❂「Walking on thin ice」3/12
「ここは雪が覆っている“白い砂漠”。」
クレハの声は重く、どこか神妙だった。
目の前に広がるのは、ただの雪原ではない。
白砂と氷が混じり合い、風が巻き起こすたびに粉雪が舞い上がる。太陽の光が反射して、あたりはまるで宝石をちりばめたような幻想的な輝きを放っていた。
「この一帯だけ、どうして寒いんでしょうか。」
ハルナの疑問にクレハはウンウンと頷く。
「よくぞ聞いてくれた。」
言葉と同時に、画面に古びた石碑の映像が映し出される。
風雪に晒されながらも、その表面にははっきりと刻まれた紋章と文字が見えた。
「ここは神話の中心地。ルマーヤの初代国王と、神獣“ダイ・ムリアー”が最初に、そして最後に戦った激戦区だと言われている。」
言葉の一つひとつが、風の唸りと共に深く胸に響いた。
この地が、単なる過去の戦場ではないことを物語っていた。
「その激戦故に、マナの流れが歪み、今でもこの地域だけが異常な寒冷に包まれているのです。」
神と獣の戦いの余波。
それは数百年を経てもなお、この地に爪痕を残していた。空間そのものが歪んでいるような、不安定な気配が漂っていた。
エドゥ達は、ついにその境界線を越える。
――白い砂漠に、第一歩を踏み出した。
足元でシャリ、と乾いた音が鳴る。雪とも砂ともつかぬ白が、彼らの足跡をすぐに覆い隠していった。
第3ステージ、開幕。
§
「チョット〜!!全然動かないデスヨ!」
砂が舞い上がる灼熱の大地で、ミステリンが不満をあらわに叫んだ。陽炎が地平線を揺らめかせる中、故障したマシンのそばで彼とアイスマンは呆然と立ち尽くしていた。焼けつくような風が頬を撫でるたび、希望も少しずつ削られていく。
「仕方ない、このマシンは諦めて歩いて行こう。」
アイスマンはため息混じりにそう言いながら、太陽に照らされた地面を見下ろす。靴底がじりじりと焼かれるような感触に、先の長さが思いやられた。
「歩くって、何日かかると思ってるんデスカ!?」
ミステリンが肩を落とす。
その時だった、かすかに遠くでエンジン音が聞こえた気がした。
ブロロロロ……。
その音は次第に大きくなり、視界の先にバギーの影が浮かび上がる。砂煙を巻き上げながら、頼もしげな四輪の獣がこちらに向かってきていた。
「ん。あれを奪っていくというのはどうだ?」
アイスマンが唇の端をわずかに持ち上げる。合理的で、冷徹な提案だった。
「まぁ、仕方がないですネ!」
ミステリンも苦笑いでそれに応じる。状況はすでに“選ぶ”余地を与えてくれていなかった。
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