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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
❦薄明光線ー超大陸バンギア北西部ー
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❦「太陽の子」1/4

son of the Sun

その男はある日突然私の前に現れた。


その男ほど熱い男を私は過去にも未来にも知らない。




その日のことは未だに昨日のことのように思い出される。


彼は私の行きつけのラーメン屋で、私のすぐ隣の席に座っていた。


店内は狭く、机は油なのかなんなのかよく分からなかったがギトギトしている。


扇風機が回っていて、時たま涼しい風がこちらを通っていた。


風が通り過ぎると、再び暑さが私たちを襲う。




だが、その男は暑さなど感じていなかったのか、必死に唐辛子を沢山入れた麺をすすっている。


私は彼にばれないように彼を見た。


彼は炎のように赤い髪をしていて、年は私と同じくらいだろうか。


だが、私とはかなり異なった格好をしていた。


要するに私のようなただの農民ではなく彼は恐らくどこかの貴族なのだろう、とても良い恰好をしていたのだ。




しかし、彼は私の想像している貴族のそれとはとても異なっていた。


まず第一に食べ方が汚すぎる。


麺を勢いよくすいすぎるせいで、汁が折角の洋服にどんどんとついていく。


そして、第二に礼儀作法がまったくなっていない。


机に肘を乗せ、口にものを入れながら店の主人に話しかけていた。




彼を見ていると、私の方が貴族なのではないかと思うほどだった。


ここで、このままいつもの帰路についていればこの話はこれ以上進まなかっただろう。


だが、この時の私はラーメンだけでは何か物足りなく感じ、デザートを食いたい気分だった。




そこの店に入ったときから私の物語は動き始める。




私は空いている席に座った。


最初は何も違和感は感じなかった。


ただただ明日の仕事とか、恋焦がれる相手の事などをただただ思っていた。


私が異変に気付いたのはトイレに行こうと席を立とうとしたときだった。




立とうとすると席に引っ張られる。


何度やってもそれは変わらなかった。


ふと、周りを見る。どうやら周りも私と同じ目に合っているようで皆力いっぱい椅子を放そうとしているのが分かった。




いきなりパーンという激しい音がした。


「静かにしろ!!喜べ!お前らは今日、このミケ=オーラル様の出世の踏み台になるのだ!!」


音を鳴らしたミケとかいう男がいきなり喋り出した。


どうやら右手に持って入る武器から音が鳴ったというのが見て取れる。


天井を見てみると、壁に穴が開いていることから相当殺傷性があるらしい。




私は恐怖した。必死になって椅子から体を引きはがそうとする。


だが、椅子は決して放してはくれなかった。元々私の体の一部であったかのようにぴったりとくっついている。


あぁ私はここで死ぬのか。思い返すと平凡な人生だった。私にも何か超能力か何かがあればこんな結末を避けられたかもしれないのに。




そんなことを考えていた時だった。店の窓がパリ―ンと大きな音を鳴らしガラス片が雨のように降りそそいだ。


半ば諦めかけていた私だったが、窓から来た者の正体は気になるくらいまだ余裕があったようだ。




それは先程のラーメン屋で見た男だった。


男は先程とはまるで別人のような雰囲気を醸し出している。




「なんだ?てめぇ。自殺志願者か?」


ミケがその男に武器を向けていた。


私は天から舞い降りた幸福を逃すまいとその赤髪の男に危険を知らせることにした。


それが、敵の怒りを招くことを重々承知で。




「その武器の直線上に入るな!!」




・・・言った。言ってしまった。


「てめぇ、余計なことを!!」


案の定ミケが私に武器を向ける。


終わった、私は今度こそだめだと思った。




「よく聞け俺の名前は、ギラン=バクタ―だ!!ギラン=バクターだ!!!」


大きな声でその男、ギランは叫んだ。


ギランは私に目を向けると


「そこのあなた!!よく勇気を振り絞った!!名前は?」


と聞いてきた。


私は今武器を向けられているということを忘れていた。


「レオ・・カン・・パノ・・です。」


震えた声で私は返事をしていた。




「ハハハハハハ!!!名乗るときは大声でな!!!それで!!そこの暴れていたお前の名前は何だ?」


今度はミケにギランは話しかけていた。




「地獄への土産に覚えておきな!!このミケ=オーラル様の名をな!」


ミケはそう言うと持っていた武器の引き金を引いた。




ギランはハハハと大声で笑うと


「俺の名乗りが一番インパクトがでかかったな!!!」


と言い、攻撃をかわした。




私はただただ感嘆していた。


身のこなしが常人のそれではなかったのだ。


全く肉眼では捉えきれなかったミケの攻撃をどうやらしっかりと見極めているようだ。


私はこれで勝ったと確信していた。




しかし、ギランの動きが突然止まった。


「!?」


私はその理由が直ぐ分かった。


ギランの足元が床とくっついていたのだ。これは私と他の客と同じ現象・・つまりミケの超能力。


「超能力だ!!」


私は彼に叫んでいた。

「正解だ。だが、分かったからどうだってんだ。」


ミケが悪そうな笑みを浮かべた。


「ふむ!!なるほど!!恐らくモノとモノをくっつける超能力だな!!!」


ギランは依然表情を崩さなかった。


そして、そのままくっついている足をもいだ。まるで、カブトムシの首のように簡単に。




私はとても驚いた。


そしてギランも驚いていた。だが、表情は一瞬で戻っていた。もはや軽いホラーだった。


「ハハハ!剥がそうとしただけなのに!!強力な能力だ!!」




足のもげたギランではなく、ミケのほうが表情に焦りが見えていた。


「バカな!!俺様の能力でくっつけたものは絶対に剥がれないはず!!」


「ハハハ!!だから俺の足は床にしっかりくっついているぞ!!」


「そういうことじゃねぇ!!っくそが!!」




だが、私は気づいてしまった。


何ともなさそうなギランの額に汗が流れていることに。


(やっぱり、痛いに決まってる。なんでギランはずっと平静を装っているんだ?)


私にも汗が流れているのが分かる。この男が負ければ私も死ぬからだろうか。


・・・いや、それもあるかもしれない。だが・・




熱いのだ。


急激に気温が上がった。




ガタンと椅子が床に転がる、どうやら熱によってくっついていた私と椅子が離れたらしい。


周りの客たちも同様に椅子から離れることが出来たようだ。


そして、全員店の外へと逃げていった。


それくらい熱い。


息を吸おうとすると熱い風が肺に入って来て苦しくなるのだ。


なるほど、ここにいては危険だ。はやく他の客同様ここから離れるべきだ。


だが、私の足は全くその場を離れようとはしなかった。


二人の戦いを最後まで見ていたかったのだ。それはスポーツの観戦のときのそれだ。




「お前!!お前も能力持ちだったのか!!」


ミケがギランを睨む。




「その通りだ!!俺の能力は炎!!この身が傷つくほど威力が増す!!」


「呪い(カース)か・・」


「俺は呪いなど信じない!!この炎は呪いすら燃やし尽くす!!」




更に気温が上がっていく。


私はギランの方を見ていた。彼は自らの炎で自らを焼いていたのだ。


「それ以上は駄目だ。」


私は今日どれほど叫んだだろうか。熱気にやられ喉が痛む。


だが、叫ばずにはいられなかった。


彼はどんどん燃えていく。髪が青く変色し始めた。


「俺はどんな相手でも全力を出す!!!だからお前も全力で来い!!!」




ギランがミケを指さす。その指もやけどで腫れていた。


「野郎!!!ふざけやがって」


ミケが武器を構えていた。この男の攻撃手段はこれしかないのだろう。




「死ね!!!」


弾が何発か発射された。


ギランがにやりと笑う。




「命よ!!!燃えろ燃えろ燃えろ!!!!!!!いくぞ!!!!!!!全身全力で受け止めろ!!!」


ギランの髪の色がまた変色した。今度は金色だった。


いや・・それどころではなかった。




「やめろ!!決着はついた!!!」


私は必死に彼に呼び掛けた。

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