❦「探偵業 始めました。」4/4
ホーカンソン夫人は悩んでいた。
自分が幽霊だと周りに知られれば、宿の評判が悪くなる、最悪取り壊しだってあり得る。
うかつだった。いつも気を付けていたのに、外が雨だったのと、会話が弾んでしまったことによって気の緩みが出ていた。
「はぁ。」
思わずため息が出てしまう。
「やぁ。夫人。美人なあなたに、ため息は似合わないよ。」
エドゥの口から決して言わないようなセリフが放たれた。
(ウィリー!?急に魂が入れ替わった?)
エドゥにお構いなしでウィリーが体を動かす。
「エドゥ君には悪いが、彼女の前では凛々しくありたいのだよ。君の性格では薄味太郎なんて揶揄されても何らおかしくないのだからね。」
(おい!肉体をかえせ。)
エドゥとウィリーの肉体争奪戦が始まっていた。
「どうやってここまで来たの?簡単に来れる高さじゃなかったはず。」
ホーカンソン夫人はいきなり現れたエドゥに驚きを隠せなかった。
「それはもう、愛の力さ。」
(やめろ、ムズムズする。)
エドゥがウィリーの魂を引っ張り出す。
(今良いところなんだ、離せ。)
(お前、さっきまでとキャラが違うじゃないか。俺を騙してたな。)
(ふん、最初からこんな感じだったら君は僕を受け入れるのをしぶっただろうからね。)
二人の攻防が続く。
ホーカンソン夫人はエドゥの変な様子に警戒していた。
「私をおちょくっているのかしら。」
「・・・・・」
エドゥからの返事はなかった。
二人は今魂となって体の所有権を争っている最中だった。
「あの?」
夫人はエドゥの様子を窺う。
エドゥの口が開いた。
「……飯が食いたい。」
夫人は唖然とした。
目の前の男の目的が分からない。
ここから出して欲しいとか、自分を倒そうとしているとか、どうもそういう感じではない。
「飯だ。死んでから一度も食していない。」
「死んでから?」
何を言っているのだろう。男の体は確かに存在しているはずだ。
そう夫人は思った。
「バカにしてますの?」
「そうではない。俺は死んでからこの男、エドゥ=ベレンに取り憑いている。」
「にわかには信じがたいですわね。」
「別に信じなくても良い。」
男は淡々と夫人に言葉を投げる。
ホーカンソン夫人は一つ質問でもしてみることにした。
「あなたの他にもう一人取り憑いていますか。」
これに答えることが出来れば、さっきの態度も頷ける。
「…探偵だったか。」
男の解答でようやく納得がいった。
「分かりました。あなたの言っていることを信じますわ。」
「好きにしてくれ。」
「あなたのお名前をお聞かせくださるかしら。」
「エドガー、エドガー=シマコフだ。もう二度と名乗ることはないと思っていたが。この男に感謝せねばな。」
ホーカンソン夫人はエドガーに飯をふるまった。
「…満足した。俺は帰るとしよう。」
「また会えるでしょうか。」
「・・機会があればな。」
エドゥの体から力が抜けていく。
かと思えばエドゥが急に立ち上がった。
「あぁ、美しいあなたに再び会えるとは。」
「その感じは、あなたウィリーですね。」
「あぁ、本当に久しぶりだ。」
「でもあなたがそこにいるということは。」
ウィリーの活気がなくなる。
「うん、だめだったんだ。あと一歩だったんだけど。」
「そう・・・。」
「でもね。エドゥ君は協力するって言ってくれたんだ。信じられるかい?」
「それは本当に?」
ホーカンソン夫人の眼に輝きが現れた。
「そう、だから彼にこの宿の一室を貸してあげて欲しいんだ。それで、僕のやっていた探偵業を再開してもらおう。彼らにはお金も必要だろうからね。」
ホーカンソン夫人の悩みが吹き飛んだ。
「ウィリー、エドゥさんと話をさせて。」
「分かった。」
(話は聞いていたね。)(あぁ。)
ウィリーとエドゥが交代する。
「すいません。どたばたしていて。」
「ふふふ。」
夫人から笑みがこぼれた。
「本当に取り憑かれているんですね。エドガーさんから聞いた通り。」
「えぇ、困ったことに。」
「一つ聞いておきたいことがあるんです。」
「何でしょう。」
「あなたは私が幽霊で怖い?私のことを誰かに喋ったりするのかしら?」
「とんでもない。恩を仇で返すことはしません。俺もピザファットも誓って。」
「分かりました。信じます。あなたに特別な一室をお貸しします。付いてきてください。」
ホーカンソン夫人が能力を解き、迷路のような建物が綺麗な豪邸のような建物に変貌した。
「おい、相棒!どうなってんのこれ?」
ピザファットが駆け寄る。
「喜べ、住いと職の両方を手にしたんだよ。」
エドゥはこれまでの経緯を話す。
「さぁ、お二人とも。こちらへどうぞ。」
ホーカンソン夫人が手招きする。
導かれた先には大きな扉があった。
扉を開けると大きな部屋が姿を現す。
「ピザファット。俺たちには色々な目標が出来た。」
「あぁそうだな。相棒。その目標を叶えるためにはお金や人脈が必要だな。」
「これから大変になるが、ピザファット。相棒となら何でもできる。俺はそう信じている。」
「へへっ、ようやく相棒の口から相棒って言葉が出てくれてうれしいぜ!」
二人は部屋に入る。
「お二人とも、よろしければこちらに着替えてください。」
ホーカンソン夫人から服が手渡された。
「この服はウィリーが生前使っていた仕事用の服です。私がお二人のサイズに合うように調整しました。
エドゥさんの方は重りを入れる部分も追加しておきましたので。」
「「ありがとうございます。」」
二人は服を着る。
「相棒、何かカッコいいぜ。この服。」
「あぁ、探偵になったみたいだ。」
「ふふ、みたいではなく、もうお二人は探偵なんですよ。」
ーここからが本当の彼らの物語の始まりだ。
教会、抵抗軍、AH社、様々な勢力が対立するこの世界で、彼らがどう関わっていくのか。
楽しみでしょうがない。-
「ミラ姉さん、またやってるの?」
「ふふ、だって面白いんですもの。」
「ノアからもいってやりなよ、趣味悪いって。」
「ベガねぇ~。今に始まったことじゃないよ。ミラねぇの“語り”は。」
ここは教会の本部。場所はー神秘によって隠されている。ー
ノアとよ ージークリード様がどこからともなく現れた。- ばれる少女が…
「ジーク様、お帰りなさい。どうでした下界は?」
「んー。沢山儲けたね。あ、これよかったら食べる?」
「わー。飴だ。」
ジークリード=ヴァルプルギス、神に最も近い男。
彼が天高く右手を挙げる。
すると、世界に改変が起こった。
土が一人でに動き始め人形アダムとイブの形をとったのだ。
彼は今度は左手を動かす。
今度は世界の創造が起こった。
何もない場所から椅子と机を創造した。
「さぁて、今日の世界を見ようか。」
土人形達が資料を次々と持ってくる。
「おや。」
ジークリードの手の動きが止まる。
「ジーク様?どうなさいました。」
「あちゃ~。神鎧が無断で使用された。」
「誰がそんなことを。」
ジークリードが名前を告げる。
「処罰は私がやりましょうか?」ミラが立候補する。
「ミラ。人間の始末は人間にさせよう。」
「分かりました。適任のものに任せましょう。」
ーそういうと瞬く間にミラは地上に降りていった。-
脳内設定その⑬
クリスティーナ=ホーカンソン 種族ー幽霊ー
カース名 「Winchester Mystery House」
「建物を自由に増築する能力、応用でポルターガイストを起こせる。能力が強力ゆえ建物に魂まで囚われてしまう。」
脳内設定その⑭
ウィリー=ブロッジーニ 種族ー幽霊ー
ギフト名 「THE TOP SECRET」
「触った人の産まれてから現在の記憶を一瞬で頭に叩き込む能力。ウィリーはこの能力を3か月に一回の頻度で使っていた。」




