表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
❂熱砂の挑戦者たちー超大陸バンギア北東部「ローゼ砂漠、ルマーヤ」ー
497/506

❂「青星の民」8/12

空を切る風が、彼女の髪を揺らす。

黄昏の陽が、赤く地平線を焦がしていた。


「女王は国力を強化することにしか関心がなく、怪しげな兵器に大量の投資をしていました。」


その声は、まるで記録された歴史の断片を淡々と読み上げるかのようだった。

感情を排し、それでも言葉の奥には拭えぬ怒りと哀しみがわずかに滲む。


「度重なる増税に人民の暮らしは貧しくなるばかり。」


「耐えかねた者たちは国を出て、組織を作りました。」


「それが我々、“青星の民”なのです。」


カリムは目を伏せた。

乾いた砂の地面に、影が長く伸びていた。女王の政治が、すべての民に幸福をもたらしていないことは、彼自身痛いほど理解していた。

王宮に生まれながら、彼は幼い頃からこの国の「歪み」を目にしていた。


差別。貧困。腐敗。


それらは、王家の煌びやかな天蓋の影で、誰にも気づかれぬまま静かに、確実に広がっていた。

スラム街に沈殿した絶望を、彼は知っていた。

だからこそ、名もない市井の人々にこっそり手を差し伸べていた。

見返りなど求めず、ただ、その苦しみを少しでも和らげたかった。


――だが、それでも。


目の前にいる彼ら――この“青星の民”には届かなかったのだ。


「私たちは安心して暮らしたいだけなのです。」


静かに語られたその願いには、装飾も誇張もなかった。

あまりにも素直で、あまりにも切実だった。

コーデリアの瞳には、一片の偽りもなかった。

少なくとも、今のカリムには、そう見えた。

カリムはゆっくりと顔を上げ、彼女の方を見つめた。

そのまなざしは、まるで真実を見極めようとする審判のようだった。


――その願いが、間違っているとは思えなかった。


だが、一つだけ。

どうしても、引っかかるものがある。


「君は以前、僕が真の王様だと言ったよね。」


問いかけると、コーデリアはその長い睫毛をわずかに伏せ、静かな敬意をにじませて頷いた。


「えぇ、その言葉に嘘偽りございません。」


「理由を聞いても?」


「そうですね、大きく2つあります。」


その声には、まるで預言を語る者のような確信があった。

それは単なる忠誠心ではない。

理性によって形作られた、強固な信仰だった。


「1つは、弱者の気持ちを理解できるということです。」


「そして理解だけではなく、実際に行動にも起こしていらっしゃった。」


言われた瞬間、カリムの胸に、淡い震えが走った。

誰かに認められたいと思ったことはなかった。

善意は、ただ目の前の悲鳴に反応した結果にすぎない。


――それでも。


心の奥に潜んでいた何かが、確かに報われたような気がした。

ほんのひとときだけ、彼は目を細めた。

ブクマ登録、高評価お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ