❦+Another Story1 「邂逅」3/4
彼女は多くの自分を指揮し、ネズミの縄張りへと入っていった。
その戦力の凄まじいこと。
エドゥが必死こいて一匹を倒したのに、彼女の前にネズミは10秒と立っていられなかった。
カロリーナは指揮の片手間にエドゥと会話していた。
「すごい、こんなに一瞬で。」
「原始的な戦いでは、戦闘力は武器効率と兵力数なの!」
カロリーナは得意げに答える。
(なるほど、ランチェスターの法則のことを彼女は言っているんだね。)
ウィリーが関心する。
(教会にはこんなに強い戦士がいっぱいいるのか?)
エドゥは自分の無力さに打ちひしがれる。
「終わったみたいね。」
カロリーナは巣にいた9匹のハネジネズミの怪物を片づけた。
火のついた無数の弓矢で貫かれたものや、鈍器でボコボコに殴打されたもの、全て数の暴力によって行われていた。
「はい!撤収~。おつかれさま~。」
カロリーナは自分たちを影の中に戻す。
カロリーナは後ろにいた教会の集団に、10体のハネジネズミの死体の回収を命じた。
「よっしゃあ。さぁ、エドゥ。一杯いきますか。」
「あぁ。」
エドゥとカロリーナはポータム・ポート街にある酒場で飲んでいた。
保護した猫はピザファットに預け、後の手続きも全部ピザファットに任せた。
「ふふふ。あなたって面白いわね。」
「そうかな?あんまり言われたことなかってけど。」
「いいえ、面白いわ。一人のはずなのに何人もいるみたい。」
「ははは、そんな馬鹿な。」
冷や汗をかいた。目の前の女性に何もかも見透かされている感じがしてきた。
エドゥは教会の話を聞きだしたいと思っていた。
しかし、カロリーナにどこまで話せばいいのか。
そんなことを悩んでいた。
ひとまずウィリーに相談する。
(教会の一番偉い人に会うにはどうすれば良い?)
(教皇に会いたいだって?それは無理じゃないかな。よくて司祭までだよ。)
(しかし、それじゃ、俺の目標が達成できない。)
(エドゥ、君の目標が何かは知らないけど、司教以上の階級の人物にはそう簡単に会えない。)
(カロリーナはどれぐらいに位置するんだ?)
(さぁ?よく分からないけど司祭じゃないかな?)
(司祭?女性の?)
(何を言っているんだい?)
(あぁ、いや、何でもない。)
エドゥはここが地球ではないことを忘れていた。
ところどころ似た部分はあるものの、必ずしも一緒ではないのだ。
話を戻す。
(それで、司祭の根拠は?)
(彼女に羽がないから。)
(羽?詳しく教えてくれ。)
(教会には階級があるんだ。上から教皇、枢機卿、大司教・司教、司祭、助祭、修道士・修道女、一般信徒っていった感じの。そして、教会は自らが神様に認められた組織だと主張している。神の使いとしての意識が強いんだよ。だから、司教以上の階級は、背中に羽が生えている天使と呼ばれる種族しかなれないんだよ。)
(ふーん。なるほど。)
「なーに?さっきから黙っちゃって。」
カロリーナがこちらを覗き込んできた。
「いや、何でもないんだ。」
二人はそのまま2軒目にいった。
「ぷっはー。いやぁ、その飲みっぷり!気に入ったわ。エドゥ、いやエドって呼ばせて頂戴!」
(それでいくと、君はカロリーになってしまうが、それでもいいのか?)
エドゥは酔った勢いで、彼女の名前を考える。
(カロリー、カロ、リー、リーナ)
「じゃあ、リーナ。って呼んでも良いかな?」
「いいわね。気に入ったわ。何か今日一日で凄く仲良くなったと思わない?」
「同感だよ!リーナ、良かったらまた一緒に飲みにいかない?」
「OKよ!エド!私はこの街の教会にいるから、いつでも会いに来てね!」
二人は友達になった。
その後、二人はそのまま別れた。
エドゥが事務所に戻ると既に夜が更けようとしていた。
「ただいま。」
「相棒~。遅いぜ~。こんな時間まで何してたんだよ!」
くんくんとピザファットがエドゥのにおいを嗅ぐ。
「うわ、くっせ~。今まで飲んでたな!」
「あらまぁ。まぁ、水でも飲んでください。」
ホーカンソン夫人から水をもらう。
その日はそのまま寝ることにした。
次の日、起きたのは午後だった。
エドゥの目覚めがいつもより遅かったことでこの日、二人の運命を大きく変えるだろう出来事が起こる。
「何だ!この強さは!」
「相棒、ここは逃げ一択だろ!」
「だめだ、あの子を守らないと!」
「邪魔をしないで下さい!」
その日、特に依頼も入っていなかったので、エドゥとピザファットは外をぶらぶらと歩いていた。
そのとき、たまたまエドゥは向こう側から走ってきた少女とぶつかってしまったのだ。
二人は地面に手をつけた。
「いったた。ごめんなさい。」
「いえいえ。・・・。」
エドゥは少女の方を見る。
格好はタオルを頭に巻き、少女らしからぬ質素な作業着。
ガテン系といった感じの少女だった。
「すいません。あたい急いでるんで。」
少女が慌てて立ち上がる。
エドゥは少女を見て、どこか懐かしい感じがしていた。
(似ている。あの人に…。)
懐かしい故郷の記憶。
待ってくれと声をかけたい。もう少しこの子と喋りたい。
エドゥの心はざわついていた。
「待ちなさい!」
突然男の叫び声がした。
「・・・しまった。追いつかれた!」
少女の顔に恐怖の表情があらわれた。
ピザファットが気を利かせて少女に近づく男の前に立ちはだかった。
「何ですか?あなたは?」
男がいら立った声でピザファットに話をする。
「おいおい、穏やかじゃねぇな。俺は、ピザファットっていうんだ。あんた名前は?」
「エリアス=サージェント、これは教会の任務なのです。部外者は下がっててもらいましょうか。」
「そうはいかねぇな。!!うおっと。」
ピザファットは急にその場で動きを止め、その体はまるで上から押しつぶされているかのように沈んでいった。
「うぐっ、こいつ能力者だ!?」
ピザファットは地面に這いつくばっていた。
(ウィリー、奴は何者だ?)
エドゥは、ウィリーに説明を求める。
(彼は、エリアス=サージェント、彼もまた妖精だ。しかし、その実力は折り紙つきだ。教会の双璧の一人と呼ぶ者もいる。能力は重力操作、だったかな。)
(双璧?もう一人は?)
(シャルロッタ=スベンション、能力は、、、えっとなんだったかな?)
エドゥはエリアスに向かって話しかける。
「彼女に何をする気だ?」
エリアスはハーっと大きくため息をつく。
「簡単な話です。教会の本部に同行してもらうだけです。」
エドゥは少女を見る。
「それだけで、あんなに怯えるか?」
ピザファットが横槍を入れる。
「そこは知りませんよ。私は彼女を連れていくだけです。散っていった仲間たちのためにもこの任務は成功させます。どんな手を使おうと。」
エリアスがピザファットにかける重力を上げる。
ピザファットの悲鳴が聞こえる。
「人質のつもりか。」
エドゥは怒気を帯びた顔つきになった。
「さぁ、彼女を渡しなさい。」
エリアスが手を伸ばす。
エドゥは少女の方を振り返る。
「お嬢さん、依頼してくれ。」
エドゥの咄嗟の言葉に少女は呆気にとられた。
「俺は探偵だ。依頼さえあれば、動ける。」
(まて、エドゥ、彼と敵対すれば教会を敵に回すことになる。)
ウィリーがエドゥを止めようとする。
(分かってる。でもあの怯え方尋常じゃない。)
エドゥは目の前の少女を何としてでも助けてやりたいと思った。
目の前の少女は、他人の感じがしないのだ。




