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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
●完全閉鎖孤島ーキロネキシアー
6/492

●「様々な思惑」1/4

Various speculations

(!?感触がない)


布団をめくる。そこにエリアスの姿はなかった。


(おかしいわね、確かにここに色が見えるのに)




老人はホッとため息をつく。


息子のためとはいえ自分のせいで人の命が失われたとあっては、目覚めが悪い。


「早く息子について教えてくれ!」


老人は占い師に縋る。


「うるさいわね!まだエリアスを見つけてないんだから、情報はあげないわよ。」


占い師は鬱陶しそうに占い師を突き跳ねる。




「なるほど、善良な民の弱みを握ってこの私を始末しようというわけですね。」


上から声がする。見上げると、そこにエリアスがいた。


足を天井につけ向こうもこちらを見上げていた。




「なるほどね。能力を使っていたんだぁ~。」


占い師はエリアスに微笑みかける。


「大変よねぇ~部下を全て失って、寝込みまで襲われるんですものね。」


「!!お前だったんだな、あの村で村人と私の部下をめちゃくちゃにした奴は!!」


エリアスは激昂し、丁寧な普段の口調はどこかへ行ってしまった。


「ふふふ、そっちの口調のほうが好きよ♡」


占い師は老人の方を振り返る。


「そうそう、息子さんのことだけど、ここにいるのよ。」


「なんじゃと!」


「入ってきていいわ。」


占い師は手招きをする、すると一人の青年が部屋に入ってきた。


あぁぁぁと老人は感極まった。


「本当にわしの息子なのかい?」


老人は息子に近づこうとした。


「待て!様子がおかしいぞ!」


エリアスが能力を使い、青年を地面に這いつくばらせた。


「何をするんじゃ!」


老人はエリアスに怒る。


「よく見ろ!そいつは人間じゃ…ない!」


エリアスは占い師を警戒しながら、床に着地し、部屋の電気をつけた。




明かりがつき、老人は青年を見る。外見は老人の息子に違いなかったが、目は赤く、人の血がこびりついている牙が生えていた。


「お前、その姿は一体?」


老人が慌てふためく。


「ニンゲン!チヲスワセロ!!」


エリアスの能力に吸血鬼は逆らい、老人に今にも襲い掛かりそうだった。




「だぁめ♡感動の再会に水を差しちゃ!」


占い師はエリアスを挑発する。


(くそ!ひとまず老人を安全なところに移動させなくては!)


「おじいさん、いったん安全なところに避難を!」


エリアスは老人に呼び掛ける。


「安全なところなんてどこにもないわよ。大人しく死になさい。」


占い師が指をパッチンとならす。


するとどこからか大量の吸血鬼が家の周りに湧いて出てきた。




「へへへ、キョウハゴチソウダゼ!」


「アッチノワカイオトコカラ、ウマソウナニオイガスル!」




「おじいさん!俺に摑まれ!」


エリアスは老人に手を伸ばす。


咄嗟のことで老人は動けなかったが、エリアスは大声を出して老人を奮い立たせた。


エリアスは老人の手を掴むと能力を使う。


「何をするつもり?捕まえなさい!」


占い師が吸血鬼を使ってエリアス達を抑え込もうとした。


次の瞬間、エリアスと老人は宙に浮いた。


そして、屋根を突き破り、遠くへと飛んで行った。


「何をしているの!とっとと追いなさい!」


占い師は吸血鬼たちに命令し、2人が飛んで行った方向へ向かわせた。




「うおぉぉぉ」


老人は宙に浮いていた。


「どうなっておるんじゃ!!!」


「落ち着いてください!そこの草むらに着地します!足をゆっくりおろして!」


「こうかのぉ!」


老人はゆっくり足を伸ばす。


二人は無事地面に着地した。


「おぬし!この力はいったい?」


「話は後です!敵が近づいています!急いで!安全なところに!」




くわぁぁぁと追ってきた吸血鬼たちが口を開きエリアスめがけて飛んできた。


「ひれ伏しなさい!」


エリアスは能力を使う。


「オ、オモイ。」


吸血鬼が地面にはいつくばる。


と、同時に老人が苦しみだした。


「うぅぅぅ。」


(どうなっているんだ?吸血鬼にしか能力を使っていないのに!)


エリアスは急いで能力を解いた。




「!?ナンダ、キュウニカルクナッタゾ!?」


「しまった!」


吸血鬼たちは隙をつきエリアスの首元をガブリと噛んだ。


「離れろ!」


剣を振りかざす。が、一瞬の判断で剣を捨てた。


(危ない!)


「あっれぇ~。攻撃しなくていいの?血吸われてるよ。」


占い師も追い付いてきた。




「爺さん!すまん!」


エリアスはそういうと吸血鬼たちを吹き飛ばした。


「うげぇ。」


同時に老人が吹き飛ばされる。老人はエリアスの能力で無事地面に着地した。




「はぁはぁ」


息が荒くなっていくのをエリアスは感じる。


(敵の能力は恐らくダメージを共有する能力!だとすると敵を倒そうにも爺さんにまでダメージがいってしまう!何か能力の条件があるはずだ!それさえわかれば敵を倒せるかもしれない。)


「爺さん!あの占い師に何かされなかったか?」


「いてて、何もされとらんよ!強いて言うなら一方的に占われたことぐらいじゃ!」


「占われた?そういえば部下を失った村でも占いが流行っていたな。占いの時に何かされたとかは?」


「いや、何もされずにわしのことをドンピシャであておったわ。」


「ん?」


老人が何かを言いかける。


「どうした?」


「いや、占いとは関係ないんじゃが。」


「どんな些細なことでもいいから、言ってみてくれ!」


「手を触られたんじゃよ。」


「手?」


エリアスは考える。


(手に触れると発動する?いや、ひょっとすると手だけじゃなくてもいいのかもしれない。)




「もう諦めたら?」


占い師は相変わらず余裕ぶっこいていた。




(条件が正しかったとして、どうやって解除する?時間か?距離か?)




吸血鬼が襲い掛かってくる。


(くそ!考えてる暇がない!)


「爺さん!もう一度能力を使う!地面に伏せて、できるだけ上からの力に逆らわないようにしてくれ!」


「分かった!」


老人はそういうと頭を地面につけてうつぶせになった。




「落ちろ!」


エリアスが能力を使う、吸血鬼たちは上から押しつぶされているように、地面に這いつくばった。


「マタダ、マタオモクナッタゾ」「クルシイ...」


「爺さん!すまない、もう少し耐えてくれ。」


エリアスは老人の方を振り返る。


「わしの準備はできておるよ、遠慮なくやってくれ!」


老人は全然、苦しんでいなかった。




(まさか?)


エリアスは老人をみて閃いた。


「爺さん!ずっとそのままの姿勢でいてくれ!」


そして、動けない吸血鬼を刺した。


老人の方を振り返る。


やはり老人は何ともなかった。




「ギャアァァァ」「イテテ」


刺した吸血鬼だけではなく、周りの吸血鬼も悲鳴をあげている。




「これで、はっきりしたな。」


エリアスは占い師を見つめる。


「お前の能力は、ダメージの共有!発動は手または体に触ること。そして、目で見なければダメージの共有は起こらない!」


「…」


占い師は無言を貫いていた。


「別に全部あっていなくても構わないさ。このまま死んでもらうまでだ。」


エリアスが注意を払いながら占い師の近くまでよる。


「待ってくれ、わしの息子を助けてくれ!」


老人が叫ぶ。


「すまないが、吸血鬼になった者を元に戻すことはできない、ひどいようだが、やつらはもう人間の血を吸いつくす怪物だ。これ以上擁護すると教会を敵に回すことになる。」


「そんな!」


絶望する老人をエリアスは放っておいた。


(恨むなら恨んでくれ、人に恨まれるのは慣れている。)


「吸血鬼については、本でだが、読んだことがある。曰く強大な力と再生力の引き換えにいくつかの弱点があるのだとか。銀の武器の攻撃では再生は働かず、ニンニクと十字架を嫌う。そして、やれやれ全然寝ていないというのにお前のせいで朝を迎えてしまった。」


夜が明け、朝日が辺りを照らす。


吸血鬼たちが、光を浴び灰となった。


老人は立ち上がり息子の方を見る。息子は先程のひどい形相がなくなっていた。


「どうして、じいちゃんがここに?そうだ!思い出してきたぞ、出稼ぎのために町にいって、占いをしたんだ、それから…そうだ、いきなり首を噛まれて、あぁ!俺は血の渇きに飢えて!多くの人を殺したんだ!


そして、遂にじいちゃんをも!俺は殺そうとしてしまった!ごめんなさい、ごめんなさい。」


息子は今までの出来事を全て思い出し、懺悔をする。


「落ち着け!息子よ。悪いのはお前ではない!悪いのは、人の息子を勝手に吸血鬼に変えた占い師じゃ。お前は何も悪くはない。安心して天国に行くのじゃ。お前の敵はわしがとる!」


老人は息子をなだめると、息子は


「ありがとう、じいちゃん。少し、気が楽になったよ。これ以上俺みたいな被害者を出さないようにして。」というと、灰になった。

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