❂「青星の民」11/12
「ナディア! こっちだ!」
カリムは彼女の手を強く引き寄せ、砂を蹴立てながらバギーへと疾走した。
荒れ狂う風が二人の身体を叩き、乾いた砂粒が頬を刺す。
だが、耳の奥ではもう砂の音も風の音も聞こえない。
聞こえるのは、自らの心臓が激しく叩きつける鼓動――そして、背後から迫る“死”の足音だけだった。
バギーが目前に迫る。
「どうする!? あと一人しか乗れない!」
操縦席と助手席――それだけ。
逃げるには、誰かが取り残される。
絶望が、喉元までせり上がったそのとき――
_/キング・オブ・モンスターズ/_/:
風を裂く轟音と共に、エドゥの背に漆黒の翼が広がった。
エドゥは一気に跳躍し、バギーの上空へと舞い上がる。
「ナディア、乗って!」
カリムの叫びに、ナディアは一瞬だけ目を見開くと、すぐに小さく頷き、しなやかな動きで助手席に飛び乗った。
ブロロロロ――!
エンジンが吠え、バギーは砂漠を裂くように猛進した。
背後から響くのは、獣じみた怒りの声。
「「「シュピーーー!!」」」
奇声が夜空にこだまし、無数の外骨格生物たちが獰猛に追いすがる。
「エドゥ、あれは一体!?」
カリムは叫びながら振り返る。
異形の群れが砂煙の向こうに蠢いていた。
「正直分からない!さっき戦った個体が、仲間を呼んだんだろう!」
「どこまで行けばいい!?」
「――あともう少し、まっすぐだ!」
エドゥの声に導かれるように、カリムはアクセルを踏み込む。
そして――
砂煙の向こう、彼らの行く手に現れたのは、陣形を組む王国の兵たちだった。
剣を手に、盾を構え、緊張に研ぎ澄まされた男たち。
その中から、銀髪の騎士――クリストファーが、ただ一歩だけ前に出た。
鋭く、それでいて温かな視線が、カリムをまっすぐに捉える。
そして、無言で、軽く頷いた。
“来い”――その一瞬で、すべてが伝わった。
カリムは拳を握り締めた。
「もう少しだ……!」
バギーが兵士たちのもとに滑り込むと同時に、クリストファーの号令が飛んだ。
「よし、全員放砂!」
兵士たちは一斉にホースを構え、乾いた砂を高圧で吹きつけた。
噴き出す砂の奔流が、追撃してきた異形たちに降り注ぐ。
「「「シュロロロ!!」」」
化物たちは必死に砂をかき分け進もうとするが、クリストファーは冷静だった。
鋭く指揮を飛ばす。
「全員、急いで後退しろ!」
兵たちは統率のとれた動きで一斉に後退を開始した。
エドゥとカリムたちも、それに続く。
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