❂「青星の民」7/12
「コーデリア、だったよね。」
その名を口にすると、彼女は微笑んだ。
淡い、しかしどこか深い意味を含んだ笑みだった。
「名前を覚えていてくださるなんて、光栄です。」
カリムは一歩も動かぬまま、目を細めて彼女を見つめた。その視線の奥には、決して消えることのない警戒心の火が灯っている。
「こんなところで……一体何をしているのかな。」
口調はあくまで柔らかかったが、その内には張り詰めた緊張があった。砂漠の乾いた空気のせいではない。
彼の声の奥にある畏れ――それは、目の前の存在に対する本能的な忌避であり、理屈では片づけられない警鐘だった。
「まだ警戒されていますね、無理もないことですが。」
コーデリアは穏やかに笑ったが、その声音には鋭利な刃のような真実が潜んでいた。
「まぁね。正直、得体が知れないっていうか……近づきたくないっていうか。」
「えぇ、えぇ、当然ですとも。」
言葉の端に、どこか楽しげな響きが混じる。まるでこちらの反応を予期していたかのように。
「ですから――あなた様に我々を知っていただきたく、今日はここに参りました。」
次の瞬間、彼女の背後に控えていた、まるで、地面と一体化していたかのように気配を消していた一団が、膝をつく。
それは、 儀式のような、滑らかで、一糸乱れぬ所作であった。
舞い上がった砂塵が、夕焼けの光を反射して金色に染まり、まるで神託の場面のような荘厳さを演出していた。
ドクンドクンドクン!!!!――
カリムの胸が、大きく脈打った。
それは恐怖ではない。いや、恐怖を伴っていたとしても、それ以上に心の奥――ずっと空っぽだった場所に何かが注ぎ込まれるような、不気味なほどの“満足”だった。
この感覚に覚えがある。だが、思い出す前に本能が告げる。
(……冷静になれ、俺。)
必死に自分を律する。しかし、心の内側に届くはずの声は、何故か霧の中へと消えていった。
「分かった。君たちの話を……聞かせてくれ。」
気づけば、そう口にしていた。自分の意思なのか、それとも誘導されたものなのか、判別できなかった。
§
「アミラ様は、齢7歳にしてこの国の女王になられました。」
コーデリアの声はまるで朗読のように淡々としていたが、その内容は決して穏やかなものではなかった。
「先代の王が戦死し、正当な後継者である貴方様が幼かったこともあり、しょうがなかった部分もあった
のでしょう。」
「しかし、それが全ての間違いでした。」
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