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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
❂熱砂の挑戦者たちー超大陸バンギア北東部「ローゼ砂漠、ルマーヤ」ー
499/505

❂「青星の民」10/12

「でも、約束する。このレースに勝って――女王に君たちの意見を伝えると。」


「だから君たちも約束してくれ。レースが終わるまでは――戦争を起こさないと。」


しばしの沈黙があった。

その場にいた誰もが、次の瞬間の空気を固唾を呑んで見守っていた。

コーデリアは驚いたようだった。

眉がわずかに動き、その口元がほんの一瞬だけ、迷いを見せる。


「……一つだけ、条件を呑んでいただければ。良いでしょう。」


カリムは無意識に息を詰めた。喉がごくりと鳴る。

――来た。どうせ無茶を言われるに決まっている。

その予感が、心の奥で警鐘を鳴らす。


「ナディア、こちらへ。」


彼女の声が静かに響くと、一団の後列から、一人の少女が前へと歩み出てきた。

まだ若いが、芯のある目をしていた。

その足取りはためらいなく、しかし慎重で、砂を踏む音さえ計算されているかのような気品があった。


「彼女を、あなた方と同行させてください。」


言葉は穏やかだったが、否応なく“条件”の重さを感じさせた。


「レースの勝率を上げるための補佐、我々との連絡係――そして、あなた方が裏切らないかどうかの監視役、と思っていただければ。」


一瞬、カリムの脳裏にエドゥの顔が浮かんだ。


(エドゥのことも、当然ながら把握しているだろうな……)


少しだけ迷ったが、それ以上深く考えても意味はなかった。

選択肢は、初めから決まっていた。


「わかった。――呑もう。」


カリムはしっかりと頷き、ナディアに軽く視線を送った。

彼女は何も言わず、ただそのまま、静かにカリムの横に並んだ。

二人の影が、夕陽に長く引き伸ばされ、ひとつに重なる。

そしてカリムは、ナディアと共に、静かにその場を去っていった。


§


しばらくして、砂塵の向こうから人影が現れた。

遠目にも、見慣れた歩き方だった。


「エドゥ!」


カリムは声を張り上げ、駆け寄ろうとした。


「説明させてくれ!」


だが、その表情を見た瞬間に、言葉が喉で凍りついた。

エドゥの顔には、いつになく鋭い緊迫感が浮かんでいた。


「説明はあとだ! 急いで逃げるぞ! バギーに走れ!!」


「!? な、何が――」


言い終える暇すらなかった。

地面が、鈍く唸るように揺れた。

地鳴り――いや、何か“巨大なもの”がこちらに向かって突進してくる振動だった。

振り返ると、砂の地平線の向こうから、うねるように現れる無数の影。

二足で歩き、外骨格の鎧をまとった、昆虫のような異形の生物たち――。

その眼光は暗く、燃えるような殺意を宿していた。

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