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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
❂熱砂の挑戦者たちー超大陸バンギア北東部「ローゼ砂漠、ルマーヤ」ー
500/505

❂「青星の民」11/12

「ナディア! こっちだ!」


カリムは彼女の手を強く引き寄せ、砂を蹴立てながらバギーへと疾走した。

荒れ狂う風が二人の身体を叩き、乾いた砂粒が頬を刺す。

だが、耳の奥ではもう砂の音も風の音も聞こえない。

聞こえるのは、自らの心臓が激しく叩きつける鼓動――そして、背後から迫る“死”の足音だけだった。

バギーが目前に迫る。


「どうする!? あと一人しか乗れない!」


操縦席と助手席――それだけ。

逃げるには、誰かが取り残される。

絶望が、喉元までせり上がったそのとき――


_/キング・オブ・モンスターズ/_/:


風を裂く轟音と共に、エドゥの背に漆黒の翼が広がった。

エドゥは一気に跳躍し、バギーの上空へと舞い上がる。


「ナディア、乗って!」


カリムの叫びに、ナディアは一瞬だけ目を見開くと、すぐに小さく頷き、しなやかな動きで助手席に飛び乗った。


ブロロロロ――!


エンジンが吠え、バギーは砂漠を裂くように猛進した。

背後から響くのは、獣じみた怒りの声。


「「「シュピーーー!!」」」


奇声が夜空にこだまし、無数の外骨格生物たちが獰猛に追いすがる。


「エドゥ、あれは一体!?」


カリムは叫びながら振り返る。

異形の群れが砂煙の向こうに蠢いていた。


「正直分からない!さっき戦った個体が、仲間を呼んだんだろう!」


「どこまで行けばいい!?」


「――あともう少し、まっすぐだ!」


エドゥの声に導かれるように、カリムはアクセルを踏み込む。

そして――

砂煙の向こう、彼らの行く手に現れたのは、陣形を組む王国の兵たちだった。

剣を手に、盾を構え、緊張に研ぎ澄まされた男たち。

その中から、銀髪の騎士――クリストファーが、ただ一歩だけ前に出た。

鋭く、それでいて温かな視線が、カリムをまっすぐに捉える。

そして、無言で、軽く頷いた。

“来い”――その一瞬で、すべてが伝わった。

カリムは拳を握り締めた。


「もう少しだ……!」


バギーが兵士たちのもとに滑り込むと同時に、クリストファーの号令が飛んだ。


「よし、全員放砂!」


兵士たちは一斉にホースを構え、乾いた砂を高圧で吹きつけた。

噴き出す砂の奔流が、追撃してきた異形たちに降り注ぐ。


「「「シュロロロ!!」」」


化物たちは必死に砂をかき分け進もうとするが、クリストファーは冷静だった。

鋭く指揮を飛ばす。


「全員、急いで後退しろ!」


兵たちは統率のとれた動きで一斉に後退を開始した。

エドゥとカリムたちも、それに続く。

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