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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
❂熱砂の挑戦者たちー超大陸バンギア北東部「ローゼ砂漠、ルマーヤ」ー
498/506

❂「青星の民」9/12

「そして二つ目は”能力の強さ”です。」


カリムはわずかに眉をひそめた。

彼の“念写”という能力について知っている者は極めて少ない。

見せびらかす類の力ではないし、自ら語った記憶もなかった。


(……これは、鎌をかけているだけかもしれない。)


警戒心が、一瞬で理性を支配した。

だが、その次の言葉が、それを打ち砕く。


「貴方はご自身の能力を、ただの“念写”とお考えかもしれませんが、」


「その能力には秘められた力があるのです。」


その一言で、疑念は吹き飛んだ。

ただのはったりではない――彼女は、確かに知っている。


「秘められた力? 一体どんな……」


問いかけようとした刹那、コーデリアは軽く手を上げ、それを遮った。


「それは、貴方様が我々の味方になる、つまり王族たちと敵対するという決断をしていただかないと、お話しできません。」


はっきりとした線引き。

それは甘い勧誘ではなく、明確な“選択”だった。

カリムは眉間に皺を寄せ、考える。


「決断の前に、2つだけ質問しても良いかな。」


コーデリアは微笑み、静かに頷いた。


「1つ目。僕を王にするために、どういう方法をとるのかな。」


「戦争による王族たちの追放です。」


迷いのない即答だった。

その言葉は、まるで炎の矢のように胸に突き刺さる。

確かに女王の政治は歪んでいた。

だが、戦争という手段が、本当に唯一の答えなのか。


「話し合いで解決できないのだろうか。」


「すでに我々は試みました。しかし、無駄でした。」


コーデリアの瞳に、諦念と、それでもなお消えぬ希望の光が同居していた。


「――しかし、貴方様の声ならば、あるいは届くかもしれません。」


「……OK、2つ目。仮に僕が王になったら、何をして欲しいのかな。」


「弱者をお救いになってくだされば、他に要求はありません。」


その答えは、あまりにも簡潔だった。

だが、それだけに重かった。

彼女たちがどれほどの切実さで「生きること」だけを願っているのかが伝わってくる。

カリムは小さく息を吐き、空を見上げた。

赤黒い雲が、黄昏の中でゆっくりと流れている。

その色は、まるでこの国の血と怒りの象徴のようだった。


「わかった。じゃあ、さっきの提案に回答するよ。」


言い終えたときには、すでに決意は固まっていた。


「――僕は君たちの仲間にはならない。」


言葉は静かだったが、鋼のように揺るぎなかった。


「そうですか、残念です。」


言葉とは裏腹にコーデリアは特に落胆している様子ではなかった。


今年もありがとうございました。

来年もよろしくお願いします。

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