に握られていた。
「能力は使いようよ。どんな相手であろうがあまり油断しない方が良いわ。」
エドゥ達に銃口を向けるとナタリーはそう言い放った。
二人は手を頭の後ろで組んだ。
「あぁ、悪かった。銃口をおろしてくれ。」
「まぁ、あたいはただの鍛冶屋だから。安心して。」
ナタリーが銃を分解した。とても慣れた手つきだった。
「それにしても、あたい達って結構上手いことやっていけそうじゃない?」
「そうかもしれないね。」
「まぁ、そうだよな。」
改めて3人は握手を交わした。
ふと、エドゥが時間を確認する。
「相棒、稽古か?」
エドゥが頷く。
「何か、用事があるの?」
「あぁ。少しでも強くなるためにね、稽古をつけてもらうことにしたんだ。」
「へぇー。強くなりたいなら新しい鎧を作りましょうか?」
「それは嬉しいけど、出来るのか?」
「ピザファットに渡したのは試作品なのよ。だからちゃんと改良できて材料が集まったら作ってあげる。」
「俺っちが持っているこの鉄球を相棒に渡すってのは?」
「変身者は登録されているから、それは無理ね。」
「鎧が使えない場合もあるだろうから、とりあえず今は稽古するしかなさそうだな。ピザ、仕事はお前に任せた。」
エドゥは支度を済ませ、教会へと足を運んだ。
カロリーナが話をつけてくれたらしいので、エドゥは教会の一室に通された。
(何か怖いな。急に毒ガスとか吹きかけられたりしないよな。)
エドゥは部屋を見回し、怪しいところがないかを確認する。
にゃあ
「何だ?」
急に鳴き声がしたので、エドゥは驚き、声のする方を見る。
するとそこには紫がすこし混じったような白い猫の姿があった。
(まさか、この星にも猫がいるなんて。飼い猫かな。でも見た感じ首輪はしていないようだけど。)
エドゥは猫に手招きをする。
「おいで、おいで。」
猫はエドゥの方へ寄っていくと抵抗せずに抱かれた。
「ごめーん。お待たせって!えぇ!」
カロリーナが部屋に入ってくるや否や大きな声で驚いていた。
「あぁ、ひょっとして君の猫だった?」
「いや、あのね。その猫は・・・。違くて・・・。」
歯切れの悪い返事がくるので何事かと思っていると急に猫の体重が増えていく感じがした。
(ん?手が疲れたかな?)
しかし、手がしびれただとか、気のせいとかではなかった。
確かに猫は徐々に大きくなっていたのである。
エドゥは猫を床に降ろそうとする。
それを察したのか猫は大きくなりつつある手を伸ばしエドゥを離さないように抱きつき返してきた。
猫はそのまま大きくなり人間の女性の姿をとった。
「フフフ、驚いた?」
「ちょっと!!」
エドゥの視界が急に塞がれる。
おそらくカロリーナのせいだろう。
「マーリン!服を着て下さい!」
エドゥの後ろから声が響いた。
「二ヒヒ、ちょっとしたサービスだよ。」
マーリンと呼ばれた女性はエドゥの手から離れる。
しばらくするとカロリーナが手を離した。
エドゥの目の前にはフード付きのローブを着ているマーリンの姿があった。
「マーリン=ルイス、ケットシーだよ。一応ここの責任者。」
「エドゥ=ベレンです。よろしくお願いします。」
こほんとマーリンが咳払いをする。
「それで、どうして強くなりたいの?君は探偵だって聞いてるけど。」
「それは、力が必要だから。」
「そういう時は教会を頼るべきじゃない?」
「いつでも借りれるわけじゃないからかな。」
「私は別にいいんだけどねぇ。ただ個人にそこまでしちゃうと上からどやされちゃうんだよね。」
確かにとエドゥは納得しかける。
(しかし、あの時みたいに目の前で命が散らされるのを黙ってみたくはないな。)
「とはいえ。」
マーリンが笑顔で語る。
「個人的に特訓するなら問題にはならない。どう?わたしの弟子にならない?」
唐突な申し出にエドゥは少し考える。
(元々強くなるためにここに来たんだ。)
「強くなれるなら、是非お願いします。」
エドゥはマーリンに頭を下げた。
「フフフ、わたしの特訓は厳しいよ!」
「強くなれるなら。どんなことにも耐えて見せます。」
「へぇー。何でもすると。」
「はい!」
マーリンは常に両目を閉じていた。それがエドゥは不思議でしょうがなかった。
しかし、その謎は直ぐに解けることになる。
マーリンはゆっくりと目を開いた。
「!?」
一瞬エドゥに凄まじい悪寒が走る。
全てを見透かされたかのような気がした。
エドゥは知らず知らずのうちに右手を変化させ、攻撃態勢をとっていた。
「はっ!」
エドゥは直ぐに構えを解き、手を元に戻した。
「いいよ。いいよ。ふむふむなるほどね。」
マーリンはまじまじとエドゥを見る。
その目は左右異なる色をしていた。右は太陽のように赤く、左は月のように黄色かった。
「驚いた?ねぇねぇどっちの色が好み?」
エドゥは左右の目を交互に見る。
「左目の方が僕は好きかな。」
一瞬マーリンの表情が柔らかくなった気がした。
「面白いね。君にぴったりの特訓を思いついたよ。」
マーリンはニヤリと笑うと
「本当になんでもするんだね?」
と言い、エドゥを手招きした。
エドゥが近づくとエドゥとマーリンの足元が光る。
そのまま二人は光に包まれ、部屋から消えていった。
カロリーナは一人取り残されていた。
(それにしても私が鍛えるつもりだったのに、マーリンがやるって言いだした時は驚いたなぁ。)
光が弱まるとエドゥは行った事もないような島に自分がいると気づいた。
周りを見てから左手で地面に触れる。
この島の記憶を覗こうとした。
「痛っ。」
しかし、手がはじかれピリピリと痺れる。
不思議がっていると目の前から男がやって来る。
男は突然エドゥに殴りかかってきた。
瞬時に右手の能力を発動し応戦しようとする。
しかし、右手は人間の手から全く変わらずエドゥはそのまま吹き飛ばされた。
(どうなってるんだ。能力が使えない!)
いつもと違うのは能力だけではなかった、重力もいつもと異なっていた。
エドゥは慌てて服につけている重りを外す。
重力は地球の時と同じかあるいはそれ以上にエドゥの体にかかっていた。
(能力が使えない。なら、風体術しかない。)
エドゥが呼吸を整える。
しかし、呼吸で風を操れる道理はない。
エドゥは一方的にボコボコにされた。




