❂「青星の民」9/12
「そして二つ目は”能力の強さ”です。」
カリムはわずかに眉をひそめた。
彼の“念写”という能力について知っている者は極めて少ない。
見せびらかす類の力ではないし、自ら語った記憶もなかった。
(……これは、鎌をかけているだけかもしれない。)
警戒心が、一瞬で理性を支配した。
だが、その次の言葉が、それを打ち砕く。
「貴方はご自身の能力を、ただの“念写”とお考えかもしれませんが、」
「その能力には秘められた力があるのです。」
その一言で、疑念は吹き飛んだ。
ただのはったりではない――彼女は、確かに知っている。
「秘められた力? 一体どんな……」
問いかけようとした刹那、コーデリアは軽く手を上げ、それを遮った。
「それは、貴方様が我々の味方になる、つまり王族たちと敵対するという決断をしていただかないと、お話しできません。」
はっきりとした線引き。
それは甘い勧誘ではなく、明確な“選択”だった。
カリムは眉間に皺を寄せ、考える。
「決断の前に、2つだけ質問しても良いかな。」
コーデリアは微笑み、静かに頷いた。
「1つ目。僕を王にするために、どういう方法をとるのかな。」
「戦争による王族たちの追放です。」
迷いのない即答だった。
その言葉は、まるで炎の矢のように胸に突き刺さる。
確かに女王の政治は歪んでいた。
だが、戦争という手段が、本当に唯一の答えなのか。
「話し合いで解決できないのだろうか。」
「すでに我々は試みました。しかし、無駄でした。」
コーデリアの瞳に、諦念と、それでもなお消えぬ希望の光が同居していた。
「――しかし、貴方様の声ならば、あるいは届くかもしれません。」
「……OK、2つ目。仮に僕が王になったら、何をして欲しいのかな。」
「弱者をお救いになってくだされば、他に要求はありません。」
その答えは、あまりにも簡潔だった。
だが、それだけに重かった。
彼女たちがどれほどの切実さで「生きること」だけを願っているのかが伝わってくる。
カリムは小さく息を吐き、空を見上げた。
赤黒い雲が、黄昏の中でゆっくりと流れている。
その色は、まるでこの国の血と怒りの象徴のようだった。
「わかった。じゃあ、さっきの提案に回答するよ。」
言い終えたときには、すでに決意は固まっていた。
「――僕は君たちの仲間にはならない。」
言葉は静かだったが、鋼のように揺るぎなかった。
「そうですか、残念です。」
言葉とは裏腹にコーデリアは特に落胆している様子ではなかった。
今年もありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。




