❂「Walking on thin ice」2/12
その姿は、まるで砂漠に舞い降りた幻の鳥のようだった。
両手に構えた二振りの刃が、煌めきの中で交差する。
_/_/──双牙裂刃──_/_/
「ワッシャー!!」
声とともに、鋼が交錯する一閃。空を切る音さえ聞こえなかった。ただ次の瞬間、サンドワームの巨体に幾重もの斬撃痕が走り、無残にも崩れ落ちた。
一瞬、時間が止まったかのような静けさ。
そして、舞い散る砂と血の霧の中に立つナディアが、何事もなかったかのように刀を収める。
「……これでいい?」
その声音には、誇張も、誇示もなかった。ただ事実を伝えるような静けさがあった。
「ああ、充分だ。」
エドゥが口元を引き締めながら答えた。彼の心には、ただ一つの言葉が浮かんでいた──“信頼”だ。
§
やがて、砂煙も落ち着き、マシンのエンジンが静かに目を覚ます。計器が青く光り、出力ゲージが安定の数値を示していた。
「エドゥ、あれを見てくれ!」
カリムの声に、エドゥが顔を上げると、遠くの丘の上にゴールの標識が見えた。旗が揺れ、係員が手を振って誘導している。微かにスピーカー越しの声が届いた。
「──第2ステージ、ゴール地点。バギーはこちらへどうぞ。」
マシンは静かに走り出し、誘導に従って停車した。
「2ndステージゴール、おめでとうございます! 順位は電光掲示板にてご確認ください!」
陽炎に揺れる掲示板を見つめながら、三人は目を凝らす。
23位 エドゥ=ベレン
24位 カリム=バディア
……
「まだまだ、優勝は狙えるな。」
エドゥが口元で笑う。
「ああ……ただ、アイスマンたちがまだ来てないのが少し気になるが……待ってもしょうがない。先に進もう。」
§
「さぁ、ここで第3ステージの説明です。」
ハルナの明るい声が、冷たい風にかき消されるかのように響いた。
「第3ステージは氷雪ステージ〜〜。」
眩しい光が画面いっぱいに広がった瞬間、エドゥの目に飛び込んできたのは一面の白。先ほどまで足元を焼き尽くしていた灼熱の砂が、いつの間にか凍てつく白銀に姿を変えていた。
エドゥは思わず目を細める。
「……ここ、本当にさっきと同じ場所なのか?」
空気が違う。肌を刺すような冷気が、装備の隙間を縫って身体の芯まで入り込んでくる。
吐いた息は白く、風に流されてすぐにかき消えた。
「急激に寒くなってきましたね。」
ナディアが肩をすくめ、軽く震えながら呟いた。
彼女のローブの裾が風に翻り、まるでその身ごと氷の世界に引き込まれていくかのようだ。
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